にがい米(1947) | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

ジュゼッペ・デ・サンティス監督による1947年のイタリア映画。

とても熱いものを感じることのできる作品です。

 

5月。

イタリアの田園地帯に大勢の女性が出稼ぎにやってくる。

期間は40日間。

その女性たちに紛れて宝石泥棒の男女もやってきた。

 

男はウォルター、

女はフランチェスカ。

 

フランチェスカは出稼ぎの女性たちと一緒に働こうとするが、

正規雇用ではないために追い返されそうになる。

 

フランチェスカを中心とした非正規雇用陣と正規雇用陣で対立が起こるが、

マルコという軍人がうまく話し合いによる解決に導く。

 

そのマルコは、

正規雇用されている情熱的で奔放なシルヴァーナの恋人だったが、

そんな彼にウォルターに対する感情が冷めかけていたフランチェスカは惹かれていく。

 

そんな中、

女性たちが汗水垂らして育てた米をウォルターはごっそりと奪う計画を立てていた。

そして・・・

 

年齢も様々な女性たちがズボンをまくり上げて田んぼの中で作業をします。

その土着的な描写に冒頭から引き込まれていく。

 

そして悪女的魅力を持ったシルヴァーナの登場となるのですが、

この肉感的な魅力と言ったらありません。

情熱的なダンス、キスをせがむ表情、裏切られたのがわかってからの呆然とした表情、

素晴らしいです。

演じるは、のちにパゾリーニ作品やヴィスコンティ作品に出演することになるシルヴァーナ・マンガーノ。

腋毛を見せてのダンスシーンまでがセクシーで情熱的です。

ジュゼッペ・デ・サンティス監督のカメラワークも冴えに冴えており、

特にカメラの上下移動による立体感のある描写は終盤の緊迫したクライマックスシーンに活きてきます。

 

このクライマックスシーンが強烈で、

キューブリック監督の『フルメタル・ジャケット』(1987)で主人公のジョーカーが女ゲリラを射殺するシーンに匹敵するくらいの迫力があります。

舞台を精肉所にしたのもいいアイディアだったと思います。

 

そしてラストはお米による焼香。

こんなに壮絶なドラマがあってもほとんどの労働者は明日の自分の生活が大事なのだというメッセージが込められているよう。

この感覚は、黒澤明監督の『七人の侍』(1954)のラストシーンに似たものを感じました。

 

おススメですね。

いいですよ!

 

あ、「ニューシネマパラダイス」(1988)の検閲されたキスシーンの中にこの『にがい米』のキスシーンも入っています。

 

 

『にがい米』(1947)※日本公開は1952

ジュゼッペ・デ・サンティス監督 107分