『デトロイト』(2017年) #TOHOシネマズ二条 #キャスリン・ビグロー #ジョン・ボイエガ | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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今から1ヶ月も前に鑑賞した映画で、しかも公開後の観客動員数が少なくて早期に上映終了した作品ですが、本作品「デトロイト」は、社会派ドラマとして、とても素晴らしい映画でしたので、今更ながらにはなりますが、個人的にも備忘録的にブログ記事として記録に留めておきたいと思います。

 

今からちょうど1ヶ月前、バレンタインデーの翌日の2/15(木)。

この時分、TOHOシネマズ二条では、既に公開後からの観客動員がイマイチだったためか1日1回のみの上映。それも夜9時からのレイトショーのみの上映でしたが、彼女が平日に仕事を終えて一緒に観に行ける時間帯を考えると、ちょうど都合の良い上映スケジュールでしたので、鑑賞に出向きました。

デートムービーには不向きな作品でしたが、厭な顔も見せずに一緒に観に行ってくれた彼女には唯々感謝!!!

 

▲上記の映画ポスターの謳い文句にありますように、本当に、アカデミー賞にて、あの『ハート・ロッカー』以来の女性監督による二度目の監督賞を最有力で受賞するかと思うほどの佳作でしたので、アカデミー賞にどの部門も一切ノミネートされていないのが嘘であるかの様な位に素晴らしい出来栄えの映画でした。

 

 

「戦争映画のような手に汗握る戦慄の40分間(18.2/15・字幕)」

ジャンル:人間ドラマ

原題:DETROIT

製作年/国:2017年/アメリカ

配給:ロングライド

公式サイト:http://www.longride.jp/detroit/

上映時間:142分

公開日:2018年1月26日(金)

監督:キャスリン・ビグロー

キャスト:

ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、ジャック・レイナー、ベン・オトゥール、オースティン・エベール、ジョン・クラシンスキー、アルジー・スミス、アンソニー・マッキー、ジェイソン・ミッチェル、ジェイコブ・ラティモア、ハンナ・マリー、ケイトリン・デヴァー、ネイサン・ディヴィス・ジュニア、ペイトン・アレックス・スミス、マルコム・デヴィッド・ケリー

 

 

【解説】

「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」のキャスリン・ビグロー監督が、黒人たちの不満が爆発して起こった1967年のデトロイト暴動と、その暴動の最中に殺人にまで発展した白人警官による黒人たちへの不当な尋問の様子をリアリティを追求して描いた社会派実録ドラマ。

 

1967年、夏のミシガン州デトロイト。権力や社会に対する黒人たちの不満が噴出し、暴動が発生。3日目の夜、若い黒人客たちでにぎわうアルジェ・モーテルの一室から銃声が響く。

デトロイト市警やミシガン州警察、ミシガン陸軍州兵、地元の警備隊たちが、ピストルの捜索、押収のためモーテルに押しかけ、数人の白人警官が捜査手順を無視し、宿泊客たちを脅迫。

誰彼構わずに自白を強要する不当な強制尋問を展開していく。

 

出演は「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」のジョン・ボイエガ、「レヴェナント・蘇えりし者」のウィル・ポールター、「トランスフォーマー/ロストエイジ」のジャック・レイナー、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」のアンソニー・マッキーら。

脚本は「ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」も手がけたマーク・ボール。

 

(以上、映画.comより、引用抜粋。)

 

 

映画の内容的には、ちょうど昨年がこの事件から50年前の節目の年に相当する、1967年の米国のデトロイトで黒人の不満が爆発して起こった最大規模の暴動の最中に、それに乗じて行われた、まさに<戦慄の一夜>とも言える程の白人警官による黒人たちへの不当な尋問により殺人にまで発展した<アルジェ・モーテル事件>を基にした作品です。

 

 

この1967年の所謂、デトロイト騒動に代表されるアメリカの人種差別の闇の歴史に焦点を当てた社会派ドラマを、社会派映画の旗手たる、キャスリン・ビグロー監督がリアルな描写で臨場感たっぷりの演出により『ハート・ロッカー』『ゼロ・ダーク・サーティ』でも組んだ脚本家マーク・ボールと三度目のコラボ作品として、手掛けられた作品でしたが、Twitterのツイートやクチコミ投稿サイトの各レビューにもある様に、非常に緊張感が張り詰める、重苦しい映画ではありましたが、予想外に、この事件の被害者でもある、ザ・ドラマティックスというモータウンミュージックのグループのリードボーカルのラリー役のアルジー・スミスが叫び歌う賛美歌などが非常に上手くて、奏でられる旋律など劇伴が凄く良くて、単なるドキュメンタリー映画的な再現フィルム映画とは異なり、その点は、飽きが来ずに観る事が出来たので救われましたね。

 

 

アメリカの闇の歴史として、黒人差別というと、ついアメリカ南部という印象がどうしても強いのですが、実際には南北戦争のあと南部方面から北部に流れてきた黒人のみならず、第一次大戦後に、黒人らの多くの人々が職を求めてこの街デトロイトに流入してきた歴史があるらしいです。

今作品の冒頭でも、テロップと紙芝居っぽいアニメーションでそういった経緯を説明してくれますが、詳細については、パンフレットの解説文が詳しく教えてくれるので、パンフレットがもしも手に入る様であれば、出来ますれば、是非購入するなど目を通して下されば、より深くアメリカにおける黒人差別の構図が理解出来ることかと思います。

 

 

映画でも、冒頭に街の中心部に住む白人が郊外に逃げ出したという状況を簡単に述べていましたが、これは、単に、デトロイトだけの現象ではなく、アメリカの大都会では労働者階級が主に住む地域と、中産階級・上流階級層が住む住宅地が分かれている場合が多く、それは謂わば、白人と黒人だけの問題でもなく、中産・上流階級層のアングロサクソン系プロテスタントの住宅地と、貧しい労働者階級であるアイルランド系カトリックの住む地域がハッキリと分かれている様に、特に、母国で英国人の差別に晒されてきたアイルランド系の移民の間では取り分け、この黒人差別が盛んだったらしく、差別されている者が更に差別を生むと言った悪循環を繰り返していた様ですね。

 

 

もっとも、差別される理由をすべて白人のせいして良いものか否かも、差別するのも「卵が先かニワトリが先か」という議論にもなるかも知れないですが、差別される側にもそれなりに問題の引き金になる場合もあり得ます。

 

例えば、この映画がメインに描いているデトロイト市警の白人警官による極めて差別的悪質的な黒人らへの取り調べにしても、そもそも論からすれば、最初は、黒人が運動会用のスターターの銃(だから音はすれども弾は出ない。当然ながら人を殺傷する能力もない。)を、白人警官が集結している最中の闇夜に向かって撃つという挑発的な行為をしたことが発端となっており、この辺りは、率直に言っても黒人側もバカとしか言いようがない気がしました。

 

 

また、映画の中でも、デトロイトで暴動が起きた初期には、暴徒化した黒人たちを諫めようとする黒人の下院議員が出て来ましたが、いくら暴動を起こしても良い結果には繋がらないと諭しても、黒人たちは聞く耳を持ちませんでしたし、理性を失ってしまって手の付けようがない始末。

 

 

とは言え、本作では、1967年のデトロイト騒動の黒人による暴動そのものにスポットを当てるのではなく、この騒動に乗じた、その後のデトロイト市警の白人警官の異常な対応自体が、その黒人たちを遥かに超えた代物であり、<狂気>に満ちた<ゲーム感覚>による殺人をも伴う尋問であり、決してあってはならない所業であることは確かであり、まさしく不当な犯罪行為に他ならないですから。

ここに描かれていることが全て真実ならば、すごく恐ろしい話だと思わざるを得ないし、各俳優陣の迫真の演技で、本当に現在ここで起こっている出来事かの様な錯覚を起こす程でしたので尚更でした。

 

 

また、この事件で特徴的なのは、今回の事件には白人の若い女性が二人も巻き込まれており、彼女たち自体は黒人に対する差別意識を持っていないのに、と言うか、持っていないからこそ白人警官から憎悪の対象とされ、黒人と一緒に過酷な取り調べを受けざるを得ないのでした。

 

 

 

そう言えば、近年でも、ミシガン州ではなくカリフォルニア州の話ですが、丸腰の22歳の黒人青年を射殺した白人の鉄道警察官の事件である<オスカー・グラント三世射殺事件>を基にした『フルートベール駅で』(2013年)という映画もありましたが、半世紀前にも、似たような事件が起きていた事からすれば、現在の黒人社会が白人社会に反発するのも無理からぬ歴史を感じます。

 

▲『フルートベール駅で』(2013年)

 

米国のデトロイトというと、モータウンミュージックに自動車産業で栄えた街という印象が浮かび、そして現在は荒廃して治安の悪さで有名な都市のひとつになっています。

たしか、映画『ロボコップ』も近未来の荒廃したデトロイトが舞台。

 

 

今でもデトロイトは人種差別が色濃く残る街ですが、1960年代当時は、更に酷く白人と黒人間の軋轢は一触即発状態でした。

 

 

 

これまた些細な事を切っ掛けに暴動に発展する様子がスリリングに描き出され、戦車まで出動し、荒廃した街はまるで内戦状態。

 

 

これが、人類を月面着陸させようと計画していた当時の1960年代後半のアメリカの姿なのかと愕然となってしまいました。

 

 

延々と約40分にも及ぶ、<ゲーム感覚>の様な<狂気>の尋問シーンの真に迫る様子は、お芝居と分かっていても、それをも忘れてしまうほど手に汗握る状態。

 

 

白人警官と被害者の双方から白眼視されながらも、その間に立つ難役を『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のフィン役でも知られるジョン・ボイエガが好演。

キャスリン・ビグロー監督、脚本家マーク・ボールは、ちゃんとこういった人物も用意している辺りも素晴らしかったですね。

 

 

そして、問題の差別主義者の白人警官クラウス(仮名)役を、『リトル・ランボーズ』(2007年)でもヤンチャ坊主役でデビューした、ウィル・ポールターが、ちょっとした仕草や目つきで上手く憎々しい役柄を演じ切っていました。

尋問する白人警官にしても尋問される側の被害者にしても、いずれのキャラクターにも人間らしい多面性を持たせる事で、深みのあるドラマに仕立て上げた脚本家、そして、それを演出した監督の手腕は見事でした。

 

 

この映画では、<アルジェ・モーテル事件>の後の裁判の模様まで、その顛末をも時系列に描き出しています。

クライマックスの事件現場シーンを超えている分、何となく長く感じることから、裁判シーンから現場を再現していくという、例えば、映画『女神の見えざる手』(2017年)の描写の様なオーソドックスな手法も考えられるのかも知れないですが、事件の顛末が最後まで見えない方が、より面白いでしょうし、当時の裁判所の下す判断にも問題意識が芽生えるでしょうし、時系列で良かったと私は思いました。

 

 

 

 

私的な評価と致しましては、

正直なところ、胸クソ悪くて、二度と観たくなくなる様な、142分間ですが、一方では、絶対に目を逸らしてはならない使命感の様な感情も湧き上がって来る作品であり、ザ・ドラマティックスというモータウンミュージックのグループの元ボーカルの歌声を中心に、劇伴が凄く良かったのも長時間の緊張感をほぐす良い潤滑油になっていたと思いましたし、各キャストの迫真の演技によって、単なるドキュメンタリー映画や再現フィルムとは一線を画す作品に仕上がっていたと思いました。

従いまして、五つ星評価的にも、ほぼ満点の★★★★☆(90点)の四つ星半の評価も相応しい作品かと思いました次第です。

 

 

●映画『デトロイト』日本版予告編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京都市内近郊にお住まいの御方々に朗報です♡

【京都シネマ名画リレー上映会】にて、4/28~5/11のGW期間中に、午前10時10分より、この「デトロイト」もセカンド上映して下さるそうなので観逃された御方々は是非ご覧下さればと思います次第です。

 

※でも、京都シネマさんには、公開予定の新作映画も出来る限り、いち早く公開して下さることを願っています(汗)。

 

 

 

 

 

 

 

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今回も最後までブログ記事をお読み下さり誠に有り難うございました。