『トゥルーノース』(2020年)#TOHOシネマズ二条 #清水ハン栄治 #社会派ドラマ #北朝鮮 | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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私も、先週末の6月11日(金)の朝イチに、母親の乳ガンの定期検診に病院までマイカーで送迎をする合間の空いた時間を活用して、TOHOシネマズ二条まで本作品を観に行って来ました。

 

今年度の29本目の劇場鑑賞作品。

(今年度のTOHOシネマズ二条での1本目の劇場鑑賞作品。)

 

※邦画のアニメですが、全編英語、日本語字幕となっています。

 

 

「それでも、生きていく(21.6/11・2D字幕)」

ジャンル:社会派ドラマ

原題:TRUE NORTH

製作年/国:2020年/日本=インドネシア合作

配給:東映ビデオ

公式サイト:https://www.true-north.jp/

上映時間:94分

上映区分:一般(G)

公開日:2021年6月4日(金)

監督:清水ハン栄治

VoiceCast(声の出演):

ジョエル・サットン / マイケル・ササキ / ブランディン・ステニス / エミリー・ヘレス 他

 

 

【解説】

北朝鮮強制収容所の過酷な環境で生きていく家族とその仲間たちが成長していく姿を、生存者証言を参考に描いた長編アニメーション。

 

1950年代から始まった在日朝鮮人の帰還事業により北朝鮮に渡ったヨハンの家族は、両親と幼い妹とともに金正日体制下の北朝鮮で暮らしていた。

しかし、父親が政治犯の疑いで逮捕されたことにより、母子は強制収容所に入れられる。

極寒の収容所での苛烈な生活に耐え忍びながら、家族はなんとか生き延びていたが、収容所内の食料確保によるトラブルによって母が殺害され、自暴自棄となったヨハンは次第に追い詰められていく。

 

そんなヨハンは、死に際に母が遺したある言葉により、本来の自分を取り戻していく。

 

監督の清水ハン栄治が、収容体験をもつ脱北者にインタビューをおこない、10年の歳月をかけて作品を作り上げた。

 

2020年・第33回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門上映作品。

 

(以上、映画.comより、引用抜粋。)

 

 

 

監督・脚本・プロデュースと、一人三役を務められた清水ハン栄治さんは、本作品のこのタイトルに二つの意味を込めたとのこと。

 

どんな過酷な状況下においても、生きるべき目的、進むべき方向を見失わないための、英語の慣用句の<絶対的な羅針盤>という意味と、そして<北朝鮮の現実>という意味合いを込めたダブルミーニングのタイトルが実に秀逸。

 

 

強制収容所に送られた少年の苦難を通して、その実態に迫る3Dアニメーションは、「人は一体何のために生きるのか」と静かに問いかけてきます。

 

 

1959年から1984年まで続いた帰還事業で、多くの在日朝鮮人や配偶者、その子供らが、当時「地上の楽園」と宣伝された北朝鮮へと渡った。その数は、約9万3000人に上るという。

 

 

平壌に住む主人公の少年ヨハンの一家も、そうして、はるばる日本海を越えてやってきたのでした。両親、妹ミヒの4人暮らし。

 

 

しかしながら、その穏やかな生活は、父親が政治犯の疑いで逮捕されてその後一変するのでした。

同罪とされた母子も、着の身着のまま、極寒の政治犯強制収容所へと連行されるのでした。

 

 

昼夜を問わず課される強制労働。飢餓。公開処刑で恐怖心を植え付けられる。

 

 

清水ハン栄治監督は、元収容者や元看守、脱北者から約10年の歳月を要して集めた証言を基に、その異常性を描写していく。

暴力と処罰による支配は、まさに、「この世の地獄」。私たち観客も、その目撃者となるのでした。

 

 

というと、もしや観るのをためらってしまうかもしれませんが、大丈夫。たぶん皆さんも耐えられます。

 

 

何故ならば、折り紙で作った人形のような、キメの粗い素朴な風合いの3Dアニメのキャラクターがストーリーを紡いでいくからという事もあるでしょう。

その為、ある種の寓話性が生まれて、ショックが和らげられる点にもあるでしょう。

だからこそ、清水ハン栄治監督が、この事実を広く知らしめる手段として、実写ではなく、あえてアニメーションを選んだ理由がよく分かるかとも思います。

 

 

物語の軸となるのは、誰にもある弱さと強さの間で揺れ動く、ヨハンを中心にした人間ドラマ。

真に恐ろしいのは、虐待を受け続けることにより、人間性が丸ごと奪い去れてしまうこと。心優しかった少年は、いつしか生き延びるために、収容所の仲間を密告し、看守に取り入る「人でなし」の青年へと変貌してしまうのでした。

 

 

恨みを買い、利己的な所業に高い代償を支払うことになった彼を、<大いなる善>として変わらずに存在する妹ミヒが救うのでした。

 

 

病に苦しむ者を看病し、食べ物を分け与え、日本人拉致被害者には、日本の童謡「赤とんぼ」を口ずさむミヒは、闇のような世界であるこの映画の唯一の光でした。

 

 

そんな彼女が、人間の尊厳を踏みにじられるに及び、兄のヨハンは、ある賭けに出るのでした。

 

 

幸せは与えられるものではないし、他者から奪うものでもない。

どこにいても、例えば誰かの幸福に思いをはせるだけでも、前を向けるものだとも感じられるでしょう。

 

 

そういう点からも、この作品は、あらゆる人々の生きる羅針盤ともなり得るアニメ映画であるとも言えるかも知れないですね。

 

 

私的な評価と致しましては、

ハイスペックとは思えないキメの粗い3Dアニメなのは、一見すると、ひと昔前の技術のような、アニメの表現であり、これは予算不足のせいなのか?それとも技術的な問題なのか?と猜疑心にも囚われましたが、実は、これも清水ハン栄治監督が緻密に考え抜いたうえで採用した表現手法であって、リアルすぎると残酷なシーンを観ていられない為に、謂わば、物語、作品の持つメッセージ性に合わせて、リアルとフィクションのギリギリのバランスを追及した「アニメにおける新たな使い方」を提起した映画とも言え、それが効果的に作用して、実写以上の訴求力をこの様に発揮している点も素晴らしく思いました。

 

また、作品全体を通じて浮き彫りになっていくのは、人間扱いされない場所で「人間として生きる意味」。

絶望に満ちたストーリーだけに、ラストに提示された希望がひと際輝いて見えたようにも思えました。

 

Netflixの大ヒットの韓国ドラマの『愛の不時着』にハマった人ほど、北朝鮮の実態を知るためにも必見の作品でしょうね。

 

従いまして、五つ星評価的には、もう文句なしに★★★★★(100点)の満点評価以外には考えられない程、素晴らしいアニメ映画でした。

 

清水ハン栄治監督は、本気で北朝鮮の強制収容所で今も苦しむ12万人を本気で救おうと、真実を伝え、人々を動かそうとしているのが伝わって来ました。

ですので、是非とも多くの人々の心に届いて欲しいですね。

 

○映画『トゥルーノース』予告編

 

 

 

 

 

 

 

 

今回も最後までブログ記事をお読み下さり有り難うございました。