『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(2017年) #イオンシネマ京都桂川 | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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先週の4/4(水)。3/30(金)の公開日から6日目に、年老い傘寿を過ぎた父親と一緒に、イオンシネマ京都桂川まで鑑賞に出向きました。

京都市出身のアーティストの辻一弘さんが、主演のゲイリー・オールドマンをウィンストン・チャーチルに変貌させる特殊メイキャップで日本人初のメイキャップ&ヘアスタイリング部門でのオスカーを受賞した効果もあるでしょうが、公開してまだ日も浅いと言うのに、イオンシネマ京都桂川では公開している劇場の箱があまり大きくない上に、1日にわずか3回の上映しかなかったのも手伝ってか、当日は、辻一弘さんの地元・京都市の劇場ということもあり、ほぼ満員の観客の入りでした。

 

ただ、出来ますれば、もう少し大きな劇場のスクリーンで観たかったですね。

 

 

 

 

「<世界を救った男>の邦題は大袈裟過ぎ(苦笑)。(18.4/4・字幕)」

ジャンル:人間ドラマ

原題:DARKEST HOUR

製作年/国:2017年/イギリス

配給:ビターズ・エンド=パルコ

公式サイト:http://www.churchill-movie.jp/

上映時間:125分

公開日:2018年3月30日(金)

監督:ジョー・ライト

キャスト:

ゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット・トーマス、リリー・ジェームズ、スティーヴン・ディレイン、ロナルド・ピックアップ、ベン・メンデルソーン

 

 

【解説】

名優ゲイリー・オールドマンがイギリスの政治家ウィンストン・チャーチルを演じ、第90回アカデミー賞で主演男優賞を受賞した歴史ドラマ。

チャーチルの首相就任からダンケルクの戦いまでの知られざる4週間を、「つぐない」のジョー・ライト監督のメガホンで描いた。

第2次世界大戦初期、ナチスドイツによってフランスが陥落寸前にまで追い込まれ、イギリスにも侵略の脅威が迫っていた。

連合軍が北フランスの港町ダンケルクの浜辺で窮地に陥る中、就任したばかりの英国首相ウィンストン・チャーチルの手にヨーロッパ中の運命が委ねられることに。

ヒトラーとの和平交渉か徹底抗戦か、究極の選択を迫られるチャーチルだったが……。

 

チャーチルを支える妻クレメンティーンに「イングリッシュ・ペイシェント」のクリスティン・スコット・トーマス、秘書エリザベス役に「ベイビー・ドライバー」のリリー・ジェームズ、英国王ジョージ6世役に「名もなき塀の中の王」のベン・メンデルソーン。

 

脚本は「博士と彼女のセオリー」のアンソニー・マッカーテン。

 

アカデミー賞では主演男優賞のほか、オールドマンの特殊メイクを担当した日本人メイクアップアーティストの辻一弘らがメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した。

 

(以上、映画.comより、引用抜粋。)

 

 

 

お話しの流れ的には、

1940年5月9日。下院議員議会にて、内閣不信任決議案を出された、宥和政策主義(和平交渉主義)のチェンバレン首相の後任選びからお話しは始まります。

 

▲チェンバレン前首相役(ロナルド・ピックアップ)

 

▲ハリファックス子爵役(スティーヴン・ディレイン)

 

翌日の5月10日。

新聞で首相辞任が発表され、海軍大臣ウィンストン・チャーチルが、国王ジョージ6世からの信頼も厚いハリファックス子爵が、イギリス議会の第1次対戦後以降の慣例から上院(貴族院)議員からは首相にはなれないという事由も手伝って、国王は納得いかない様な素振りを見せながらも、チャーチルに首相就任を命じる。

 

 

この首相任命から、ダイナモ作戦によるダンケルク大撤退劇までの激動の27日間に焦点を絞り、ヨーロッパの連合国が苦戦を強いられる中、イギリスの挙国一致内閣の首班となったウィンストン・チャーチルが、苦悩の末、国家の決断を強いられる政治ドラマです。

 

 

謂わば、日本でも昨年公開された、クリストファー・ノーラン監督の映画『ダンケルク』の政治的な側面を描いたドラマとも言える映画です。

本年度・第90回アカデミー賞にて主演男優賞でオスカーを受賞したゲイリー・オールドマン。そして、日本人初の栄誉に輝くメイキャップ&ヘアスタイリング部門にてもオスカーを受賞した辻一弘さんはじめ計3名の特殊メイキャップ担当による、メイキャップ並びに、相当研究を重ね苦労が垣間見えるゲイリー・オールドマン自身のチャーチルに成り切った渾身の演技力といった双方による芸に酔いしれました。

 

 

 

 

今作のジョー・ライト監督は『つぐない』でも第二次世界大戦下のイギリスを舞台にしていましたが、今回は<実在した政治家>といっても決して英雄譚ではなく、老獪ながら迷いもある普通の人間として描いている点が現代風味とも言えるのでしょうが、何しろ歴史的な超有名人ということで創作面は、限られる中、そこそこの脚色を加えながら、ほぼ再現ドラマに徹した様な趣向ながら、チャーチルのはみ出す個性・変人ぶりを含め魅力的に表現するのみならず、ドラマチックな展開を見せる戦時内閣の<劇場>ぶりは、まさに謳い文句通りの「心震わす」エッセンスたっぷりでした。

 

私個人的には、ジョー・ライト監督作品では現代劇の映画『路上のソリスト』が好きなのですが、こういった歴史的な史実を扱った映画も、やはり巧いですね。

ジョー・ライト監督が巧いと言うよりも、今回のそもそもの脚本の草稿を作った、脚本家アンソニー・マッカーテンの筋立てが巧妙なのかもしれないですね。

 

 

但しながら、映画の質とは、全く別の次元の話しになりますが、ヒトラーを悪の枢軸として描くのは良いとしても、<ヒトラーから世界を救った男>との邦題の副題に関しては、その大英帝国自体も、歴史的にもアイルランドやインドなどを植民地支配してきていた訳であり、短絡的に、どこかヒーロー映画然としたかの様な耳障りの良い邦題の副題には、映画の内容からすれば違和感を憶えるしかなかったですね。

せめて邦題サブタイトルも、他に似たような映画タイトルの作品もありはしましたが(汗)、「ヒトラーに屈しなかった男」程度の表現であれば良かったのにとも思われました。

 

 

それに致しましても、

クリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』を観ていた際には、僅か約4週間のうちに、約30万とも35万人とも言われたイギリス海外派遣陸軍及びフランス軍の全滅の危機に瀕する中、ダイナモ作戦によるダンケルク大撤退劇を成功に導くべく、蔭では、実は、カレーの地に包囲された英国人部隊6千人以上の兵士の命が犠牲になっていたことも知らなかったので、ダンケルクの彼らが無事に祖国に帰還出来たのも、このカレーの英国人部隊がドイツ軍を引きつけてくれていたからという事実を知り、凄く哀しく切なかったですね。本当に、チャーチルからの電報文も虚しかったです。

 

 

ただそれ以上に、この映画における政局面での争点は、再度、イタリアのムッソリーニの仲介でドイツと和平交渉を行うか否か。

 

この期に及んで未だに、いわゆる<宥和政策>を唱える戦時内閣の一部の閣僚とそれを由としない首相チャーチルの意見の相違が争点となっていたのでした。

 

で、個人的に、改めて、世界史の教科書の補助教材「この一冊で世界の歴史がわかる!著・水村光男」にて、もう一度勉強し直しますと、

 

「即ち、チャーチルが首相就任前に、1938年3月、ヒトラーが大ドイツ主義を唱えて、オーストリアを武力侵攻で併合した後、次いで、チェコスロヴァキア政府に対してドイツ人が多く居住するズデーデン地方を要求。

これに対して、チェコがフランス・ソ連などとの相互援助条約を頼みの綱としてこれを拒否したが、イギリス・フランスも一時は軍隊を動員したが、ムッソリーニの仲介で、イギリス・フランス・イタリアのミュンヘン会談が開かれ、イギリス首相ネヴィル・チェンバレンはこの要求を認めた。これを<宥和政策>と呼びます。

 

▲左:チェンバレン役(ロナルド・ピックアップ)、右:チェンバレンご本人。

 

チェンバレンは戦争の回避が出来たとして得意満面で帰国するのでしたが、結局、のちにドイツの侵略を増長させたものとして、厳しく批判されるのでした。

事実、翌39年3月、ナチスドイツはチェコスロヴァキアに侵攻し、ボヘミア・モラヴィアを併合したうえで、スロヴァキアを保護国としたので、同国は事実上瓦解し、ヒトラーはスラヴ系民族の征服にも乗り出した。」

とありました。

 

実は、チャーチルが首相就任に至るまでに、チェンバレン前首相をはじめとした<宥和政策>主義者たちには、既に、この様な苦い経緯があったのでした。

 

▲国王ジョージ6世役(ベン・メンデルソーン)

 

 

そんな中、深夜にふらりとお忍びでチャーチルの家に来訪された国王ジョージ6世からの助言もあり、チャーチルは生まれてこのかた一度も乗った事もないロンドン市内の地下鉄に乗るのでした。

それは、市井の人々の声に耳を傾けるためでした。

 

 

私も思わず、これらのシーンに感動してしまったのですが、国王陛下の深夜の来訪も、チャーチルが地下鉄に乗るくだりも、あくまでフィクションで実話ではないそうです。

 

 

で、お話しの流れ上は、この地下鉄に乗り合わせた一般市民の意志を尊重する形で、議会で世に名高い大演説を行い、徹底抗戦の構えを見せるという事でエンディングを迎えることとなります。

 

しかしながら、有事の際の宰相の姿としては、私には、受け取りようによっては少し危険にも映りかねないかとも思えました。

 

周囲の反対を押し切ってまでも、自己の信じる道を貫き通すことが果たして良いのか?

独裁者に抵抗する手段が首相の独善的な専権事項的な行動では矛盾は生まないのか?

など、この作品の生む訴求効果的に、危険性をはらむ不安な要素が全く無い訳ではありませんが、但しながら、独裁者ヒトラーとの絶対的な相違点は、ダンケルクの戦いに赴いた名もなき兵士、謂わば一般市民たちがそうであったように、庶民の方に目を向けているという確信的な判断の点にあるのでしょうね。

 

彼らの声に応えてこそ、国家の代表者と言えるのではなかろうか。

 

のちにノーベル文学賞までをも受賞した言葉の魔術師とも呼ばれるウィンストン・チャーチルが、約4分間に亘る大演説を披露するシーンは、まさに圧巻。

 

 

パンフレットによりますと、

「不確実の時代と言われ、世界でポピュリズム(人民主義)が台頭し、真の民意を汲んで国を導くことの出来るリーダーが不在の今だからこそ、このスピーチで紡がれるパワフルなその言葉の数々に、私たちもまた、心を激しく掴まれ揺さぶられずにはいられない。」とある様に、この映画の隠された裏テーマは、この時代における真のリーダー待望論とでも言えるのかも知れないですね。

 

 

また、チャーチルを支える妻クレメンティーン・チャーチル(クリスティン・スコット・トーマス)や秘書エリザベス・レイトン(リリー・ジェームズ)も、何処かの国のファーストレディの様にお騒がせをしたりすることなく、しゃしゃり出過ぎずに奥ゆかしくて良かったですね。

 

▲クレメンティーン・チャーチル役(クリスティン・スコット・トーマス)

 

▲秘書エリザベス・レイトン役(リリー・ジェームズ)

 

とは言え、この作品を観るに際して、アカデミー賞での主演男優賞でオスカーを獲得した、特殊メイキャップによるゲイリー・オールドマンの成り切り演技や、メイクアップ&ヘアスタイリング部門賞の辻一弘さんの受賞といった事のみを理由として鑑賞するとなると、正直なところ、あまり面白くないかも知れないですね。

 

出来ますれば、可能な限り、『英国王のスピーチ』(2010年)や、ダイナモ作戦によるダンケルク大撤退劇を描いた『ダンケルク』(2017年)なども事前に鑑賞した上で、浅い知識であっても、サラリと予備知識として備えてから鑑賞に臨まれることをオススメ致します。

 

 

私的な評価と致しましては、

この映画を鑑賞していた際には、クリストファー・ノーラン監督の映画『ダンケルク』の鑑賞時には分からなかった背景事情なども解り、相互補完出来て、戦時下の事情も面白く観ることが出来ましたし、市井の人々の声に耳を傾けるチャーチルの姿が本当にあった逸話だと思っていたので、凄く感動したのですが、但しながら、それがフィクションと分かると感動していた気持ちも少々興醒めして、幻滅してしまいました。

従いまして、脚色部分について幻滅してしまった点を☆半分(10点)を減点させて頂きまして、五つ星評価的には四つ星評価の★★★★(80点)くらいの評価点が相応しい作品かと思いました次第です。

 

▲上:ゲイリー・オールドマン、下:ウィンストン・チャーチルご本人(本物)。

 

本当に勝利のVサインのつもりでしょうが、これじゃFワードの「クソ食らえ!」ですよね。

 

※尚、続編も予定されているらしく、次回作はチャーチル・ルーズヴェルト・スターリンによるヤルタ会談を主な舞台とされるらしいです。

 

 

●「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」予告編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回も最後までブログ記事をお読み下さり誠に有り難うございました。