ALWAS三丁目の夕日(2005)
前回の記事『四畳半青春硝子張り』で、ちょっとだけ本作に関して触れたので、改めてレビューして書きとどめておこうと思う。
その前回の記事で、本作のことを作り物のノスタルジィと評しました。
そりゃそうですよね、『四畳半~』はその時代の現代劇をロケで撮っているのだからあの風景は本物なのですよ。
対してこちらは、その時代の記憶として残っている思い出補正された風景を、最新のVFXを使って再現しているのだから、少し引いた気持ちで鑑賞すると冷めてしまいまうのです。
その昭和を回顧するシーンが、例えば力道山が登場するテレビのプロレス中継に熱狂する街の人々だったり、扇風機に向かって声を出して声を震わせたり、来たばかりの冷蔵庫に頭を突っ込んでみたりと、まったくステレオタイプなんですよね。
確かに懐かしい風景を思い出させるシーンであるとは思いますけど。
でも、それで郷愁を誘われる人を否定するわけではありません。
その特撮は本当によくできてます。
特に、次第に完成していく東京タワーの違和感の無さには感服しましたし、路面電車が走る東京の街並みも良く再現したものだと思います。
そして、ストーリーもありきたりなんだけど悪くない。
集団就職で青森から出てきたロクちゃん(堀北真希)。
そのロクちゃんを迎え入れる町の自動車工場鈴木オート。
そこの主人の鈴木則文(堤真一)とトモエ(薬師丸ひろ子)夫妻。
それに一人っ子の一平君。
向かいにある駄菓子屋を営んでいる冒険小説家の茶川(吉岡秀隆)と、彼が好意を寄せている居酒屋の女主人ヒロミ(小雪)。そして彼女から押し付けられるような形で預けられ一つ屋根の下で暮らすことになった男の子、淳之介。
この二つの家族を中心とした人情ドラマが繰り広げられます。
細かいエピソードの積み重ねなんですけど、そのエピソードのそれぞれが一つの物語になるんじゃないかというほど充実していて、泣ける場面も多い。
全てのエピソードを書いてしまうと完全にネタバレになってしまうので控えますが、一つだけ書かせてもらうと、金がない茶川が頑張ってヒロミにクリスマスプレゼントの指輪を渡すシーンが良かったですね。
ただのプレゼントじゃないところがいい。
あと、もうひとつだけ。
近所の子供たちから悪魔先生というあだ名をつけられている医者(三浦友和)のエピソードも良かったなあ。
作為的なノスタルジィを感じさせないところがいいですね。
一番のお気に入りシーンかもしれない。
金はなかったけど心は豊かだったということをテーマに作られていて、そのテーマは直球で観客の胸に刺さると思います。
この年の映画賞を総なめにしたのもわかります。
夕陽を眺める家族を映しながらいい感じで余韻を残すのですが・・・
気に入らないのがラストクレジットの音楽。
愛は永遠だか終わらないとか大声で歌いやがって!
その愛の押し売りの曲でいい余韻が一気に冷めちゃうんですよ。
60年代の雰囲気で終わるなら、
私が監督ならね、
夕陽のラストカットの後に『完』のクレジットだけを入れて、無音で黒バックにスタッフ、キャストのエンドロールを流して終わりますね。
感動を煽るようなわざとらしい音楽はいらない。
その方が、絶対に余韻が残ったはず。
と、辛口レビューになってしまいましたが、
悪くないし嫌いじゃないんですよ本作。
だけど所々にあざといところが見えてしまうのでね・・・そこがちょっと・・・
そして、続編は作るべきではなかった!
『ALWAYS三丁目の夕日』(2005)
山崎貴監督・脚本 133分
2005年11月公開