三人の名付親(1948) | あの時の映画日記~黄昏映画館

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 三人の名付親(1948)

 

前回、『東京ゴッドファーザーズ』(2003)をご紹介させていただきましたので、今回はその作品の元ネタというかヒントを得た作品だと言われる『三人の名付親』(1948)のご案内です。

 

原作はピーター・B・カインの小説ということで、本作は幾度となく映画化されているようです。

 

それほど定番の物語の映画化なのですが、色彩版は本作が初めてとのこと。

 

砂嵐吹きすさぶ砂漠に追い込また三人のならず者が死にゆく母親から生まれたばかりの赤ん坊を託され、自分たちの命をなげうってこの赤ん坊を街に届けるという物語で、ジョン・ウェイン、ペドロ・アルメダリス、ハリー・ケリー・ジュニアの三人がならず者を演じています。

 

銀行強盗を目論んでアリゾナの田舎町にやってきた三人が穏やかそうな家庭に立ち寄るが、この家庭の主が保安官だったという鮮やかなオープニングで始まり、物語はひたすらこの三人を追い詰める追跡劇になる。

 

この逃亡中の砂漠の描写がジョン・フォード監督らしく、数メートル前さえも見えなくなる砂嵐が物語のサスペンスを盛り上げます。

 

この道中で瀕死の母親から赤ん坊を託されることになるのですが、このシーンでの三人のならず者たちの微笑ましいことと言ったら。

ミルクを飲む赤ん坊をのぞき込むジョン・ウェインの破顔した表情など、可愛いと表現してもいいくらいです。

他の作品では見ることのない表情。

赤ん坊の名前をどうするかで三人が揉めるのも楽しいですね。

はじめての赤ん坊に育児書を手に取りながら悪戦苦闘するならず者たち。

いくら窘められても熱くなるとスペイン語をまくしたてるピート(ペドロ・アルメダリス)のコメディリリーフぶりも楽しい。

 

不器用な三人は泣いている赤ん坊に子守唄を聴かせるなど人情ロードムービーともいえる場面が続くのですが、追手の保安官に水袋を撃たれてしまったために水不足となり、更に若いキッドが肩を撃たれることとなったあたりから次第に悲劇的なムードに変わってきます。

 

聖書に導かれるようにエルサレムを目指す三人がとても尊く見えてくるのも見事な演出。

 

特に、キッド(ハリー・ケリー・ジュニア)が臨終の際にボブ(ジョン・ウェイン)が帽子でずっと陽光を遮るシーンは名シーンです。

 

ラストは実に寓話的な雰囲気で終わります。

リアリズムの悲劇で終わらないところがいいですね。

罪を受け入れたボブと保安官に、赤ん坊を通じての友情が生まれるところなど実にいい!

テーマは“赦し”なのかなと思ってしまいました。

 

罪人として送り出される主人公なのにハッピーエンドを感じ取れる本作。

これも大好きな一篇です!

劇中の赤ん坊がめちゃくちゃ可愛い!

 

 

『三人の名付親』3 Godfathers(1948)

ジョン・フォード監督 107分

1953年5月日本公開