チャイナ・シンドローム(1979)
原子力発電所の事故を告発しようとした、テレビの女性アンカーとカメラマン、それを隠蔽しようとする者たちの物語。
我が国では、福島原発の事故を皆が知っているので、恐怖に現実感が伴うだろう。
ある日、フリーのテレビカメラマン、リチャード(マイケル・ダグラス)と共に、ある原子力発電所の取材に訪れた女性アンカーの、キンバリー(ジェーン・フォンダ)。
施設の係員に連れられて、発電所のコントロール室で取材していると、責任者のゴデル(ジャック・レモン)ら職員が何やら慌てている様子。
係員から取材はやめるように言われたが、リチャードはその様子を隠し撮りしていた。
そして、不穏に感じた二人は、フィルムを原子力専門家に見せる。
すると、この様子は大事故の前兆で、このまま事故が起これば、流れ出した核融合物が地面を貫通して、地球の裏側の中国にまで達してしまう(チャイナ・シンドローム)事態になってしまうと警告する。
一方の電力会社側は、その時のことは小さな偶発的な事故であり、安全性には問題なく、フル稼働させても問題ないとの立場を取った。
その早すぎる公表に疑問を持ったゴデルは、その時の模様を詳しく調べると、施設の一部の結合部に手抜きがある跡が認められた。
ゴデルはキンバリーに、この事実をテレビで発表するように働きかけるのだが、巨大な権力が裏では動いていて・・・
この作品公開後、すぐにスリーマイル島での原発事故が起こり、本作はそれを予見していたのではないかと当時とても話題になりました。
さて、映画の感想なんですが、
不謹慎かもしれませんが、このテーマを扱って映画にするということは、どこかにスペクタルなパニックシーンがあるものと予想してしまうのが普通だと思います。
しかし、本作はそういった描写はなく(コントロールセンターに振動が起きて騒ぎになるシーンはあるが)、まるでスパイ映画での機密の奪い合いのような展開になっています。
ですから、核そのものの恐怖というよりも、国家・大企業による機密隠ぺいの恐怖を感じる作品です。
途中、原発反対派のデモのシーンがあるのですが、ぬるいなあ。
原発の稼働中止に聞く耳を持たない会社に対して実力行使に出たゴデルが一人コントロールセンターに立ち籠り、マスコミが殺到する中、事故を隠蔽するためにSWATまで投入される場面は一応の迫力があり盛り上がりますが、もう一押しほしかったのが個人的な感想です。
現地からの生レポートの画面が中途半端な形で途切れ、電子レンジのCMで終わるラストシーンには、なんともモヤモヤ感が残ります。
鋭い皮肉とはいえるのですが・・・
『チャイナ・シンドローム』The China Syndrome(1979)
ジェームス・ブリッジス監督 122分
1979(昭和54年)9月日本公開