『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』(2016年) #MOVIX京都 #MAUDIE | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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未だブログ記事化していない今年に鑑賞済みの映画が、『ぼくの名前はズッキーニ』、『グレイテスト・ショーマン』、『勝手にふるえてろ』、『ブラックパンサー』、『リメンバー・ミー』と、この『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』の計6本あるのですが、これらの映画は、何れもなかなかの佳作揃いだったのですが、その中でも、とりわけ、この『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』は、あの本年度・第90回アカデミー賞作品賞の『シェイプ・オブ・ウォーター』のヒロインの中年女性イライザ役を演じたサリー・ホーキンスが、カナダで最も有名な女性画家のモード・ルイスの半生を演じ、また、夫エベレット(イーサン・ホーク)との夫婦二人の二人三脚で慎ましやかに歳月を重ねていくといった夫婦の生活の在り方が、実に共感を呼ぶ感動作でした。

 

そこで、是非とも多くの映画ファンの皆様方にも、この映画の存在を知って頂きたく思い立ち、私が鑑賞した作品の順序とは前後しますが、今回、取り急ぎ、ご紹介させて頂く次第です。

 

取りあえず、先ずは、この『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』の邦題に付属している副題が、あまりにも無駄に長いので(苦笑)、以下、『しあわせの絵の具』という表記に省略させて頂き、次より本作品について紹介致します。

 

 

「身の丈に合った生活のみで幸せに満ちた半生(18.3/17・字幕)」

ジャンル:人間ドラマ

原題:MAUDIE

製作年/国:2016年/カナダ=アイルランド

配給:松竹

公式サイト:http://shiawase-enogu.jp/

上映時間:116分

公開日:2018年3月3日(土)

監督:アシュリング・ウォルシュ

キャスト:

サリー・ホーキンス、イーサン・ホーク、カリ・マチェット、ガブリエル・ローズ、ザカリー・ベネット、ビリー・マクレラン

 

 

【解説】

カナダの女性画家モード・ルイスと彼女の夫の半生を、「ブルージャスミン」のサリー・ホーキンスと「6才のボクが、大人になるまで。」のイーサン・ホークの共演で描いた人間ドラマ。

 

カナダ東部の小さな町で叔母と暮らすモードは、買い物中に見かけた家政婦募集の広告を貼り出したエベレットに興味を抱き、彼が暮らす町外れの小屋に押しかける。

子どもの頃から重度のリウマチを患っているモード。

孤児院育ちで学もないエベレット。

そんな2人の同居生活はトラブルの連続だったが、はみ出し者の2人は互いを認め合い、結婚する。

そしてある時、魚の行商を営むエベレットの顧客であるサンドラが2人の家を訪れる。モードが部屋の壁に描いたニワトリの絵を見て、モードの絵の才能を見抜いたサンドラは、絵の制作を依頼。

やがてモードの絵は評判を呼び、アメリカのニクソン大統領から依頼が来るまでになるが……。

 

監督はドラマ「荊の城」を手がけたアシュリング・ウォルシュ。

 

(以上、映画.comより、引用抜粋。)

 

 

カナダで風景や身近な動物や草花を素朴なタッチで描いた、所謂、素朴派の女流画家モード・ルイス(1903年生~1970年没)の伝記映画。

重度の若年性関節リウマチのせいで手足の自由が制限されてしまっていたモードが、自立して、やがて好きで我流で描いていた絵の評価を得られていく過程などを、あくまでも夫エベレットと夫婦二人三脚で過ごした<日常>に照らして丁寧に描いた作品。

 

 

 

主演のサリー・ホーキンスのモード役への成り切りぶりが素晴らしく、『パディントン』シリーズのブラウン夫人役に、『シェイプ・オブ・ウォーター』のヒロインの中年女性イライザ役と話題作への出演が続いていますが、中でも女優としての演技力が活かされているのは、特に本作品かと思わさせられるほどの熱演でしたね。

 

 

絵本作家の両親を持ち、サリー・ホーキンス自身もイラストレーター志望だったこともあってか、この映画の撮影に際し、改めて、役作りのために素朴派画家の絵画クラスに数ヶ月間通ったらしく、流石にモードの本物の絵画には及ばないまでも劇中にサリー・ホーキンスが描いた絵画も、本物の絵画にかなり似せてきていましたし、この絵柄には、サリー・ホーキンスに乗り移ったモード・ルイスの人柄が出て来ているかの様でもあり好感が持てましたね。

 

 

子どもの頃から重いリウマチという手足に障碍を患い、一族から厄介者扱いされてきたモード。

孤児院で育ち、学もなく、生きるのに精一杯だったエベレット。

そんなはみ出し者同士の二人は穏やかに、時に衝突しながら日々を歩んでいくのでした。

 

 

サリー・ホーキンス演じるモード役もさることながら、無骨で感情表現が不器用で朴訥な、のちに夫となるエベレット役を演じたイーサン・ホークも味わい深い演技で非常に良かったでした。

 

 

戦前生まれの昔気質の男の人の性格だからと言っても、粗暴で男尊女卑なところは、この二人を見ていて本当にヒヤヒヤして心臓に悪かったですし、エベレットが飼っている地鶏の首を締めて勝手にシチューの具材にした時など、エベレットが怒り出すのではないかと心配になりましたし、空いた魚の缶詰をパレット代わりにペンキで絵を描いていくモードが、当初は紙や板に。次第にリビングの壁、階段にまで絵を描いていった際も、エベレットの反応が気懸かりで、ついつい随分と肝を冷やしてしまいました。

 

 

「ここではオレに従うんだ!ボスはオレだ!」と怒鳴り散らすエベレット。

しかしながら幸いにして、なんだかんだ言ってもエベレットもモードの絵が好き。

窓ガラス、鏡、そして家の外まで。モードの色に染まっていくエベレットの家には、まさしく一気に春色へと季節が変わったかの様でしたね。

 

 

私の印象に残ったワンシーン。

生活雑貨店でモードの絵を売る時、店主から言われた「こんな絵なら、ウチの子供でも描ける。」と言う言葉に対し、「言うのは容易いんだ!」「クタバレ!」と怒鳴りながら店を去るエベレット。

それを見たモードも嬉しそうに「クタバレ!」と呟き、エベレットの後を付いていくシーン。

 

 

結婚式のあとに結ばれるシーンでの「私達はひと組の伸びきった靴下と穴だらけの靴下」というくだりと、その言葉に対する返答のシーンも良かったでしたね。

 

人生のほとんどを、言葉は悪いですが、ほぼ貧乏暮らしの中で過ごされたという、モード・ルイスとエベレットのご夫婦。

 

本当のしあわせとは何か?

 

サリー・ホーキンスが、この「モード・ルイス」を演じながら、その生き方を以て、我々に体現してくれていました。

 

身の丈に合った月並みな暮らしの中、好きな人と一緒に食事を摂って寝て、何よりも好きな絵画を描いて一生を過ごす。

 

それに勝る喜びはないという事でしょうね。

 

人生に一体何を望むのか?

モードとは、生きてきた時代が違うという言葉で片付けるべきなのか?

現代人の我々にこそ、この映画は「しあわせ」の定義というものを訴えかけているのかも知れないですね。

 

衣食住に贅沢をしなければ、趣味を大事にしながら、自立した大人の生き方が出来るし、他人は他人、自分は自分の人生があるとでも言いたげな作品でした。

 

ただ、モードの実の兄と叔母が本人の為に良かれと思ってしでかしたことでしょうが、過去に衝撃的な事実がある事が明かされた際には、観客の私もかなりのショックでした。

そう言う意味合いでは、決して、邦題のいう「しあわせ」と呼べるほどの幸福一杯の人生ではなかったのかも知れないですが、無骨で朴訥な人柄ですが、夫エベレットとの出会いを通して、モードは、新たな「しあわせ」を手にすることが出来て本当に良かったと思えましたね。

 

※以下、モード・ルイスの描いた本物の絵画の画像です!

素朴なタッチながら、繊細で、すごく細部まで拘った凝った絵画に仕上がっていますよね。

 

▲スノーボール

 

▲3匹の黒い猫たち

 

全編に亘って、自然光で撮影された映像は、カナダの港町外れの田舎町の風景に美しさと真実味を帯びていて、鮮やかな色彩で描き出される風景は、モード・ルイスの絵と同じく、春夏秋冬、まさに喜びに満ち溢れていました。

 

自然光を採り入れた撮影手法が奏功したのか、カナダの田舎町の原風景の映像美も良かったですが、使用されている楽曲も凄く良くて雰囲気を盛り上げてくれていました。

 

▲モード・ルイスご本人(1903年生~1970年没)。

 

エンドロールの際に、ほんの少し登場するモード・ルイスとエベレットのご夫婦ご本人のモノクロ映像が流れるのも良かったですし、エンドロールのテロップの合間合間にモード・ルイスの描いた本物の絵画が挿入されていたのも非常に良かったです。

 

▲冬のシカと子ジカ

 

 

 

私的な評価と致しましては、

身の丈に合った生活のみで充分しあわせを満喫した半生を送ったとされる、カナダで最も有名な素朴派の女性画家のモード・ルイスの半生の実話を、あのサリー・ホーキンスが好演するばかりでなく、夫のエベレット役のイーサン・ホークも無骨で朴訥な人柄のキャラクターを熱演。夫婦の絆を体現してくれていました。

彼女らの生活ぶりを通して、周囲の白い目に負けない生き様や、困難に遭っても努力で道を切り開いている姿は何よりも勇気と希望を貰えましたし、本当の<しあわせ>とは何なのかと自問自答してしまう様な作品でした。

兎に角、大袈裟に描写する事無く、多くを語らす事もなく、あくまでも夫婦の絆の<日々>を丁寧に描いてくれている点が素晴らしかったですね。

従いまして、五つ星評価的にも、ほぼ満点の四つ星半の★★★★☆(90点)の評価も相応しい作品と思いました。

 

※今回は、土曜日も終日勤務のある彼女と一緒に劇場鑑賞出来ずに、年老いた傘寿過ぎの父親と一緒に鑑賞しましたが、またセカンド上映をして下さる劇場があれば、出来れば今度は彼女と一緒に鑑賞したいと思う程の作品でした。

決して派手な映画ではないですが、デートムービー的にもオススメかと思いました。

 

●映画『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』予告編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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今回も最後までブログ記事をお読み下さり誠に有り難うございました。