愛しのハーフムーン(1987) | あの時の映画日記~黄昏映画館

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あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます

本作を演出した滝田洋二郎監督とは相性がいいんですよね。

『コミック雑誌なんかいらない』(1986)では、

そのドキュメンタリータッチの中にフィクションを刷り込ませる演出に拍手したし、

『病院へ行こう2~病は気から』でのヒロインキョンキョンのセリフ、

『人間泣きながら生まれてきて泣きながら死んでいく。でも生きているうちに思いっきり笑っていれば、死ぬ瞬間に思い出し笑いくらいできるかもしれない』というのは、個人的に邦画の名セリフとして今でも鮮明に覚えています。

 

 

 

 

そこで本作です。

当時はよく覚えていなかったというか、印象が薄かったのですが、

滝田洋二郎監督だったんですね。

 

結婚間近になったカップルの伊藤麻衣子(現いとうまい子)と石黒賢。

劇中ずっと痴話喧嘩。

石黒の親友で実は大金持ちの息子嶋大輔と、

嶋になんとなくくっついてしまう性に奔放な堀江しのぶが絡む。

 

なんでもないようなこの物語を、

お色気シーンを交えながら一気にみせてしまう滝田監督の演出力に脱帽。

会った日は必ずヤリたくなるあの頃の若者の生態を軽いタッチで切り取る。

 

結婚って何?とか主人公の伊藤まい子は終始悩んでいるが、

そんなことはどうでもいいのよと答えを出してくる堀江しのぶがすがすがしい。

 

狂言回し的な役柄の主役の伊藤麻衣子を、

助演である堀江しのぶが完全に喰っちまった。

個性派俳優として存在感を発揮するだろうと思われていた矢先、

23歳での逝去。

若すぎましたね。

 

スナックの場面で、

「ケメコの歌」や「帰ってきたヨッパライ」が流れているのは、

滝田監督の趣味なんだろうか。

壁には『カサブランカ』のポスターが貼ってあるし。

そうだったらうれしいな。

 

 

 

ともすれば暗いシーンが多いシリアスなドラマになりそうなところ、

テーマを損なうことなく軽く明るいタッチで処理してしまう腕前を、

後年の『おくりびと』(2008)で世界は認めることになっていきます・・・

 

愛しのハーフムーン (1987)

滝田洋二郎監督 85分