日本における“戦後レジーム”が構築され確立した時期ですかね。
井手雅人作の小説『池の塩』を「七人の侍」の黒澤明と「黒い潮」の菊島隆三が共同脚色した三村明の監督第一回作品です。
戦時中の狂った上層部を痛烈に批判する本作。
「上官の命令は絶対」という軍の体制が、
暴走すると歯止めが聞かない組織の危うさを描いているという点では、
現在のウクライナ情勢にも共通するテーマではないのか。
後戻りすることができない。
都合が悪くなると、
自軍の中隊でさえ砲撃して消してしまう軍部は恐ろしい。
計画した作戦は完了しなければならない。
どんな理由があっても。
いや、
理由付けなどなんとでもなる。
他の方の本作のレビューを読んで共感したのだが、
本作の主人公が、
捕虜となりシベリア抑留のために行軍したあとに、
黒澤明監督の『夢』(1990)の第4話、
『トンネル』に続いていくような気が私もした。
主人公辰巳柳太郎も好演だが、
河村憲一郎が演じる情の厚い岸中尉が強い印象を残す。
消えた中隊 1955年
三村明監督 93分