さよなら渓谷(2013) | あの時の映画日記~黄昏映画館

あの時の映画日記~黄昏映画館

あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

 

 さよなら渓谷(2013)

 

昔、「読んでから観るか、観てから読むか」という惹句が角川映画についていましたが、本作は先に映画を観るべきでしたね。

原作は著作が次々と映画化されている吉田修一。

 

あろ渓谷の村で、最低限の生活用具しか持たずつつましく暮らしている尾崎夫妻(真木よう子・大西信満)。

 

その夫妻が住む隣の家で母親が幼い我が子を殺めるという事件が起こる。

 

母親は逮捕されるが、

その後、俊介(尾崎夫)が犯人と性的関係を持っていたという通報が妻・かなこからある。

 

事件に張り付いていた渡辺(大南南朋)は、その急展開に興味を持ちかなこに接近。

取材する中でかな子の身に起こった15年前の壮絶な体験があらわになっていくのだが・・・

 

モスクワ国際映画祭では高く評価されていたようです。意外性のあるストーリー展開が受けたのでしょう。

確かに物語は面白いです。

それは原作の力。

 

先に原作を読んでしまっていても面白い映画はたくさんあります。

吉田修一原作の作品でも、『悪人』(2010)や『横道世之介』(2013)は面白かった。

原作のパワーを映画に転換できていた。

 

 

それは演出力だろう。

作品の統一したムードを維持しながら観客をアッと言わせるテクニック。

力強さともいうのかな。

 

本作は残念ながらそれが弱い。

真木よう子と大西信満の演技に頼り過ぎた。

二人とも好演ではあるが、たっぷりと間を取った芝居が次第にもたれてくる。

二人で山間の線路沿いの道を歩くシーンなどを遠景で撮ってるシーンなどとてもいいので残念。

映画的にするなら、殺された子供のエピソードにも、もっとフォーカスをあてるべき。

15年前の事件を際立たせたいための作劇なのでしょうが、そうしたほうが物語がずっと映画らしく立体的になったはず。

 

それから、大森南朋は相変わらずですね。

その大根ぶりが主演二人の好演によってさらに目立ってしまった。

松本人志監督のナンセンス『R-100』(2013)では、その大根ぶりが最大限に活かされたわけだが、シリアス物では気が抜けたコーラだね。

 

ちょっと今回のレビューは意地悪すぎたかな。

この作品及び大森南朋さんファンの方ごめんなさい。

 

あ、ラストはいいですよ。

呼吸が心地いい。

 

 

『さよなら渓谷』(2013)

大森立嗣監督 116分

2013年6月公開