所謂、シルバーウィークの4連休の最初の日の9月19日(土)に、滋賀県大津市の大津アレックスシネマまで、ハリウッドの異端児こと俳優のシャイア・ラブーフがセラピーの一環として書いた自伝的脚本を映画化した『ハニーボーイ』を観に行って来ました。
シルバーウィークの最初の日というのに、新型コロナ禍の影響のせいもあったのか、観客は私と私の父親のたった二人きりでした(汗)。
今年度の31本目の劇場鑑賞作品。

「シャイア・ラブーフの自伝的脚本とノア・ジュプの熱演に尽きる(20.9/19・2D字幕版)」
ジャンル:人間ドラマ
原題:HONEY BOY
製作年/国:2019年/アメリカ
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/honeyboy/
上映時間:95分
上映区分:PG12
公開日:2020年8月7日(金)
監督:アルマ・ハレル
キャスト:
ノア・ジュプ、シャイア・ラブーフ、ルーカス・ヘッジズ、ローラ・サン・ジャコモ、ブライオン・バウワーズ、FKAツイッグス 他

【解説】
「ワンダー/君は太陽」「クワイエット・プレイス」シリーズのノア・ジュプ演じる人気子役の心の成長を描いたヒューマンドラマ。
「トランスフォーマー」「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」のシャイア・ラブーフが自らの経験をもとに初めて脚本を手がけ、主人公の父親役で出演もしている。
ハリウッドで人気子役として活躍する12歳のオーティスと、彼のマネージャーを務める父のジェームズ。
前科者で無職のジェームズの不器用な愛情表現に、オーティスは常に振り回されていた。
そんなオーティスを心配する保護観察官のトム、モーテルに住む隣人の少女、共演する俳優たち。彼らとの交流を経て、オーティスは新たな世界へと踏み出していくが……。
ジュプが12歳のオーティス、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」のルーカス・ヘッジズが10年後のオーティスをそれぞれ演じる。
(以上、映画.comより、引用抜粋。)

若くしてハリウッドのトップ俳優に躍り出たオーティス(ルーカス・ヘッジズ)は、撮影に忙殺されるストレスの多い日々の中で、次第にアルコールに溺れるようになっていくのでした。
そして、2005年の或る夜、泥酔して車を運転し事故を起こしたオーティスは、「逃げ出したら4年間の服役」を条件に更生施設へ送られるのでした。

そこでPTSD障碍の兆候があるとの診断をされ、「まさか!」と驚くオーティス。
原因を突き止めるために、今までの思い出をノートに書くように指導されたオーティスは、過去の記憶を辿り始めるのでした。

真っ先に思い出すのは、父親ジェームズ(シャイア・ラブーフ)のこと。

10年前の1995年、子役として活躍する12歳のオーティス(ノア・ジュプ)は、いつも突然感情を爆発させる前科者で無職の“ステージパパ“ジェームズに、振り回される日々を送っていました。

そんなオーティスを心配してくれる保護観察員、安らぎを与えてくれる隣人の少女、撮影現場の大人たちとの交流の中で成長していくオーティスは、新たな世界へと踏み出すのでしたが──。
といったイントロダクションの作品でした。

『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』(2017年)や『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』(2019年)の作品を観て、彼が再生したのを確信して、彼の更生施設でのセラピーの一環として書いたものを基にした自伝的脚本を映画化した本作を楽しみにしていました。
シャイア・ラブーフの生い立ちとしましては、
幼い頃に、ヒッピーの両親が離婚し、スタンダップコメディアンで日銭を稼いで生き延びてきたという苦労人。
運良くディズニーのテレビ番組に14歳から登用されて、2003年『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』、2004年に『アイ,ロボット』などの大作映画での脇役出演を経て、2005年の『コンスタンティン』では、キアヌ・リーブスの相棒役として共演。
2007年からはブロックバスター映画の主役として抜擢された『トランスフォーマー』シリーズが大ヒットを記録し、シリーズ三部作に亘って主役を務め、2008年の『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』では、ハリソン・フォード演じるインディ・ジョーンズの息子役を演じ、また同年には、SFサスペンス大作『イーグル・アイ』でも主演を演じるまで、登り詰めていました。
しかしながら、今どきの映画俳優としては学歴もなく、ハリウッド映画界の異端児とも称されており、お騒がせ俳優としてのその主な原因は犯罪歴(ドラッグストアへの不法侵入、交通違反や路上喫煙の反則切符の無視、酒気帯び運転による自動車運転事故、酩酊行為による軽犯罪などでの逮捕)と、数々の女優との間で浮き名を流している事などによる悪い印象が大きいようです。
また、酒癖が悪く、PTSD障碍の兆候もある事から更生施設でのセラピーを受けていたのも事実らしいです。

また、今作では現在の彼女のFKAツイッグスも重要なキャスト(シャイ・ガール)として出演しています。
女性監督のアルマ・ハレルはイスラエルアメリカン(ユダヤ人)でシャイア・ラブーフとは男女の垣根を越えた親友関係とのこと。
そして今回のこの脚本も、シャイア・ラブーフ自ら監督のアルマ・ハレルに持ち込んだものらしく、またシャイア・ラブーフ自身が短気でアルコール依存症のステージパパの父親ジェームズ役を演じることがシャイア・ラブーフの更生の為になるとの判断だったとのこと。

原題の『HONEY BOY』はシャイア・ラブーフの子供時代のニックネームでもあるとのこと。

オーティスが治療を通してPTSDの原因となる父親ジェームズを理解しようとする22歳の時間軸と、父親から十分な愛情を得られず痛みしか与えて貰えなかった12歳の少年時代の時間軸が現在と過去が行き来して絡み合う形で進行する構成。
1995年と2005年の最初のカットが共に、ノア・ジュプもルーカス・ヘッジズも、宙吊りで後ろに引っ張られるアクションシーンとして韻を踏んでいる点も面白かったでした。

<毒親と、それを赦す子供>といった構図の作品は、邦画洋画問わず、過去にも多数ありますが、ドキュメンタリー映画の様なタッチのカメラワークや、二人が暮らすピンク色の壁のモーテルやプールサイドのシーンなど、幻想的で神秘的な色彩の映像が差し込まれているせいもあり、ある種独特な印象がする作品でもありました。

生活費を稼いでくれる子役ノア・ジュプの息子との濃密な関係は非常に痛々しく、乱暴な台詞や虐待シーンは、ノア・ジュプもPTSD障碍にならないかと心配になるくらいでした。

寄りかかれば小突かれ、人前では一旦繋いだ手も放され、正論を吐けば殴られる。そんな理不尽な父親でもそばにいて欲しいと願うオーティス。

レイプ未遂で収監された過去があるジェームズは才能のある息子の稼ぎで生活することを余儀なくされているのでした。
そんな不安定な父子のため、息子と父親は共依存関係から抜け出せずに、但ひたすら傷付け合うのでした。

本作は、何にも増して、タバコを吸い、放置された車のフロントガラスを割り、ストレスがかかると指しゃぶりをするアンバランスな12歳のオーティスを実に自然に演じたノア・ジュプの演技が巧すぎるに尽きました。

シャイア・ラブーフは頭の地毛を抜いてまで禿げ散らかしたダメ親父を熱演。

本来の自分を取り戻そうと過去に向き合おうとする22歳のオーティスをサラーッと演じるルーカス・ヘッジズも、血統証付きの若手サラブレッド俳優であり過去オスカー候補にも挙がっただけあって、流石に巧かったでした。

シャイア・ラブーフ自身が幼少期の呪縛から解き放たれ、父親を赦すことが出来れば、この映画は本当の意味で成功と言えるのかも知れないですね。
2017年の『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』のジョン・マッケンロー役や、2019年にアメリカ本国で大ヒットを記録した『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』でのタイラー役も良かったので、この希有な役者を今後も見守って応援していきたく思いました。

私的な評価としましては、
俳優シャイア・ラブーフに思い入れのない人が観たらば、もしや凡庸な<毒親と、それを赦す子供>の単にありふれた映画に感じるのかも知れないですが、それでもノア・ジュプの巧みな演技を観ると目を瞠るものがあるかと思いましたし、シャイア・ラブーフが自ら持ち込んだセラピーの一環として書いた自伝的な脚本の内容如何はいざ知らず、今回が長編映画の初挑戦作品だったらしいアルマ・ハレル監督の幻想的な映像美などの力量にも負うところが大きい作品だったとも思いました。
つきましては、五つ星評価的には★★★★(80点)の高評価も相応しい作品かと思いました。
○シャイア・ラブーフ脚本・映画『ハニーボーイ』予告編
https://ameblo.jp/halu7100/entry-12414262087.html
今回も最後までブログ記事をお読み下さり有り難うございました。