『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(2017年) #TOHOシネマズ二条 #アイトーニャ | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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ようやくGW期間が明けたので、シネコンの連休中の人混みも一段落着いたかと思い、久し振りのおひとり様鑑賞にて、今回は、自分独りのみで、映画『デトロイト』以来のTOHOシネマズ二条での鑑賞をしてきました。

当日まで、いろいろと何を鑑賞しようかと迷っていたのですが、木曜日まで1日6回上映だったはずの本作が、金曜日から新作映画の公開の為か、1日2回きりの上映回数に一挙に減少してしまっていましたので、慌てて、この映画『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』を観る事にして劇場鑑賞してきました。

 

 

 

 

 

「コメディの如く信じられない様な稚拙な事件(18.5/11・字幕)」

ジャンル:人間ドラマ

原題:I,TONYA

製作年/国:2017年/アメリカ

配給:ショウゲート

公式サイト:http://tonya-movie.jp/

時間:120分

公開日;2018年5月4日(金)

監督:クレイグ・ギレスピー

キャスト:

マーゴット・ロビー、セバンスチャン・スタン、アリソン・ジャネイ、ジュリアンヌ・ニコルソン、ポール・ウォルター・ハウザー、マッケナ・グレイス、ボビー・キャナベール、ケイトリン・カーヴァー、ボヤナ・ノヴァコヴィッチ、アンソニー・レイノルズ

 

PG12

 

 

【解説】

アメリカ人のフィギュアスケート女子選手として初めてトリプルアクセルに成功し、1992年アルベールビル、1994年リレハンメルと2度の冬季五輪にも出場したトーニャ・ハーディングのスキャンダラスな半生を、「スーサイド・スクワッド」のハーレイ・クイン役で一躍世界的にブレイクしたマーゴット・ロビー主演で描いたドラマ。

 

貧しい家庭で厳しく育てられたトーニャは、努力と才能でフィギュアスケーターとして全米のトップ選手への上り詰めていく。

1992年アルベールビル五輪に続き、1994年のリレハンメル五輪にも出場するが、1992年に元夫のジェフ・ギルーリーが、トーニャのライバル選手を襲撃して負傷させた「ナンシー・ケリガン襲撃事件」を引き起こしたことから、トーニャのスケーター人生の転落は始まっていた。

 

プロデューサーも兼ねてトーニャ役で主演したロビーは、スケートシーンにも挑戦。

母親役のアリソン・ジャネイが第90回アカデミー賞の助演女優賞を受賞した。

元夫のジェフ・ギルーリー役は「キャプテン・アメリカ」シリーズのセバスチャン・スタン。

監督は「ラースと、その彼女」「ミリオンダラー・アーム」のクレイグ・ギレスピー。

 

(以上、映画.comより、引用抜粋。)

 

 

 

 

 

先ず、率直な感想と致しましては、

「面白かった。」と書くと語弊があるかも知れないですが、1994年に起きた、あのフィギュアスケート界における最大のスキャンダル、<ナンシー・ケリガン襲撃事件>をもとにした、事件の真相とともに事件に関与する疑惑の人となった、当時ナンシー・ケリガン選手のライバルであったトーニャ・ハーディング選手の人生を描いたセミドキュメンタリー映画で、凄く興味深く観ることが出来ました。

 

 

本作は、そのトーニャ・ハーディング役を稀代の美人女優マーゴット・ロビーが企画段階からプロデューサーとして関与して、演じていることでも話題を呼んだ作品でした。

 

 

あの事件当時は、視聴率の数字ばかりを追うマスコミに連日踊らされていた事もあって、私も当初から、トーニャ・ハーディングが加害者として関与していると思い込んでいましたが、本作品は、あの「事件」の「真相」までを深く斬り込んだ伝記ドラマでした。

 

 

インタビュー形式で始まり、所謂、舞台劇などで言うところの<第四の壁>を越えて語らせる演出もなかなかしたたかさも感じさせました。

襲撃事件の裁判の模様なども全世界的に報道されましたが、その「真相」は一体どうだったのか?

隠された側面やトーニャ側の視点はこの事件の真相を補完するが、その内情は相当ぶっ飛んだコメディの様な信じられないような経緯だった様で、その点で、すごく面白くまた末恐ろしくも感じてしまうほどの内容でした。

 

 

兎に角、出演者の風貌と演技がすごかったでした。

トーニャ・ハーディング、トーニャの母親、トーニャの元夫のジェフ・ギルーリー、その友人の誇大妄想症の引きこもりニート生活を送る自称・元諜報員というショーン・エッカートなど、ある種、良く言えば個性的な登場人物に事欠かない。

皆ソックリで、しかも行動も稚拙極まりないお馬鹿な連中そのもの。

あたかもコメディ映画を観るかの様でした。

 

 

マーゴット・ロビーをはじめ出演者みんなの成り切りぶりが素晴らしかったですが、その中でも、特に、人を人と思わない、いわゆる毒親の母親の権化みたいな、アリソン・ジャネイによる毒を吐きまくるトーニャの母親役の演技も、第90回米国アカデミー賞助演女優賞を獲得したのはダテじゃないのが分かる鬼畜ぶり。

 

 

狂気の演技そのもので、ナイフを投げて刺したシーンでは、同じ上映回でご覧になられていた外国人の初老の女性の観客が「オーマイガー!」と思わず叫ばれたのにも驚かされるというハプニングもあったり(苦笑)。

 

 

あの映画『gifted/ギフテッド』で、天才少女役を演じたマッケナ・グレイスちゃんが演じた小学生当時のトーニャ役から、マーゴット・ロビーのトーニャの15歳役は確かに多少の無理もあったかも知れないですが、かと言って、あのかなり激しいセックス描写をあの子役のマッケナ・グレイスちゃんに演じさせるのも如何なものかとも思えたので、トーニャが思春期を迎えた頃からを、マーゴット・ロビーが演じるのはアレはアレで良かったと思っています。

 

 

 

相当フィギュアスケートのスケーティング技術の猛特訓も積んだことかと思いますが、15歳以降のトーニャ役のマーゴット・ロビーの大熱演にはオスカーノミネートも頷けましたし、流石に、即席でトリプルアクセルの習得までは無理だったのは当然のことかと理解出来ますから、それでも短期間で、あそこまでの演技を習得出来ただけでも素晴らしいと思いました。

 

 

 

CG合成処理ながらも、トリプルアクセルの演技も映像化されていたのですが、極々自然に映っていて綺麗でした。

 

▲マーゴット・ロビー(上):トーニャ・ハーディングご本人(下)

 

しかしながら、現実に、プアー・ホワイト(貧困層の白人)という境遇にあって、スケート技術を向上させるための資金がないとのハンデを抱えながらも、トーニャ・ハーディングは、そのトリプルアクセルを、日本の伊藤みどりさんに次いで世界で2番目に跳んだ女子フィギュアスケート選手なのですから、その事実だけとっても凄い偉業ですよね!

 

 

マーゴット・ロビー自体は、顔付きなど外見上はそれ程にもトーニャ・ハーディングには似ていなかったですが、内に秘めたる表情や表現方法がソックリというか、トーニャ役に違和感もなくて凄かったですね。

 

▲『スーサイド・スクワッド』のハーレ・クイン役のマーゴット・ロビー

 

流石に『スーサイド・スクワッド』で悪女ハーレ・クインを演じただけありますよね。

 

 

他にも、暴行や銃の乱射、誘拐までもを繰り返すといったトーニャのDV夫のジェフ・ギルーリー役を、最近では、あのMARVEL映画『キャプテン・アメリカ』シリーズのバッキー・バーンズ役でも有名なセバスチャン・スタンが好演。

 

 

実際のところ、<ナンシー・ケリガン襲撃事件>に誰が関与したのかどうかさえもよく分からないながらも、周りの登場人物たる事件の当事者が、<いい加減>と言うと怒られそうですが、みんな一体何処まで本当の事を語っているのかもよく分からないのですが、「いや待てよ。もしや、正直これが実際の事件を基にした完全なるフィクションです。」と言われても許してしまうかもしれない位に、事実は小説よりもなんとやら・・・。

 

 

プアー・ホワイト(貧困層の白人)問題、なまじっか高度なスケーティング技術を習得するあまりの肥大化する自意識の過剰、元夫とのDV合戦による暴力の嵐、視聴率の数字ばかりを追うマスコミ、家庭的なイメージが重要な要素とされた当時の女子フィギュアスケートの世界による米国スケート協会からの差別と偏見、それに伴う採点評価点数の不正、そして幼少からの貧困と無教養を強いた母親からの虐待の生い立ちなどなど、今日的なテーマとしっかりリンクしていたり、またレーガン元大統領ポスターを意味深に映し込ませることによって、レーガノミックスの時代の政策を見習うトランプ現大統領の現代の時代とを上手く呼応させ、現政権批判をそれとなく訴えかけている点も実に面白かったですね。

 

要は、そういった点からも、本作品を、単なるフィギュアスケート界における過去のスキャンダルのみの映画に留めていない辺りも凄いと思いましたね。

 

 

 

グレイブ・ギレスピー監督は、『ラースと、その彼女』のような心温まる映画も撮られる反面、こう言ったある種社会派を内包した映画も撮られるのかと感心しましたね。

 

 

 

それと何よりもカメラワークが良かったですね。

フィギュアの演技のシーンは、演技構成の再現が主眼ではなく、トーニャの表情に寄った撮影が施されていて、見応えがありました。

 

 

お話しの展開や編集も早く小気味よく、特に、私にとっては挿入歌の選曲の音楽センスが凄く良くて、早速、iTunesでサントラ盤をダウンロードした位に気に入った次第でした。

 

しかしながら、劇場パンフレットによりますと、その実、「トーニャ・ハーディング」の名前を聞いただけで、楽曲提供を断るアーティストやエージェントが多く、彼らを辛抱強く説得して映画を観て貰って廻って、この70~90年代の懐かしのナンバーを挿入歌として楽曲使用出来るに至ったらしく、本当に音楽担当スタッフにも感謝したいですね。

 

 

映画を観るまでは、トーニャ・ハーディング選手と言えば、どうしても私も、靴紐が演技途中で切れて、再演技の抗議をした末に認められたといった、ずる賢い印象が濃かったのですが、今回のこの映画を観て、降りかかった災難にたった独りで立ち向かって、本当に孤独で、マスコミから加害者扱いを受ける中、戦っていたと思うと、育ちが良くないからと言って、家庭的なイメージを重要視するといった当時のフィギュアスケート界にあって、実力勝負をさせてもらえなかったトーニャが、あまりにも可哀想で気の毒に映ってしまいましたね。

 

 

最後に実際のご本人たちの映像が流れましたが、自称・元諜報員というショーン・エッカートの発言がそのまんま過ぎて、笑うのを通り越して、本当のイカレた野郎だったのが分かり、末恐ろしくなり、<類は友を呼ぶ>の格言じゃないですが、教養や情操教育など、個人の性格を形成する基礎的なものはやはりとても大事なんだなと思いましたね。

 

 

私的な評価と致しましては、

プアー・ホワイト(貧困層の白人)問題や、毒親による日常的な虐待、男性による暴力をはじめとした慢性的なDV行為など、今日的なテーマも内包させながらも、決して実力重視のみではなかった、当時の米国女子フィギュアスケート界の在り方などの問題もクローズアップさせながら、それとなくレーガン元大統領のポスターを映り込ませることにより、レーガノミックスの政策を推し進めるトランプ現大統領の現代とをしっかり呼応させ、現政権批判をしながら、本作品を、単なるフィギュアスケート界における過去のスキャンダル映画として扱うことに留めることなく演出している辺りが凄いとも思いました。

 

また、学校も親から強制的に中退させられて、他に取り柄もなかったトーニャの悲哀も感じられる顛末には、一定の共感も得られるのではないだろうか?

 

方法論に問題はあっても、何処までもタフで実力を発揮するトーニャの生き様には感服するばかりでした。

 

 

あの事件の際の「真相」がどうであれ、なかばコメディ映画の様な稚拙すぎる今回の襲撃事件については、驚きや笑いを通り越して、逆に末恐ろしく思えてきましたね。

従いまして、五つ星評価的にはほぼ満点の★★★★☆(90点)の四つ星半評価の高評価が相応しい作品かと思いました次第です。

 

 

●『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』予告編/シネマトクラス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◎劇場での販売価格(667円+税)の割りには、劇場パンフレットが、25ページに亘り、かなり充実した内容でしたので、是非、劇場鑑賞されるご予定がお有りの御方は、購入されることをお勧めします。

 

 

 

 

 

 

 

 

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今回も最後までブログ記事をお読み下さり誠に有り難うございました。