ミッドサマー | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

 

 ミッドサマー(2019)

 

『ヘレディタリー/継承』で、独特な世界観によるホラーを生み出した、アリ・アスター監督作品。

 

肉親を亡くした女子大学生、ダニーが、ボーイフレンドのクリスチャンとその友人らと、90年に1度行われるスウェーデンの田舎の祭りを見に行くことになるのだが・・・

 

ホルガと呼ばれる白夜の田舎で行われる奇祭に巻き込まれることにより、鬱積していた不安が狂気に昇華するダニーの物語。

物語の端々に記された監督の細かいメッセージを観客は一つ一つ拾っていくことで、ダニーの不安が共有できるようになっている。

 

日常世界では、勤めて精神の平衡をたもっていたダニーが、一般的(観客の視線)には奇妙とも思える世界に身を投じることで、自分がいるべきである場所を見つける。

ラストに見せる不安におびえ泣き続けたダニーの微笑。

 

他所からやってきたダニー以外の若者たちは、見慣れない奇習とも見える村人の生活に近づいていくにつれて正気の皮を少しずつはがされていくのに対し、ダニーだけは正しく狂気に進んでいく。

この狂気への道は、あるいは何かによって仕組まれた道で、その何かとは神なのかもしれない。いや、悪魔というものが存在するならばそれなのか。

 

緑広がる長閑な田舎で行われるこれらの奇祭を、アリ・アスター監督はのんびりといってもいいくらいのテンポで描いていく。

ゴア描写が挟まれてはいますが、

この、のんびり演出に退屈を誘われる観客も多いことだろう。

 

しかし、そののんびり演出中、常に監督は餌を蒔いている。

観客はその餌に喰いついてこそ、ラストの微笑みが理解できるのだ。

食べ残しがないようにその餌を逃さないようにしないといけない。

それが面倒な人には、極めて退屈な駄作に思えるだろう。

観客を選ぶ作品だなと思います。

 

で、僕はどう思ったかというと、

大山鳴動して鼠一匹・・・の感は否めなかったです。

 

あ、あと記しておきたいのは、

ヴィスコンティ監督の『ベニスに死す』で永遠の美の象徴として描かれた美少年タジオを演じた、ビョルン・アンドルセンが登場していたこと。

役柄はともかく、70歳前でも、相変わらずの美男ぶりでした。

 

 

『ミッドサマー』Midsommar(2019)米=

アリ・アスター監督 147分

2020年(令和2年)2月日本公開