『ブルージャスミン』 原題:Blue Jasmine
2013年度(米) ウディ・アレン監督作品
観てきました。
またまたアレン監督が新境地を築いたなという感想です。
「夢と犯罪」もBad Endでしたが、今作のほうがより深い絶望感。
ストーリーは、いろんなブロガーさんが書いているので割愛。
「欲望という名の電車」との類似点を指摘する方が多いですが、
僕も概ねそう感じます。
アレン監督はとてもクラシックを大事にする人で、
「道」や「アマルコルド」の影響が強い、
「ギター弾きの恋」や「ラジオ・デイズ」を作っちゃいますし、
名作「インテリア」はベルイマン、「ブロードウェイと銃弾」は「イヴの総て」、
さらに言ってしまえば「世界中がアイ・ラブ・ユー」は懐かしのミュージカルのオマージュであったりするので、多分に影響を受けていると感じられます。
アレン監督のオリジナリティは、
自分のユダヤコンプレックスをむき出しにしているところや、
「カメレオンマン」や「カイロの紫のバラ」、そして「アニー・ホール」に見られる
実験的な作品に強く見られたのだが、
この作品は、また違った意味で、
アレン監督にしか撮れない、オリジナリティーといってもいいんじゃないかと思います。
それにしても、アレン監督はどうしてあんなに女性の気持ちをきめ細かく描くことができるのだろう。
幼少の頃から女系家族の中で育ったのが遠因だとよく言われるが、
それだけじゃない気がします。
主人公のジャスミンにどうしても意識が行ってしまいますが、
アレン監督は常に主人公に対比させるキャラをたてるのがうまい。
今作では妹のジンジャーがそれにあたります。
ジャスミンの見栄や嘘、独り言、
ウオッカ片手に精神安定剤を飲みまくるシーンなどは、
下手すれば大芝居になってしまい浮いちゃうことがあるんですが、
ジンジャーがそれを中和させ化学変化を起こさせ、
ジャスミンにオスカーをとらせたのだと思います。
絶望のふちにおとされたジャスミンを、
アレン監督は温かな目でみているなんていう見当違いの評価も散見されるが、
とんでもない、この作品のアレン監督の目は手術中の外科医のようにつめたい。
ヒューマニズムと対極にあります。
ラストで我々観客はドンと背中を押され、
なにもできないまま映画は唐突に終わります。
いつもあたたかな気持ちにさせてくれるアレン監督ですが、
今回は冷や水を浴びさせられました。
その冷や水がちょっと気持ちよかったりするのですが・・・
にほんブログ
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