東京ゴッドファーザーズ(2003) | あの時の映画日記~黄昏映画館

あの時の映画日記~黄昏映画館

あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

 

 東京ゴッドファーザーズ(2003)

 

結構観てるんですけど、

本ブログでアニーメーションを取り上げることはあまりないです。

『となりのトトロ』(1988)以来2本目のご紹介になると思います。

 

 

チャップリンの『キッド』(1921)を連想させる愛と優しさに満ちたアニメーションならではのストーリー。

 

クリスマスの夜に捨て子を拾った3人のホームレスの悪戦苦闘。

3人の人生にはそれぞれ厳しさがあったことが物語が展開するにつれてわかってくる。

 

感動の押しつけにならず、ギャグを交えながら乾いたタッチで進んでいくから思わぬところで涙が出る。

 

タクシー運転手の扱いなど伏線の張り方も見事で、一番の見せ場に持って行くところの脚本がうまい。

 

雪降る聖夜に起こる奇跡なんて陳腐なテーマなので、普通の人間が造ると平凡極まりない作品になるのが関の山なのに、天才・今敏監督は切っても切れない親子の絆や命の尊さとかを見事な脚本と優しい語り口で聞かせてくれる。

ホームレスに対する残酷な行為を挟むことによって社会に対する問題提示まで投げかける。

 

鮮やかなのがラストで、

ものすごく大きな幸せが待っているかもしれないというヒントだけ残しておいて本当のラストを観客に委ねるのがニクイですね。

 

オープニングのスタッフ紹介から才気を感じることができて、ラストがこれですからニコニコしないわけにはいきません。

 

東京の雪景色もアニメーションならではの美しさで、夢物語のディテール形成にものすごく貢献しています。

 

東京の降雪は主に南岸低気圧によるものなので、数日間雪が降り続くことはまずないのですが、この作品にはそんな常識を超えたファンタジィとして許すことができます。

 

そんな邪な見方をしたらいけませんね。

この作品の雪は大事な舞台なのですから。

 

『セレンディピティ』(幸せな偶然)というアメリカ映画がありましたが、本作にこそその題名を贈りたい気分です。

 

独特の画風を含めて、

大好きな作品です。

 

 

『東京ゴッドファーザーズ』(2003)

今敏 監督作品 92分

2003年11月公開