腹をくくる | 浜田真実*文筆と朗読「まほろふ舎」

浜田真実*文筆と朗読「まほろふ舎」

昭和の終り頃、シャンソン喫茶「銀巴里」にて歌手デビュー。平成の中頃に、心と身体を整えるボイトレ教室「マミィズボイススタイル」オープン。「声美人で愛される人になる」「説得力のある声をつくる」等出版。この頃は「しげのぶ真帆」名義で、文章を書き朗読もしています。

震災を体験して、明確になったことがある。
多くの人が、「本来の自分」に直面しているということ。

誰かが何かをしてくれるのをただ待つのではなく、やってくる流れに漠然と乗るのでもなく、「私は、今、どうしたいのか」を自分で選び、自分の足で歩かざるを得ない状況になっているということ。

どこで暮らすのか、何を食べ、どんな情報を選び、これからどう生きたいのか…
全て自分の選択。
そして、その結果も、責任は全て自分で背負う。
硬い言葉だと、今は、自分の「信念」みたいなものが、必要なんだと思う。

以前から余分なものを落とし、「本来の自分」としっかりアクセスが出来ていた人は、緊張をし、痛みを感じ、混乱している中でも、比較的、穏やかな心境で日々を過ごせているような気がする。

しかし、本来の自分の欲求から目を背けていたり、変化に怯えて閉じこもっていた人は、みんな、かなりキツイ思いをしてるようだ。

私の生徒さんの中にも、11日以降、会社を辞めた人が何人かいる。
「もう、自分に嘘はつきたくないと思った」
と言った人もいた。
パートナーとの関係が変わった人、切りたくても切れなかった関係が、スッと終わった人もいる。
一方で、心の中は激変しているのに、身動きが取れなくて混乱している人もいる。

誰もが「自分」を見つめている。
「今、出来ることをやる」ということは、反面「私は、何が出来るんだろう」という疑問も生む。

非力な自分を受け入れ、日々の仕事を粛々と続けながら、それでも穏やかに幸福に生きるというのは、思った以上にパワーも必要だということにも気づく。
それは、腹をくくるということ。覚悟が出来ているという状態だからだ。

まずは、深い呼吸をする。
静かな時間を持つ。
そして、心の奥から聴こえてくる言葉に耳を澄ます。

その上で、自分がどこに行き、何をしたいかを決めればいい。
私たちには、自由がある。

私たちは、今、たまたま生きている。
亡くなった方と、生きている私たちの差なんて、何もない。
選ばれたから、生き残れているわけじゃない。
たまたま、別の場所にいて、今生きているだけだ。

自分の選択を信じれば良い。
そして、穏やかに自分に正直に生きれば良い。
日本に生きるということは、ある意味、腹をくくらなければならないのだから。