オール・ザット・ジャズ | あの時の映画日記~黄昏映画館

あの時の映画日記~黄昏映画館

あの日、あの時、あの場所で観た映画の感想を
思い入れたっぷりに綴っていきます


あの時の映画日記-オール・ザット・ジャズ
1980年度カンヌ国際映画祭で、黒澤 明の「影武者」とグランプリを分け合った

ボブ・フォッシー監督作品『オール・ザット・ジャズ』


このタイトルの意味は、「ジャズのすべて」というわけではなくアメリカの俗語で

「あれやこれや」という意味らしいです。


この映画は、100人以上のダンサーがさまざまな衣装に身を包み、鍛えられた肉体と肉声を武器に

ライトのほかは何もないステージでオーディションに挑む迫力のシーンから始まります。

その群集を注視する黒いシャツ、黒いスラックスに身を包んだ男がいる。


この物語の主人公「ジョー・ギデオン」(ロイ・シャイダー)です。


彼は、骨の髄までショービジネスにつかりこんだ男で、幼少のころにはダンサーたちの裸体に囲まれ、

ボードビル劇場でタップを踏んだ。そして今や数々のヒットステージを生み出すミュージカル監督としての地位も手に入れていた。


彼の一日はまず熱いシャワーを浴び、ビバルディのレコードを聞きながら多量の薬を飲み、目薬をさして鏡に向かい「It’s showtime folks」(ショータイムですよ、みなさん)と語りかける事から始まる。


そして、現在手がけているショーの主演女優は、別れた妻オードリーであった。二人の間には一人娘ミシェルがいて、この娘にバレエのレッスンをしてやるときがギデオンの心の休まる唯一の時間だった。離婚の原因はよくわからない。ただ、そのショーには、彼が今同棲している相手を始め、一夜をともにした女性たちがたくさん出演しているのだった。


あの時の映画日記

ギデオンは心休まる時がない過労の日々が続く。


そして、ついに心臓発作で倒れてしまう。


その手術の間、ギデオンは無意識のうちに自分の人生を回顧する。夢か、現実か、かつて出会ったさまざまな人が出てきて彼らの前で自らの過去を一大ミュージカルコメディに仕立てようとしていた。


幻想の中には数々の栄光や挫折が交錯する。そして、その折々に死を象徴する美しい天使(ジェシカ・ラング)が現われるのだ。


あの時の映画日記

やがて、ギデオンは意識を回復するが、死の天使は確実に自分を呼んでいた。

そして、自分の死すらもショーして演出しようとしていた・・・


あの時の映画日記
この映画は、確実にF・フェリーニの81/2を意識してます。

ボブ・フォッシー監督が「キャバレー」や「レニー・ブルース」で成功したあと、作家としての自分を客観的に振り返りたかったんでしょう。思い入れたっぷりに。

かつて、W.アレンが「スターダスト・メモリー」でそうしたように。


しかし、この映画の圧倒的なダンスの迫力、官能的な描写はものすごいと思います。

また、ショー・ビジネスの世界の厳しさもよくわかります。


理屈っぽく書いてしまいましたが、エンターテイメント作品としても一級品で楽しめる映画です。

ぜひ、御覧下さい!


がちゃん