徳川女刑罰絵巻 牛裂きの計(1976)【R-18】 | あの時の映画日記~黄昏映画館

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 徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑(1976)

 

 

前回、『やくざ刑罰史 私刑!』(1969)を取り上げましたので、こちらもご紹介しないわけにはいけないと思い取り上げさせていただきます。

センシティブな内容を含むレビューとなりますので、そういった内容の苦手な方はここで読むのをお止めください。

 

「今はドラマ性の強い作品は世界的に当たらない。ヒット作の傾向は『日本沈没』『エクソシスト』『燃えよドラゴン』『タワーリング・インフェルノ』『ジョーズ』『グレートハンティング』『エマニエル夫人』『地上最強のカラテ』『スナッフ』『グリズリー』など、いずれも"見せもの"映画ばかりだ。今年の秋にしても『オーメン』であり『キングコング』であり『テンタクルス』などが話題になっていて、スター映画で当たりそうなものは一本も見当たらない。文化性、芸術性も大事だが、例えば世界から人を集める博覧会オリンピックにしてもみんな"見せもの"だ。トラック野郎のヒットもトラックを飾り立て、"暴走族もの"も750の見せものだ。これからは洋画のヒット作の趨勢と呼応する"話題性"を軸にした"見世物映画"を香具師の精神で作品を売っていく」(Wikipediaより転載)との東映社長岡田茂の号令の下制作された大残酷ショー。

 

前半は徳川幕府によるキリスト教排斥の時代を背景にした残酷絵巻。

隠れキリシタンの娘が無理やり奉行の側女にさせられて慰めものになり、目の前で両親や村の長老たちが拷問で殺されてしまう。

 

奉行所与力の佐々木伊織はこの娘と恋仲となり奉行所を抜け出すが、嫉妬に狂った奉行に捕まり、不義密通の刑で伊織は市中引き回し、娘はタイトルにある『牛裂きの刑』に処されてしまうというお話で、団鬼六も顔負けのSM的シーンが展開されます。

 

いやあ、残酷ですね。

『牛裂きの刑』は生々しく、気持ちの悪いSEと特殊技術がそれを際立させます。

その他にも火責め水責めそして蛇責めなど、これでもかというほどあらゆる手段で奉行は拷問を加えます。

 

精神的な責めもねちっこく、

娘を好いている伊織の目の前で奉行は娘をなぶる。

 

後半は川谷拓三演じる捨三という町人が、『幕末太陽傳』(1957)の居残り佐平治よろしく金もないのに遊郭で大豪遊。

 

無銭飲食となった捨三は、遊郭で働き代金を払おうとするが、そこの遊女の一人と恋仲になり足抜けをさせようと遊郭を脱出するのだが捕まり、鋸の刑に処せられ酔っぱらいによって首を斬られてしまうというお話。

第二話ともいえる後半のお話には因果応報も感じられてちょっと面白いです。

狂った表情で鋸を使って捨三の首を斬る男。

この酔っぱらいもひどい目に遭っていたのです。

 

残酷シーンも目白押しなのですが、

川谷拓三の不思議な魅力でハードな印象が少し緩和されていますね。

もちろん、川谷自身もひどい拷問を受けています。

 

彼のことですから、おそらく水車に括られて水責めに遭うシーンなどスタントなしで本人が演じているのだろう。

 

首を斬られて生首になっても笑っているショットは印象的です。

 

オープニングに、

戦争による無差別殺戮のショットが流れて、残酷な行為は反省もなく人類が繰り返す蛮行であるというようなことがナレーションされますが、それは見世物である本作を少しでも理屈付けしようとする逃げ道のような気がしますね。

 

刺激的過ぎて眉をひそめてしまう方も多いかもしれませんが、見世物小屋をスクリーンに再現したような本作、私は嫌いではありません。

目を塞いでしまうシーンがあったのは間違いないですが、

残酷なサーカスを観るような感覚。

 

ちょっと書きましたが、

後半はグロテスク版『幕末太陽傳』ですからね。

ラストは『幕末~』でフランキー堺演じる佐平治のセリフ「首が飛んでも動いてみせまさあ」というシーンのパロディなのかとも思ってしまいました。

 

成人指定の本作を東映が社長肝いりで制作して全国公開したというのが凄いです。

恐るべし70年代!ですね。

併映が千葉真一主演のアクション映画なのも凄い!

 

倫理的に問題になるシーンも満載です。

顔をしかめて苦言を言う方も多いと思います。

それも否定しませんが、

道徳心を映画という仮想空間でガス抜きのように一時破壊してしまうのも悪じゃないでしょう。

 

この仮想空間はあくまでもファンタジィであり、現実世界と区別できない人が増えている気がするのが現在の風潮で心配ではありますが、良識ある多くの方たちは現実とごちゃ混ぜにすることはないと思いますので封印してしまうのは違うと思います。

 

精神的に未成熟な青少年にはある程度規制をかけるのは必要だと思います。

いや、規制というより教育かな。

 

現在のインターネット社会。

隠しても好奇心旺盛の若者たちはそういった刺激的な映像に気軽に触れ合うことができる。

これはどうやっても隠すことができないのです。

 

そういった映像のほとんどは台本ありきのファンタジーなんだよときちんと社会全体で教えていくことが大切だと思います。

 

作品レビューからズレてしまいましたね。

 

こちらの動画も年齢制限付き

 

 

『徳川女刑罰絵巻 牛裂きの刑』』(1976)

牧口雄二監督 80分

1976年9月公開