『梅切らぬバカ』(2021年)#Tジョイ京都 #加賀まりこ #塚地武雅 #梅切らぬバカ #自閉症 | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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公開前から塚地武雅さんの自閉症患者の演技が巧すぎるとの前評判が高かった本作『梅切らぬバカ』を京都府内で唯一の公開館であるTジョイ京都まで、先月の11月22日(月)に、年老いた父親と一緒に鑑賞に出向いて来ました。

 

今年度の47本目の劇場鑑賞作品。

(※今年度のTジョイ京都での4本目の劇場鑑賞作品。)

 

 

「桜切るバカ、梅切らぬバカ(21.11/22・2D劇場鑑賞)」

ジャンル:人間ドラマ

製作年/国:2021年/日本

配給:ハピネットファントム・スタジオ

公式サイト:https://happinet-phantom.com/umekiranubaka/

上映時間:77分

上映区分:一般(G)

公開日:2021年11月12日(金)

監督・脚本:和島香太郞

キャスト:

加賀まりこ / 塚地武雅 / 渡辺いっけい / 森口瑤子 / 斎藤汰鷹 / 徳井優 / 広岡由里子 / 北山雅康 / 真魚 / 木下あかり / 鶴田忍 / 永嶋柊吾 / 大地泰仁 / 渡辺穣 / 三浦景虎 / 吉田久美 / 辻本みず希 / 林家正蔵 / 高島礼子 他

 

 

【解説】

加賀まりこと塚地武雅が親子役で共演し、老いた母と自閉症の息子が地域コミュニティとの交流を通して自立の道を模索する姿を描いた人間ドラマ。

山田珠子は古民家で占い業を営みながら、自閉症の息子・忠男と暮らしている。

庭に生える梅の木は忠男にとって亡き父の象徴だが、その枝は私道にまで乗り出していた。

隣家に越してきた里村茂は、通行の妨げになる梅の木と予測不能な行動をとる忠男を疎ましく思っていたが、里村の妻子は珠子と密かに交流を育んでいた。

 

珠子は自分がいなくなった後のことを考え、知的障害者が共同生活を送るグループホームに息子を入れることに。

しかし環境の変化に戸惑う忠男はホームを抜け出し、厄介な事件に巻き込まれてしまう。

 

タイトルの「梅切らぬバカ」は、対象に適切な処置をしないことを戒めることわざ「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」に由来し、人間の教育においても桜のように自由に枝を伸ばしてあげることが必要な場合と、梅のように手をかけて育てることが必要な場合があることを意味している。

 

加賀にとっては1967年の「濡れた逢びき」以来54年ぶりの映画主演作となった。

 

(以上、映画.comより、引用抜粋。)

 

 

11月12日(金)の全国公開に先立って、日本テレビ系列の有働由美子キャスターによるニュース番組「news zero」の中で、<話題の映画>として紹介されていた予告編を見て面白そうだったので鑑賞。

 

 

加賀まりこさんと塚地武雅さんが親子役で、しかも、自閉症の中年の息子を抱える年老いた母親が、自分がいなくなった後の息子を案じて、自立の道を模索しながら、それまで離れていた地域コミュニティとの共生や「8050問題」といった問題提起を心温まるストーリーで紡ぐ映画ということで、期待値のハードルを上げて観に行きました。

 

 

期待値のハードルを上げて観た割りには、予告編や番宣の通り、ハートウォーミングでこじんまりと良く出来た映画でした。

77分と実写邦画にしては、かなり珍しい短尺な映画なのにも拘わらず、脚本が巧いからか充分に楽しめました。

 

 

お話しの流れ的には、

50歳になるひとり息子・忠さんこと山田忠男(塚地武雅さん)と年老いた母親・山田珠子(加賀まりこさん)は、閑静な住宅街にある古民家で二人暮らし。

珠子さんは占いで生計を立てていて、息子には自閉症スペクトラムのような知的障碍があり、毎日、分刻みのルーティンを規則正しく守る事に固執する癖などがあり、毎朝決まった時間に起床して、トイレに入り、朝食を摂り、決まった時間に家を出て、福祉通所作業所で仕事はしているのですが、このままではいずれ親子共倒れ。まさに「8050問題」そのものな状況なのでした。

 

 

そんな或る日、母・珠子さんは通所作業所の施設長・大津進(林家正蔵さん)からの勧めもあり、空き部屋が出来たグループホーム「さくら園」に、息子・忠さんを入居させる決意を固めるのでした。

また、山田家の庭にある梅の木は伸び放題で、隣家の里村家から苦情が届いていたのでした。

しかし、初めて離れて暮らすことになった忠さんは環境の変化に戸惑ってしまい、グループホームを抜け出してしまうのでした。

そんな中、珠子は邪魔になる梅の木を切ることを決意するのでしたが・・・。

 

といったイントロダクションの映画でした。

 

 

タイトルの由来である諺(ことわざ)の「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」は、お恥ずかしながら私はその意味合いをちゃんと知らなかったのですが、諺の意味合いは、「樹木の剪定には、それぞれの木の特性に従って対処する必要があることを指す戒め。桜は幹や枝を折ると腐敗しやすく、梅は余計な枝を切らないとよい果実がつかなくなるためだからだそうですが、転じて、人との関わりにおいても、相手の性格や特徴を理解しようと向き合うことの大事さを解く意味合いを持つ言葉」とのこと。

 

 

この映画は、珠子さんと忠さんの親子と、隣家に引っ越してきた三人家族、グループホームと通所作業所の人たち、地域の住民たちとの関わりを、良いこと、良くないことを、それぞれ提示しながら、綴っていくと言ったお話しでした。

 

これがドキュメンタリー映画だと、どうしても、グループホームや障碍者の通所作業所の施設にも好意的な人ばかりが良い点ばかりを強調して登場しがちですが、本作では近隣住民が立ち退きを迫るなどその関係のあり方は、実にリアルに描写されて、あそこまで露骨な反対運動まで行くのは非常にレアなケースかとは思いますが、概ねあのような説明会の様な事は日常茶飯事のようですし、市役所などもグループホームが運営できなかったら行き場のない障碍を持つ人などが沢山出てきて困る割りには、そのほとんどは法人任せという点も如実に描かれていました。

そういった点が逆にこの映画に、より深みを持たせていましたね。

 

 

加賀まりこさんも好演されていましたが、塚地武雅さんによる自閉症者の忠さんの演技がとにかくリアルで、またユーモラスに描写されていて、隣家に引っ越してきた里村家の三人家族(渡辺いっけいさん、森口瑤子さん、斎藤汰鷹くん)も揃って上手くて申し分ない演技でしたね。

 

ともすれば陰湿な出来事にしか映らない挿話を、ユーモラスで明るくカラッとした笑いで強弱をつけていて、リズムよく進めた演出や脚本にはついつい感心させられる部分もありました。

 

ただお話し的には、肝心の80歳近い年老いた母親と、50歳になる障碍を持つ、ひとり息子といった「8050問題」などについては全く根本的には何の解決もしていないし、大きな感動的なエンディングが待ち受けている訳でもなくて、「えっ!ここで終わってしまうの?」といった点が非常に惜しかったかも知れないですね。

いつ共倒れするか分らない、この山田親子にも、この数年後には確実に起こりうるであろう事の何の解決も指針もなく終わってしまったのが残念だったかも知れないですね。

結局、グループホームは親亡き後でもそれぞれ問題を抱えた子供達が生きていけるという安心の為にその存在意義があるはずなので・・・。

 

 

私もPTSD障碍を抱え、年老いた両親と共に住む、まさに「8050問題」の当事者でもあるので、自閉症を抱える忠さんの立場を自分自身に置き換えて観てしまうと、不安感が高まって来て自然と涙腺が刺激されてきました。

 

 

そういう意味合いでは、私の様に、何らかの障碍を抱える当事者やその親や親族などが観るとついつい共感する映画かも知れないですが、一般的な映画としては、この作品を観る人の置かれている境遇や立場によっては、単なるテレビサイズのドラマ仕立てのこじんまりとした作品としか映らない人もいるのかも知れないですね。

 

 

私的な評価としましては、

この「8050問題」や障碍者が地域で自立して暮らしていくことの難しさなど、この作品で問題提起された事柄に関して、何かしらの答えを出すのではなく、観客にその答え付けを委ねて想起させようと図るしか方法がなかったのかも知れないですが、何らかの指針や理想像などを観させてくれても良かったかなとも思いましたし、ユーモラスなお話しにはしながらも、リアルな厳しい現実を映すことで精一杯だったのかなぁと多少残念な部分もあり、わずか77分に短い尺に留まらず、提起した問題の解決の糸口についても、もう少し深掘りしてみても良かったのかもと思われました。

従いまして、五つ星評価的には、演者の名演は素晴らしかったのですが、お話し的に、もう少し突っ込んで斬り込んで欲しかったという点などからも、★★★★(80点)の高評価ながらも四つ星評価くらいが相応しい作品かと思いました。

 

でも、総じて、優しい気持ちになれる良い映画でもありましたので、さすがに、多くの人々に愛される作品として、全国的にヒットをして、これだけの拡大公開に繋がっているかとも思われました。

なかなか難しいテーマなだけに問題提起の点で終わってはいますが、是非とも多くの人の目に触れて欲しい佳作でした。

 

 

○11月12日公開・映画『梅切らぬバカ』本予告

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回も最後までブログ記事をお読み下さり有り難うございました。