風の歌を聴け | あの時の映画日記~黄昏映画館

あの時の映画日記~黄昏映画館

あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます



風の歌を聴け

1981年(日) 大森一樹監督作品


もうすぐ1月17日がやってきます。

関西に住んでいる人なら忘れることができない、

「阪神淡路大震災」の起こった日です。


6,000名以上がなくなった未曾有の災害でした。

飴のように曲がってしまった阪神高速。

孤立化してしまったポートアイランド。

すべてを焼き尽くしてしまった大火災。

地獄絵図でした。


この作品はそんな震災前の神戸が舞台で、

ロケも神戸、芦屋で行われている。

そんな意味では記録として貴重な作品である。


ちょうどこの頃、

車の免許をとってこの作品に出てくる神戸の街を走り回っていたのが、

遠い思い出で切なくなります。


物語は村上春樹の処女作が原作。

設定に弱冠違うところがあるものの、

大体原作どおりで、

あのフワフワした人間関係が良く描けているなと感じた。


主人公の「僕」は、

数十年ぶりに学生生活を過ごしていた神戸に、

夜行バスで戻ることにする。


物語は回想場面と現在とが交錯する複雑な手法が用いられ、

回想の中で過去の女性関係の暗い思い出や、

酒飲み友達の「鼠」とのこと、

そして小指のない美少女のことを回想する。


架空の作家デレク・ハートフィールドの文章に心酔する僕。

「鼠」の実家は金持ちらしいのだが多くは語らず、

8ミリ映画製作に熱中している。


演出法はウディ・アレンに影響を受けているのが明らかで、

「僕」と小指のない女の子とのベットでの字幕での会話場面は、

そのまま「アニー・ホール 」のそれである。


また「僕」と2番目の彼女がテレビで観ている映画は、

シドニー・ポラックの「ひとりぼっちの青春 」だと思われるところも興味深い。

「廃馬は撃つもんなんでしょう」のセリフがきこえてくる。

それがこの彼女の自殺を暗示している。


新宿騒乱 」や「神戸まつり事件 」などが、

アクセント的に挿入されたりしている。


ゆらゆらしてつかみどころのない登場人物らの中で、

唯一自我を持っているようなバーのマスターが、

実は中国人だつたというのも、何か意味があるのだろう。


当たりやの大学生として、古尾谷雅人が出演しているし、

室井滋はこの作品が映画デビュー作。


全体的に重苦しくけだるい雰囲気なのは、

時代です。

そしてこの雰囲気が嫌いでない僕です。


自分の存在を再確認できる、

ちょっと不思議な作品です。


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