昨年に劇場鑑賞していた『運び屋』(2018年)の感想も、ちゃんと未だブログ記事化出来ていませんが、今年も2月に入り、新型コロナウィルス騒動から暫く見送っていた劇場鑑賞を徐々に再開するにあたり、今年で御年90歳を迎えられる、巨匠クリント・イーストウッド監督の最新作の実録映画であり、監督40本目となる『リチャード・ジュエル』を、今更ながらではありましたが、今作の日本公開日から約半月後の2月4日(火)に、滋賀県草津市のイオンシネマ草津にて、劇場鑑賞していましたので、以下に感想をブログ記事として残しておきたいと思います。

「対岸の火事とは思えない捏造報道の恐ろしさ(20.2/4・2D字幕)」
ジャンル:社会派ドラマ
原題:RICHARD JEWEL
製作年/国:2019年/アメリカ
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/richard-jewelljp/
上映時間:131分
上映区分:一般(G)
公開日:2020年1月17日(金)
監督:クリント・イーストウッド
キャスト:
ポール・ウォルター・ハウザー、サム・ロックウェル、キャシー・ベイツ、ジョン・ハム、オリビア・ワイルド、ニーナ・アリアンダ、イアン・ゴメス ほか

【解説】
「アメリカン・スナイパー」の巨匠クリント・イーストウッドが、1996年のアトランタ爆破テロ事件の真実を描いたサスペンスドラマ。
1996年、五輪開催中のアトランタで、警備員のリチャード・ジュエルが、公園で不審なバッグを発見する。
その中身は、無数の釘が仕込まれたパイプ爆弾だった。
多くの人々の命を救い一時は英雄視されるジュエルだったが、その裏でFBIはジュエルを第一容疑者として捜査を開始。
それを現地の新聞社とテレビ局が実名報道したことで、ジュエルを取り巻く状況は一転。
FBIは徹底的な捜査を行い、メディアによる連日の加熱報道で、ジュエルの人格は全国民の前で貶められていく。
そんな状況に異を唱えるべく、ジュエルと旧知の弁護士ブライアントが立ち上がる。
ジュエルの母ボビも息子の無実を訴え続けるが……。
主人公リチャード・ジュエルを「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」のポール・ウォルター・ハウザー、母ボビを「ミザリー」のキャシー・ベイツ、弁護士ブライアントを「スリー・ビルボード」のサム・ロックウェルがそれぞれ演じる。
(以上、映画.comより、引用抜粋。)

老いを感じさせないペースで毎年1本のペースでコンスタントに作品発表をする巨匠クリント・イーストウッド。
近年は実録物の作品が多い中、その中でも、ここ数年ではおそらく、最も感情に訴える作品に仕上がっていたのではないかと思いました。

この作品の主人公である警備員のリチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は、1996年のアトランタ五輪の屋外イベント会場で起きた爆破テロ事件にて、不審物を発見し、多くの人命を救った事により一躍英雄視されたのでした。

しかし、後日、地元の新聞社・テレビ局などに、彼に連邦捜査局(FBI)が疑惑の目を向けていると実名報道がなされ、人生は一転し悪夢に変わってしまった・・・。という自作自演の事件があったことは記憶はしていましたが、その後、実はそれが冤罪事件だったと言うことまでは私も全く知らなかったですし、おそらく日本でもアトランタ五輪の後は、その後のこの事件を追跡調査した記事を載せているマスコミ関係者もほぼ皆無だったのではないかと推察致します。

なにより、日本では、この爆破テロ事件のちょうど2年前の夏。第一通報者であり被害者の男性・河野義行さんが、警察とマスコミ報道によって、犯人として、所謂、メディアリンチ(メディアによる公開私刑的な扱い)を受けて吊るし上げられた、あの<松本サリン事件>や、或いは、最近に再審請求がなされた滋賀県湖東記念病院事件で冤罪を着せられた、軽度の発達障害を持たれている女性の方などの苦難の日々を想起し、24年前のアメリカで起きた事件とは言え対岸の火事とは思えない恐ろしさを感じました。

▲『日本の黒い夏[冤罪]』(2000年製作・2001年3月公開)
2000年製作の熊井啓監督による『日本の黒い夏[冤罪]』の公開から約20年が経ちましたが、いまやフェイクニュース(捏造報道)やメディアリンチの主体こそ、SNSが、これまでのマスコミに取って代わったようですが、その被害の有り様は個人レベルに止まらず、社会全体をも誤った方向へと向かせかねないとも言えますね。

肥満体型で、失礼ながらも、決して一見すると利発そうにも見えないキャラクターのリチャード・ジュエル。
性格は善良で、純真無垢な、そのリチャード・ジュエルに乗じた連邦捜査局(FBI)の捜査手法や、また功を焦る地元の新聞社の女性記者の稚拙な取材には怒りさえ覚えました。

無垢さからなのか、軽度の発達障害があるためなのか、真偽の程は分かりませんが、自分を犯人に仕立てあげようと謀るFBIさえも、国家権威の象徴だからと信じきり、自ら率先して捜査協力をしようとする天然ボケっぽいリチャード・ジュエルの行動を諌め諭して、必死で彼の無実を立証しようと弁護するワトソン・ブライアント弁護士役のサム・ロックウェルが頼もしかった。

リチャードの母親ボビ・ジュエル役のキャシー・ベイツが、息子の無実を訴えるスピーチも感動的でした。
本年度の第92回アカデミー賞助演女優賞ノミネートも頷ける名シーンでした。

クリント・イーストウッド監督がいざなう語り口は巧みで、観客を笑わせたかと思うと、泣かせ、そしていつしか観客皆に怒りをしっかりと共有させていました。
SNSが隆盛な、こんな時代だからこそ、クリント・イーストウッド監督が放った実録映画の矢は、確かなメッセージとなって観る者の胸に突き刺さるのでしょうね。


▲『黒い司法 0%からの奇跡』(原題:JUST MERCY)2020年2月28日(金)公開。
公式サイト: http://wwws.warnerbros.co.jp/kuroi-shiho/index.html
また、今月の2月末には、またもや実話に基づく『黒い司法 0%からの奇跡』(2019年)という法廷物作品が、小規模公開ながらも全国公開されますが、たとえわずかな偏見や人種差別でも、罪無き人を破滅に追い込んでしまう程の力があることを忘れてはならないし、捏造報道はもっての外ではありますが、誤った報道をした後には、必ず名誉回復に繋がる訂正報道をより一層図るべきかとも思います。

日本では知名度は俄然低くて当然な人物であるにも拘わらず、今作品に、変な邦題にしたり、副題を付けたりしていない点に、ワーナー・ブラザース映画宣伝部の担当者の方のセンスの良さも感じましたね。

▲ポール・ウォルター・ハウザー(左)とリチャード・ジュエル御本人(右)。
主演を務めたポール・ウォルター・ハウザーのハマり具合も見事過ぎでしたが、ここ最近、バイプレーヤーとして美味しい役どころが多いサム・ロックウェルがここでも好演を見せてくれていましたね。

ただ、アメリカのみならず海外では、本作でオリビア・ワイルド演じる、実在した地元新聞社の女性記者役の描かれ方が、2001年に彼女本人が死去したのを良いことに、かなり事実と異なる都合の良い、実に古典的なレッテルを貼った、所謂、ステレオタイプなものであると非難されているらしいですが、いすれにせよ、古い南部の西部劇の様な分かり易さのために、いくらシナリオ上の脚色としても、事実に反するような、あたかも枕営業で、セックスを武器に一面記事のネタを得るかの如き描写をする事は許されないでしょうし、かなり、この点は問題かも知れないですね(汗)。

私的な評価と致しましては、
今回の事件のように、母親と二人住まいの肥満体型で、失礼ながらも決して利発そうにも見えない、自動小銃などのミリタリーヲタクといったキャラクターという偏見から、「英雄から一転して爆弾犯にされる」という捏造報道を生みだして、メディアリンチ(メディアによる公開私刑)を引き起こすという恐怖は、決して対岸の火事ではないことを肝に銘じて、自らもSNS上でのリツイートなどで、誤った情報を拡散してしまうことで、メディアリンチの加害者とならないようにと自分の行動を鑑みて祈念するばかりでした。
また今回の作品は、ここ数年で最も感情に訴える実録物の作品にも感じましたし、撮影の上手さや短期間で撮り上げる手際の良さなどからも、まだまだ監督クリント・イーストウッドの作品には期待が持てるとも思われました。
そして、何よりも今回の作品はいささか展開がやや説明臭かった点も無きにしも非ずではありましたが、泣いたり、笑ったり、そして怒りを覚えるなど、スッカリと作品の中に入り込んで気持ちを共有させてしまうほどでしたので、やや本国のアメリカはじめ海外で問題視されてもいる、実在した地元新聞社の女性記者の描き方の問題が解消されていない点が玉に瑕でもありますが、五つ星評価的には、ほぼ満点に近い四つ星半評価の★★★★☆(90点)の評価が相応しいかと思った次第です。
〇映画『リチャード・ジュエル』本予告2020年1月17日(金)全国ロードショー
〇『黒い司法 0%からの奇跡』本予告2020年2月28日(金)全国公開
今回も最後までブログ記事をお読み下さり誠に有り難うございました。