『スリー・ビルボード』(2017年) #イオンシネマ京都桂川 #フランシス・マクドーマンド | HALUの映画鑑賞ライフのBlog

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今回、かなり順序が前後していましたが、ようやくながら、今月第1週目の週末の2/4(日)に、彼女と一緒にハシゴ鑑賞していました、第90回アカデミー賞脚本賞他の最有力候補である『スリー・ビルボード』と、邦画『羊の木』の感想をまとめさせて頂きます。

 

今回の映画が両作品とも、ちょっと心情的に濃い内容の映画でしたので、彼女が一緒に楽しめたかどうか不安でもあった映画でしたね。

 

 

今回は、この日の1本目に鑑賞しました、この日が日本公開4日目のオスカー候補作として最有力の『スリー・ビルボード』について紹介させて頂きます。

 

先ずは、今回は、例年、アカデミー賞関連作品については、かなり遅れての上映といった、同じ轍を踏むことなく、アカデミー賞候補作ではありますが、シネコンよりもミニシアター向きの本作品『スリー・ビルボード』を積極的に上映するべく尽力して頂いた、イオンシネマ京都桂川の支配人はじめ劇場スタッフの方々に御礼を申し上げます。

 

観客動員数の面では、それなりにご苦労なされておられるご様子ですが、映画ファンの端くれとしましては、とても嬉しい限りでした。

 

 

「怒りは怒りを呼ぶのみ。赦しの精神を描いた映画(18.2/4・字幕)」

ジャンル:サスペンス

原題:THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING,MISOURI

製作年/国:2017年/イギリス

配給:20世紀フォックス映画

公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/threebillboards/

上映時間:116分

公開日:2018年2月1日(木)

監督:マーティン・マクドナー

キャスト:

フランシス・マクドーマンド、ウディ・ハレルソン、サム・ロックウェル、アビー・コーニッシュ、ジョン・ホークス、ピーター・ディンクレイジ

 

 

 

この同じ日に観た、邦画『羊の木』にも、元殺人犯に息子を殺され、犯人に復讐心を抱く父親役として深水三章さんが(これが遺作となったそうですが)好演され、そんな殺人事件の被害者の家族という点からやるせない憎しみの思いの丈を爆発させたい気持ちには思わず同情してしまいますが、仇討ち禁止の法律がある通り、自ら手を下しても、新たなる憎しみを生むだけで、憎悪の連鎖は途絶えることがなく、今作も、そういった憎しみの連鎖と神の下の赦しの精神を描いた作品とも言えるかも知れないと思いました。

 

 

兎に角、誰もが完全なる<善>でもないし、また<悪>とも言えない。

そもそも人間を、単純に、勧善懲悪的な色分けが出来るはずもないとでも言いたげな脚本仕立てには流石に凄いとは思わざるを得なかったですが、決して、そこにはどうにもこのお話しに共感出来ない自分が居たのでした。

 

 

 

【解説】

2017年・第74回ベネチア国際映画祭で脚本賞、同年のトロント国際映画祭でも最高賞にあたる観客賞を受賞するなど各国で高い評価を獲得したドラマ。

米ミズーリ州の片田舎の町で、何者かに娘を殺された主婦のミルドレッドが、犯人を逮捕できない警察に業を煮やし、解決しない事件への抗議のために町はずれに巨大な広告看板を設置する。

それを快く思わない警察や住民とミルドレッドの間には埋まらない溝が生まれ、いさかいが絶えなくなる。

そして事態は思わぬ方向へと転がっていく。

娘のために孤独に奮闘する母親ミルドレッドをフランシス・マクドーマンドが熱演し、ウッディ・ハレルソン、サム・ロックウェルら演技派が共演。

「セブン・サイコパス」「ヒットマンズ・レクイエム」のマーティン・マクドナー監督がメガホンをとった。

 

(以上、映画.comより、引用抜粋。)

 

 

 

 

ミズーリ州の架空の町としながらも、小さな田舎町の一見平穏そうに見えるその町の人々の暮らしが、娘をレイプされ焼き殺された母親ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)の復讐心の発端とも言える、3枚のビルボード(広告看板)による、警察署長ウィロビーを名指ししての警察の怠慢ぶりを訴えかける言葉から、彼女に対する同情心から、一転して皆から反感を買い、町民を巻き込み、様々な事件を巻き起こしていく。

 

 

歪んだ親子関係、壊れた夫婦関係に家族、人種差別、職権乱用、報復行為など現実のアメリカ社会の抱える様々な問題をも詰め込みながら、まとめあげる脚本は見事という他なかったでした。

 

 

一見すると犯人捜しを主体にしたミステリードラマタッチで引っ張って行くものの、最終的な着地点は人間ドラマにあるといった、あたかも、あの「新参者」などの東野圭吾作品を観ているかの様でもありました。

 

 

それにしても、今作の主人公ミルドレッドは、とても可愛くない女。

 

 

だから離婚されたのだろうし、あのDVの元亭主を相手にしたくらいに、一筋縄ではいかない女性像。

でも、決して性格自体がそうさせているのではなく、実は娘が殺害されるに至るまでの遣り取りが大きかったとも思われました。

 

 

また、冒頭で、広告会社に、ミルドレッドが扉を開けて入ってくるシーンはどことなく西部劇のガンマン風。

それもそのはず、ミルドレッドの登場シーンにはマカロニ・ウエスタンのテーマ曲があてがわれているのだから、意図的なBGMでした。

 

そんな登場人物の中でも、とりわけ、ヒロインのミルドレッドにとって「自らの正義」を振りかざしているつもりでいるのが、私には、どうにも釈然としない。

 

 

考えてみれば世界各地で横行するテロ行為も突き詰めてみれば「誰かの都合による正義」の実行を拡張したに過ぎないし、見方を変えれば、この様にして、現在、私達がTwitterやInstagramやFacebookといった、SNSなどを使って、何かの出来事に対して批判や抗議をしているのとも何ら変わらないのかも知れない。

 

そこにあるのは、正義感かも知れないし、悔しさや憎悪といった負の感情なのかもしれない。

 

私達はTweetなどをすることにより、さも世間に<問題提起>をし、一見、善行をしたかの様な気分に浸りますが、そこには賛同する者も居れば、反対をする者も居て、両者が議論をしている内は良いけれど、いつしかブロック、それで気が済まなければ誹謗中傷、果ては<炎上>にまで発展してしまいます。

 

従って、<文字>という物は、読み手によっては、勝手気儘な解釈もなされて、様々な感情を引き起こし、問題を益々とエスカレートさせていく変幻自在な生き物の様な物なのかも知れない。

 

とTweetなどでの失敗事例による自戒の念をも込めて書き記しましたが、そういった「誰かの都合による正義」同士が寄り集まったところで、所詮、物事が解決などはしないという道理については、私達はよく知っています。

 

 

今回、ミルドレッドが立てた広告看板という<問題提起>によって、最も人生を左右させられたのは、警察署長ウィロビー(ウディ・ハレルソン)だったでしょうね。

町でも人気が高い人徳者の警察署長は、自分自身に大きな問題を抱えていた事もあり、むしろ彼女に同情的でした。

神の下の赦しの精神で、命を賭けてまで、彼女の思いを遂げさせようとさえします。

 

 

それに対して、彼女の所業ではあるのですが、むしろお馬鹿で注意散漫から自業自得でそうなったのが、マザコンで人種差別主義者の巡査ディクソン(サム・ロックウェル)。そして、それを焚き付ける毒親。

しかし、この憎たらしい男は、火事のその後がからが良くなり出しましたね。

 

 

それもこれも、<ストローを挿したオレンジジュース>という、赦しの精神を垣間見たせいだったのでしょうね。

失敗してもセカンドチャンスをちゃんと与えてあげるあたりは、監督の理性と赦しの精神を感じましたね。

 

 

そつがない脚本であるとともに、田舎町の強い中年女性を演じさせたらこの人しかいないとばかりに、娘の復讐に燃えるミルドレッド役のフランシス・マクドーマンドはじめ、警察署長ウィロビー役のウディ・ハレルソン、巡査ディクソンと主人公が交互に代わり代わりに交錯する、三人の実力俳優によるアンサンブルを奏でるかの様な演技合戦を観るための映画の様でもありました。

 

ただ、巡査のディクソンも差別主義者でしたが、ミルドレッドも小人症の男性をないがしろにしていたのは頂けなかったですね。

小さい人、良い人柄だったのに。

 

 

ミルドレッドとディクソンを似たもの同士の性格付けに設定したのも、もしやそもそもがラストへの伏線だったのかも(笑)。

 

 

私的な評価と致しましては、

差別主義者の巡査ディクソンは終盤改心したので、未だしも、どうにも主人公ミルドレッド役のフランシス・マクドーマンドの個性が強烈で粗暴過ぎて、どうにも共感出来ない部分を引き摺ったまま、現在に至るのが正直な感想ですね。

むしろ共感してしまうのは、警察署長ウィロビー役のウディ・ハレルソンくらいでした。

 

そもそも誰が最も悪いと言えば殺人を犯した犯人なのですから、警察の捜査の行き詰まりを以て逆恨みして、あそこまでの報復行為を行うのは全くの筋違いにも程がありましたよね。

 

そんなこんなで、釈然としないまま観続けてしまった訳ですが、私自身も未だ未だ<赦しの精神>の修業が足りないのかも知れないですね。

 

 

とは言え、当のミルドレッドは家族の息子の声や、神父様の言葉さえも耳を貸さない状態でしたけれどね。

 

従いまして、作品の脚本の出来栄え、演者とも文句の付けどころはないのですが、どうしてもお話しの展開上とは言え、遣り過ぎ感ハンパなかったミルドレッド役のフランシス・マクドーマンドの役どころの個性を受け止める事が出来なかったので、その点を差し引かせて頂きまして、五つ星評価的には四つ星評価の★★★★(80点)止まりの評価とさせて頂きます。

 

 

そんな私の評価などが、どうであれ、ミルドレッド役のフランシス・マクドーマンドが主演女優賞のオスカー最有力候補であり、ウディ・ハレルソンとサム・ロックウェルとが共に助演男優賞のオスカー候補というのも頷けます。

何よりも、脚本賞はほぼ確実視されているみたいですが、主演女優賞、助演男優賞、そして更には、作品賞も受賞するのかどうか?

 

※個人的には、監督賞&作品賞については、大ファンのギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』の受賞を期待しています。

 

来月の第90回アカデミー賞授賞式での発表が楽しみですね。

 

●映画『スリー・ビルボード』日本版 新予告編

 

 

◎尚、今作のマーティン・マクドナー監督が敬愛する、日本が誇る北野武監督の作品の常連俳優さんだった、大杉漣さんが今日2月21日に、急性心不全の為に急逝されたとの事。驚きを隠せません。

ご冥福を心からお祈り申し上げます。

 

 

▲北野武監督作品『ソナチネ』(1993年)では片桐役で出演。

 

▲北野武監督作品『HANA-BI』では同僚刑事・堀部役を好演。

 

▲『アウトレイジ・最終章』では花菱会会長・野村役で生き埋め出演。

 

▲最も名が知れたのは、おそらく『シン・ゴジラ』(2016年)での大河内清次内閣総理大臣役でしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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今回も最後までブログ記事をお読み下さり誠に有り難うございました。