ビッグ・マグナム黒岩先生(1985) | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

 

 ビッグ・マグナム黒岩先生(1985)

 

 

推測が多分に含まれます、ご容赦ください。

 

この作品は横山やすしという吉本興業に多大な貢献をした人物に対するご褒美企画だったのだろう。

 

荒廃した学校に突然現れた伝説の教師。

荒れた生徒たちを成敗すべくやすし先生が大活躍。

 

 

後輩のお笑い芸人が総出演。

おまけに自分の息子まで学芸会レベルで商業映画に出演させる。

 

確かに横山やすしという人間は漫才ではすこぶる眩しい輝きを放っていた人物だった。

70年代終盤から80年代初頭にかけての漫才ブーム・お笑いブームを牽引した人間。

 

ただ、すべてを知るわけではないが私生活ではとても暴君的な人間だった。

私が家電量販店の社員だった時に彼の家にVTRの修理に呼ばれたことがあったのですが、泥酔した彼は私に暴力的な言葉を吐くばかり。

そのビデオデッキも当社で購入したものではなく、他社で購入したもの。

そして、故障の原因(故障ではないのですが)は、自宅のデッキがVHS仕様なのにβテープが入らないのでどうにかしろというもの。

困り果てた私はどうにかなだめようと思ったのですが、散々暴言を吐いた挙句やすし氏は眠ってしまいました。

わたしはVHSのデモテープをテーブルの上に置いて帰社したのですが、それ以来彼にいい印象は持っていません。

 

映画の話に戻ります。

恐らくこの作品の現場はやすし天皇のご機嫌を伺いながら彼の逆鱗に触れぬよう恐れながら作られたように見受けられます。

 

まず、主演であるべきやすし氏の演技が気の抜けたコーラのように味気ない。

というか、セリフの棒読みが過ぎる。

たどたどしセリフ回しに観客は呆れてしまうことだろう。

でもご本人はご満悦。

 

そして輪をかけて酷いのがご子息の一八氏。

演技ができないとかのレベルではないその醜態を観客は金を払って観ることになる。

ストーリーの重要なカギになる役どころなのに後半出番なし。

 

付き合わされた後輩芸人たちもいい迷惑だっただろう。

恐る恐る出演している空気感が伝わる。

 

その中で唯一爪痕を残したのが西川のりお。

ハッタリ破天荒教師を演じて主役を喰う。

ラストまでこのノリで突き抜けたらアナーキーな学園アクションコメディとして成立したかもしれない。

 

おまけにシーンとシーンのつなぎが下手くそで、

ぎこちないやすし氏の演技を紙芝居形式で見せられてしまうことになる。

 

監督の山口和彦氏も困り果てていたのだろう。

やすし氏の関わらないお色気シーンやクライマックスのアクションシーンに心血を注ぐ。

 

お色気シーンは熱っぽく、

アクションシーンは戦争映画を思わせる迫力がある。

バイクアクションシーンでのスタントは見ごたえがある。

 

それでも大ラスではひ弱なやすし氏がヒーロー然としてもっともらしいセリフを吐くのだから気が抜ける。

ラスボスの存在感のなさも困ったものだ。

演出ならば滑ってる。

 

唯一クスリとしたのは、

教室の壁に書かれている教訓。

『先生は生徒に手を出せないが生徒は先生に手を出せる』

これは笑えた。

 

そしてラストクレジットでは、

やすし氏ご自慢の自家用飛行機に乗ってご機嫌な姿を映してエンドっていうのだからね。

多分、ご自身のリクエストであったに違いない。

 

やすし天皇のゴキゲン映画。

さすがにこれは認めることができない。

 

(漫才師、芸人としての彼を否定しているわけではありません)

 

あと、出てくる不良生徒の描写が監督の所属していた大映テレビのままだったのが懐かしく笑えます。

『ビッグ・マグナム黒岩先生』(1985)

山口和彦監督 102分