『犬ヶ島』(2018年) #字幕版 #大津アレックスシネマ #ウェス・アンダーソン #アニメ映画 | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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先月末の5/29(火)は、『ワンダー 君は太陽』の特別試写会に当選し、夜から鑑賞に行く日でしたが、この日の当日は、朝イチから、その試写会の会場となるTジョイ京都に『犬ヶ島』字幕版も観に行けたら鑑賞に行こうかと思っていたところ、字幕版の上映開始時間が午前8時50分からだったので、Tジョイ京都に観に行くには、到底間に合わない事に気付き、そんな中、滋賀県大津市の大津アレックスシネマでは、午前10時10分からの字幕版の上映回を上映しているのを知り、慌てて、クルマを飛ばして鑑賞に出向きました。

 

この日は、前日からの名神高速のリフレッシュ工事の為に、朝から県境の国道1号線の逢坂山峠も凄い渋滞気味でしたが、何とか上映開始までには間に合いまして、事なきを得ました。

 

 

 

「ウェス監督が好きな日本映画による世界観(18.5/29・字幕版)」

ジャンル:アニメ/ファンタジー

原題:ISLE OF DOGS

製作年/国:2018年/アメリカ

配給:20世紀フォックス映画

公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/inugashima/

上映時間:101分

公開日:2018年5月25日(金)

監督:ウェス・アンダーソン

ボイスキャスト(声の出演):

ブライアン・クランストン、コーユー・ランキン、エドワード・ノートン、ボブ・バラバン、ビル・マーレイ、ジェフ・ゴールドブラム、野村訓市、髙山明、グレタ・ガーウィグ、フランシス・マクドーマンド、伊藤晃、スカーレット・ヨハンソン、ハーヴェイ・カイテル、F・マーリー・エイブラハム、オノ・ヨーコ、ティルダ・スウィントン、野田洋次郎、渡辺謙、夏木マリ、フィッシャー・スティーブンス、村上虹郎、リーヴ・シュレイバー、コートニー・B・ヴァンス ほか

 

 

【解説】

「グランド・ブダペスト・ホテル」のウェス・アンダーソン監督が日本を舞台に、「犬インフルエンザ」の蔓延によって離島に隔離された愛犬を探す少年と犬たちが繰り広げる冒険を描いたストップモーションアニメ。

 

近未来の日本。メガ崎市で犬インフルエンザが大流行し、犬たちはゴミ処理場の島「犬ヶ島」に隔離されることに。

12歳の少年・小林アタリは愛犬スポッツを捜し出すため、たった1人で小型機を盗んで犬ヶ島へと向かう。

 

声優陣にはビル・マーレイ、エドワード・ノートンらアンダーソン監督作品の常連俳優のほか、スカーレット・ヨハンソン、グレタ・ガーウィグ、オノ・ヨーコら多彩な豪華メンバーが集結。

日本からも、「RADWIMPS」の野田洋次郎や夏木マリらが参加。

 

第68回ベルリン国際映画祭のオープニング作品として上映され、コンペティション部門で監督賞(銀熊賞)を受賞した。

 

(以上、映画.comより、引用抜粋。)

 

 

 

 

 

▲浜大津港の真隣に鎮座するシネコン・大津アレックスシネマで鑑賞。

 

私個人的には、『グランド・ブダペスト・ホテル』が大好きなのですが、今作は、ウェス・アンダーソン監督の日本愛の中でも、とりわけ監督の発言にもある様に、そもそも基本的に、「黒澤明監督をはじめとした昭和の大監督をリスペクトしてインスピレーションを受けて作った」とされる作品だからか、物語もビジュアルもどことなく昭和的な香りや、どことなく怪奇的な色調でもある、日本の名作映画愛にも溢れたストップモーションアニメでした。

 

 

 

お話しの流れ的には、

犬インフルエンザ(ドッグ病)が蔓延する20年後の近未来。ディストピアな日本。

その日本にある架空の都市・ウニ県メガ崎市のネコ好きの小林市長は、独裁政権による恐怖政治により、犬が「犬インフルエンザ(ドッグ病)」を持っているという理由により、すべての犬たちをゴミ処理場の離島<犬ヶ島>に追放し隔離する法律を制定するのでした。

 

 

人間さまの勝手なエゴにより、召使いの様に扱われながらも共存共栄を図ってきたはずの犬達が、今度は、増えすぎたら危険だとばかりに隔離され、更にそれが、恐怖政治の材料にされ、市民は犬を恐れるようになり・・・。とあたかも、江戸幕府の犬公方・徳川綱吉の行った<生類憐れみの令>の真逆の政策というのも妙な歴史を感じさせます。

 

 

物語は、そこで、小型飛行機に単身乗り込み、<犬ヶ島>に不時着し、消えた愛犬スポッツを捜す旅に出た、小林市長の養子でもあり、孤児の12歳の少年・小林アタリと<犬ヶ島>の勇敢な5匹の犬達との心揺さぶる絆を描いていく。

 

 

 

 

その一方で、メガ崎市を舞台に、犬には罪はないとする<親・犬派>と、犬を危険と見なす小林市長を支持する<反・犬派>との対立が深まる中で、メガ崎市の未来を左右する大人達の陰謀をも描いていくといったお話。

 

 

近未来のディストピアな世界観でありながらも、昭和の香りが漂うのは、社会性や風刺性に富んだ日本の昭和の名作に敬意を払いながらもウェス監督が自身の作品に正しくフィードバックした結果として、「やはりウェス・アンダーソン監督は(多くのほとんどの日本人以上に)、日本の名作映画が好きなんだなぁ。」と、単に日本を舞台にしたのみならず、彼の日本愛・日本映画愛を堪能出来る作品として、製作スタッフ一同も、丹精込めて仕上げたストップモーションアニメだからでしょうね。

 

 

▲約4年の歳月を掛けて、総勢670人ものスタッフが心を込めて作り上げたストップモーションアニメとのこと。その苦労の程は計り知れない。

 

 

メガ崎市の小林市長のモデルは、その風貌からも、間違いなく、黒澤明監督の『天国と地獄』の権藤常務(三船敏郎さん)。ソックリでした。

 

 

 

一方、市長と対峙をする、ドッグ病の治療薬を研究していた渡辺教授は、本多猪四郎監督の『ゴジラ』の芹沢博士(平田昭彦さん)にソックリで、軟禁されたところが「東宝山」と、これもまた実に芸が細かい(笑)。

 

 

 

<犬ヶ島>の勇敢な5匹の犬達は、バックに流れる「七人の侍のテーマ」からも、『七人の侍』のオマージュでしょうし、その中のとりわけチーフという野良犬上がりの一見浪人風の黒犬は、差し詰め、『用心棒』を意識していると思っても過言でもないと思われました。

 

 

このウェス監督ならではの会話のテンポやシュールな笑いはそのままに、字幕スーパー版では、犬達は英語、人間達は(一部の交換留学生を除き)日本語で会話するという取り合わせも面白かったでした(^^)v

 

 

 

 

また敵対するロボット犬はSONYのAIBOというよりも、その出で立ちは、東宝特撮映画などに出て来る、メカゴジラ風にも見えて来て面白かったです。

 

 

勿論、浮世絵に、大相撲に、寿司屋に、和太鼓、神社仏閣に俳句に至るまで、日本が誇る名作映画以外の日本的文化の様式美の要素も楽しめる工夫も施されていました。

 

 

 

 

また、同時通訳のように台詞があえて聞き取りにくいというのは、どこか三船敏郎さんはじめ黒澤映画的であったり(笑)、『悪い奴ほどよく眠る』的な権謀術数が渦巻く陰謀みたいなお話しの流れからも、黒澤明監督の社会派映画にも似た側面も見て取れました。

 

 

可愛いワンちゃんが一杯出て来るので、単なるオタクのアニメ映画として、「可愛いなぁ~。」と思いながら楽しく観る事も出来ます。

 

 

 

 

ですが、その裏には、近未来の人口爆発、また今日的な社会問題である、人種差別問題、移民の強制送還問題、捨て犬など愛玩動物の遺棄問題、更には、プロパガンダといった国民扇動に対する痛烈なる批判など、娯楽的な一面だけでなく、近未来や現代社会の問題点がギッシリと詰まっている作品でもありました。

 

また、次第に「南総里見八犬伝」や「忠臣蔵」みたいにも思えて来るから面白い!

 

この映画を観ると、チョットでも黒澤明監督の映画を観た事がある人ならば、また黒澤明監督作品を再見して観たくなるかも知れないですね。

 

そんな御方々は<黒澤明DVDコレクション>にて再見されるのも善し、<午前十時の映画祭9>にて黒澤明監督の時代劇映画を劇場の大きなスクリーンにて再見し堪能されるのも良いかとも思われますね!

 

 

※尚、今作の原題名を、「Island of Dogs」とせず、あえて「Isle of Dogs」としているのは、おそらくですが、英単語を続けて読むと「アイ・ラブ・ドッグス」とも聞こえるからかとも思えるほどに、本当に細部まで芸が細かい作品ですね!

 

私的な評価と致しましては、

昭和の香りがする、近未来のディストピアな日本を舞台に、繰り広げられる1人の少年とその相棒となる5匹+αの犬達との心温まる触れ合いと、その裏に見え隠れする近未来、現代社会が抱える社会問題を提起する、謂わば、まさに黒澤明監督の社会派映画をオマージュした作風でありながらも、笑いとブラックユーモアとハッピーな愉快さを忘れない、いつものウェス・アンダーソン監督印の作風を踏襲したストップモーションアニメでしたので、単なるオタク系のマニアック映画として楽しむ事も出来ますが、ある種の社会派映画として鑑賞する事も出来るといった、実に面白い映画に仕上がっていましたので、五つ星評価的には、ほぼ満点の四つ星半評価の★★★★☆(90点)の高評価も相応しい作品かと思われました。

 

●映画『犬ヶ島』日本オリジナル予告編

 

 

 

●ISLE OF DOGS | Official Trailer | FOX Searchlight

 

 

 

●『犬ヶ島』ウェス・アンダーソン監督の美術のこだわり!特別映像

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回も最後までブログ記事をお読み下さり誠に有り難うございました。