雨よりも優しく触れるその手よ~ハンナとその姉妹(1986)より | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

 

 雨よりも優しく触れるその手よ

 

ハンナとその姉妹(1986)の劇中、

妻であるハンナの妹・リー(バーバラ・ハーシー)に恋してしまったエリオット(マイケル・ケイン)が偶然を装い本屋に彼女を誘います。

 

そこでエリオットはリーにE・Eカミングスの詩集をプレゼントして112ページを読むように言います。

そこに書かれていた詩。

 

あなたの何気ない視線で

私が開かれていく

花びらをめくるように

まるで春が秘めやかに

薔薇を開くように

 

あなたの何が私を開かせるのか

 

ただ私に分かることは

深く心に届くそのまなざしと

雨よりも優しく触れるその手よ

"Nobody,not even the rain,has such small hands"

自宅に帰ってその詩を読んだリーは、

それまでなんとなくエリオットが自分に気があるのかなと感じていたのですが、

この一節を読んだ瞬間にそれが確信に変わり、

彼女も姉の夫に恋心を抱いてしまう・・・

 

名シーンの連続である私の生涯BEST1作品『ハンナとその姉妹』の中でもとてもロマンティックなシーンの一つです。

 

火がつきそうな男女の感情の導火線にカミングスの詩を用いるなんて、ここでもウディ・アレンのセンスが光りますね。

この作品のテーマと同じように、カミングスも生と性と愛と死の自然な関係を表現した作家でした。

 

プレイボーイ役が似合うマイケル・ケインに、不倫の恋であたふたする役を与えるのもキャスティングの妙で面白い。

 

バーバラ・ハーシーも、この作品ではとても魅力的に見える。

背徳的な恋に戸惑いながら堕ちていく官能的な表情から、すべてに解放される朗らかな表情まで。

 

ウディ・アレンは『インテリア』(1978)などでもわかるように等身大の女性を描くの実にうまいのですが、この作品ではその手腕に更に”情”が加わって、まるで口当たりのいいワインを飲んでいるようにやさしく酔わせてくれます。

 

これからも、

不定期ではありますが、

解体新書よろしく『ハンナとその姉妹』を分解しながらご紹介していきたいと思います!

 

Nobody,not even the rain,has such small hands scene

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