カラミティ・ジェーン(1953)
アメリカ西部開拓時代に実在した男装の斥候・カラミティ・ジェーンをドリス・デイが演じたミュージカルコメディ。
1950年に大ヒットした『アニーよ銃をとれ』を意識しているんじゃないかなと思いました。
実在のカラミティ・ジェーンには虚言癖があったそうで、それを知ったうえで鑑賞したらより楽しめる作りとなっています。
町の男たちが皆憧れる女性歌手の招聘を劇場のオーナーが間違えて手配してしまい、やって来たのは男性歌手。
焦ったオーナーはその男に女装させて無理やり舞台に立たせるが、そんな小手先のごまかしが通じる訳もなく彼女を楽しみにしていた客は大騒ぎ。
困り果てたオーナーを見かねたカラミティは、シカゴへ出向き本物の歌姫を連れてくるが、この女性は実は付き人。
最初の舞台では緊張して声が出なかった彼女だが、カラミティの助けもありこの劇場の看板歌姫となっていく。
そして彼女はカラミティの憧れている青年将校に口説かれるようになり・・・
ということで、ガサツで男っぽいカラミティの心の奥底にある恋心が次第に明らかになっていくところが見どころです。
全身泥だらけで銃を片手に馬で駆け巡るカラミティが、あるパーティーを境にドレスの似合う素敵なレディだと町の男たちが気付くシーンが爽快。
大物歌手の付き人が、限られたチャンスを使って成り上がっていくところには『イヴの総て』(1950)が感じられたりします。
ただ演出がイマイチなのか、
たとえば先程のカラミティがドレスに着替える場面はもっとパッと目を見張るような効果が欲しかったかな。
ミュージカルとしての編集のつなぎがぎこちなくなったのも少し残念。
ただ、ドリス・デイは熱演です。
がんばってます。
本作で『シークレット・ラブ』という曲でアカデミー歌曲賞を受賞しています。
50年代の西部劇らしい楽しさもあり、ちょっとだけ切なくなる本作。
『アニーよ銃をとれ』ほどの奔放な魅力はありませんが、このジャンルの作品としては及第点は贈呈できると思います。