民俗学者の柳田國男が日本全国を巡って伝承や昔話を採集したのは、1900年代。

100年以上も前になる。
今回朗読した「日本の昔話」の「はしがき」が書かれたのは、1930年(昭和5年)。
それですら、96年前の文章だ。
 

お話をする人が忙しくなって、もうそうはゆっくりと色々の話をしていられないから


と、柳田國男は書いている。
96年前も、お家の人たちは忙しかった。
ずっとずっと、今も忙しいままだ。
忙しさの質や情報の量は、けたたましく違っているけれど。
 

それでも、私の中には聞き覚えている昔話がいくつかある。
確かに残っている。
忙しいお家の人たちに代わって、学校やさまざまなメディアや人々が、小さな人だった私に語り継いでくれていたから。
ありがたいことだと思う。

ずっと以前、民謡をアレンジして唄っていた時にも思ったのだけれど、その土地に根差した「唄」や「物語」を大切にしている地域は、自然も豊かに残されている。
土地の人たちが、伝承し残す努力をしている。
「唄」や「物語」は、一粒の種なのかもしれない。
絶滅させてはいけない。
 

そこから切り離されると、私たち人間の心は、きっと育たなくなる。