フランシス・フォード・コッポラ監督作品。
「ゴッドファーザーシリーズ」や「地獄の黙示録」ほど現在の知名は高くないものの、
本人は原作付きだったそれらと違うオリジナルの作品だったためとても気に入っており、
興行的には今ひとつだったのですが批評家からの評価は高く、
1974年度のカンヌ映画祭グランプリを受賞し、
また同年度のアカデミー作品賞にもノミネートされた作品です。
(尚、同年の作品賞受賞作は同監督作品のゴッドファーザーPARTⅡ)
盗聴のプロ、ハリー・コール(ジーン・ハックマン)。
彼の盗聴の技術は一級品で、依頼主は大会社や政界にまで及んでいた。
彼は常に孤独で、
自分の身辺には過剰とも思えるほど気を付けており、
唯一心が休まるのはジャズのレコードを聴きながらサックスを吹くことだった。
そんなハリーが今回受けた仕事は、
どこにでもいそうなカップルの会話を盗聴すること。
ハリーは相棒スタン(ジョン・カザール)らとともにその仕事をやり遂げ、
盗聴したテープを依頼主の会社の取締役に渡そうとする。
その会社まで出向きテープを渡そうとするが、
取締役は不在。
秘書(ハリソン・フォード)が代わりに受け取ろうとするが、
その行動に何か不審なものを感じたハリーはテープを渡すのを拒否。
秘書からは「深入りするな」と忠告されるが、
ハリーは過去にもテープを渡したことから人が殺されるのを経験しており、
カップルの身を案じ何か恐ろしいことが起きそうな気がして不安が増大していく・・・
スリラーとしてよくできていると思います。
途中、ハリーの盗聴のライバルたちと盗聴の最新道具品評会みたいなところに出かけるところが面白く、
何気ないこういうシーンに主人公の罠が張られているのが良くできています。
何か恐ろしいことを録音してしまったと思う主人公を言いようのない不安が襲ってくるシーン。
少女を追うが彼女には声が届かず、
霧の中に少女は消えてしまうという象徴的な描き方をされる。
ラストは自分も盗聴されていることを知って、
家の中の盗聴器を探しまくり、
壁も天井も床も生活用品や調度品まで粉々に破壊してしまった部屋で、
独り孤独にサックスを吹いている印象的な終わり方をする。
あらゆるものを壊してしまった主人公はサックスだけは壊すことができなかった。
これはどういった意味を持つのだろうか。
主演ジーン・ハックマンで、
共演にジョン・カザール、ハリソン・フォード、ロバート・デュバル、シンディ・ウィリアムス、テリーガーなど、
地味ながらクセのあるキャスティング。
赤い鳥の歌が何か重要な意味があるのかなと思っていたらそうでもなかったり、
主人公の別れた妻(だと思う)が意外と役柄的に軽かったりと、
ちょっと首を傾げてしまうというか伏線だとしたら回収しきれていないのかなと思われるシーンが少しだけあって、
残念ポイントだったかな。
あと、大好きな俳優ジョン・カザールも、もっと見せ場が欲しかった。
思わせぶりなシーンはあるんですけどね。
でも、着想は面白く、
類似した作品もないオリジナリティは大いに評価されていいのかなと思います。
おススメです。