jokegirl -17ページ目

愛をささげる人の

 夢の、夢の足音を 踏み鳴らしていつでも踊ろうよ

 無理だと思える奇跡すら 引きよせる 

 明るい笑顔で歌おうよ

 見れば遠い道のりでも

 知らず知らず近づいてくるんだからさ

 鮮やかに美しく 軽やかにしなやかに

 心弾ませて 生きれば大丈夫

 腐ることなかれ あきらめることなかれ

 楽しむ気持ちに 女神はきっとほほえむから

 ときにばかになり

 ときにおちゃらけて

 だけども人の幸せ願う君が

 やっぱ一番好きだよ

 果てしないことだって なしとげられるはず

 それは君が誰よりも世の中を愛しくおもっているから

 思いのたけは強く静かに激しく勇ましい

 穏やかな目線の先にはいつも君の愛が

 愛がそこにある

 なにもできないだとか

 なにもしてないだとか

 そんなことはないよ

 君が君らしく君のおもうがまま愛情を示せば

 世界をめぐる風の小さな粒子になって

 幸せの連鎖につながるからね

 たとえちっぽけだなと感じても
 
 君はひとりじゃないから 世界はひとりでできてないから

 すべてを背負い込まないで 楽しく明るくいてほしい

 そんな君をみてると 笑顔あふれるから

 幸せ

満月

 どんくらいの歳月が 二人の仲を裂くんだろう

 夕闇にたたずんで この世の孤独を思うだけ

 二人で交わした言葉より 今は温もり思い出す

 ふれあって恋をして 愛しいよとささやいて

 口づけをそっとした やわらかな君はもういない

 ふりむけば夜の星 風がそよそよ流れます

 松の木々たちおどりだし 気やすめになぐさめる

 マッボックリ蹴とばして 君に当たればいいのにな

 そっちの世界はどうですか? 

 ひとりで大丈夫か心配です

 こちらは平気といわないと 生きていけそうもないけども

 まだまだがんばるつもりです

 くたびれた街頭は 点いたり消えたり不機嫌で

 足元をちゃんと照らしてくれないけども

 君の笑顔を思い出し 歩いてゆけそうな気がします

 もう涙のゆくえは追いかけないよ

 君が君でいた日々を 無駄にはできないと思うから

 僕が僕でいることを 君も僕も望むから

 夜空に輝く三日月は かけてもいつかは…

 満月

静かなふたりの時間 5

 さて、おばぁちゃんも見送ったし、帰ろうかな~と思ったらのぶが、

「コーヒーいれるから飲んでくら」

 と、あたりまえにいうので、

「うまいやつならね」といったら自信ありげな顔で「ん」と、うなずいた。

 やれやれ、またこの急斜面の坂をのぼるはめになるのか。

 そういえば私は家をでてからどんくらいたったんだろう?

 お昼の時報がなってないからまだ午前中だろうけども…

「のぶ、いま何時?」

 携帯持ってきてないし、腕時計嫌いだからつけてないし。

 そういやウォークマンに時計機能あったっけか。

 ま、めんどいから聞くに限る。

 のぶはごついシルバーの腕時計を「ん」と私に見せた。

 はいはい、見ればいいんでしょ、とのぞき込むと11時半過ぎだった。

 私は腕時計つけるのがなんかうっとおしくて苦手だけども、男の人がしてるのを見ると、ちょっと萌える。

 なんかごっつい手にこれまたごっつい腕時計なんかしてたりすると、いいなーて。

 フェチまではたぶんいかないと思うけども…なんか男の人の手とか指とか見ちゃう方かも。

 のぶの手は男にしては長くてきれいで…私的にはいまいち。

 それにさ、指が短い私はのぶの手みたいなの見ると、ちと隠したくなる。

 負けとる、と。

 あーでもやっぱのぶも男だね。

 皮は厚い感じだ。

 これで薄くて白かったら女の私はのぶといるときは手袋つけて歩かなきゃならなかったよ。

 比べられたくないもん。

 さて、坂のぼりますか…

「とりあえず、押してくれる? のぶ」

「ん」

 私はまたのぶに背中を押してもらいながら坂をだらだらとのぼった。

 のぶがぐいぐい押してくる背中にあたりまえのようにもたれながら、もたもたと足を動かすだけ。

 これ、ホント楽だ。

 おばぁちゃんはのぼりはまだ大丈夫だったと、おばさんが言ってたっけ。

 それに比べて私ときたら…

 こんな急勾配をひとりでのぼってたなんて、おばぁちゃんは年寄りのかがみだね。

 うんうん。

 さっき見たのぶとおばぁちゃんの光景もまだ残ってて、ちょい感動が持続してる。

 あぁ、足が弱くなるとのぼりよりくだりがこわい、て介護の専門学校でそういや習ったっけなぁ。

 ほとんど出てなかったからうろおぼえだけど。

 授業つまんなかったしな、当時は。

 今思えばちゃんと学んでけば良かったよ。

 卒業できたのだって奇跡すぎだし。

 のぶはそんな学校行ってなくてもおばぁちゃんと暮らしてていろいろわかってるんだろうな。

 えらいなぁ。

 のぶはおばぁちゃん子っていうイメージがあるから、いっぱい身の回りの手伝いなんかしてたんだろうし。

 おばぁちゃんが坂くだるたびに前に出て支えになって歩くなんて、ホント素敵だよねぇ。

 あんなん自分はできないよ。

 母さんにお願いされてもさ、メンドクサイ、とか私言いそう。

 だからすごく大変でもある気がする。

 のぶがおばぁちゃんのために時間さく、てことだもんね。

 おばぁちゃんはおばぁちゃんでのぶだけが頼りだったんだろうし。

 のぶが家にいなきゃおばぁちゃんおりれない、てことだもんねぇ。

 そっか、そーか。

 それも嫌で、おばぁちゃんは山をおりたんだ、きっと。

 なんかそんな気がする。

 でも、おばぁちゃんだいぶがんばってたんだろうな。

 のぶがいたから。

 のぶのために。

 だけども、そののぶももうひとりで平気だと気づいたんだね。

 だから出たんだな。

 「のぶ、さびしい?」

「んー、

 まーな」

 まーな、て。

 おい、それ小学生時代にうちらの学校だけではやった言葉(やつ)じゃん。

 懐かしいすぎだろ。

 まだ使ってたんだ、のぶ。

 まーな、て言った後は必ずピースサインをするという、子供時代の流行り。

 誰がはじめたんだっけかな…忘れちゃたな。

 でもすごく小学校内で流行になったよなぁ。

 後ろにいるので見れなかったけども、もしかしたらのぶはピースしたかもしんない。

 ふぅ。

 でもさ、やっぱ…のぶもさみしんだなぁ。

 まぁおばぁちゃんとはずっと一緒だったわけだし、親同然だったから。

 これからのひとり暮らし、さびしいだろうね。

 あの山の中の小屋でひとりきりって嫌だろうね。

 いくら男の子でも不安じゃないだろうか?

「のぶこれから一人暮らしだね。

 こわくなったら電話してきなね」

「別に。

 大丈夫だし」

 む。

 人が姉として気にかけてやってるのに。

 むかつく。

 てか、そりゃそうか。

 27の男がこわいとかさみしいとか言うわけないか。

 …それに、もともとのぶみたいな性格は大丈夫ぽいし。

 おばぁちゃんとの別れもあんなあっさりできちゃってるし。

 私なんかいまだにもう少し別れを惜しんでもよかったんじゃー? なんて思ってしまう。

 だって坂くだってタクシー乗り込んで「んじゃ、いくずら」て握手しただけで行っちゃったんだもん、おばぁちゃんたち。

”お体気をつけて、お元気で”とかも言えなかったよ。 

 やっぱ私、どこかで、別れでは大泣きしたいとこあるのかも。

 あまりにもさっぱりしてたからなぁ。

 ま、ちょっとそれもいいかも、とは思ったけどもさ…

 なんだかのぶとおばぁちゃんの関係がすごすぎて、ぽつんと、取り残された感じ。

 ふたりの絆はやはりふたりだけのものなんだな~とね。

 私なんか久しぶりに顔出して、手を振って見送っただけの人間だよ。

 私にとっても、おばぁちゃん、とか思ったのにさ。

 ははは。

「なんか別れるって、なんなんだらねぇ」

「さー」

 ん?

 のぶはなにか考え事でもしてるようだ。

 後ろにいるけども、今の返事の仕方でわかる。

 物思いにふけってるっぽい、気がした。

 そういや、私の時はどうだっただろうか?

 東京の部屋出るとき、どうだっただろう。

 向こうの友だちにメールして帰るって伝えて、みんな”帰らなくてもいいのに居なよ”、て返信くれて。 

 それでも決めたからって返したら”元気でね”て。

 急に自分で決めたことだったから会うこともしないでこっち戻ってきちゃったんだけどもさ。

 そういや誰もいまから見送りいくから、なんていわなかったなぁ。

 ま、いいけども。

 あれから数回メールやりとりしただけで途絶えちゃってるし。

 世の中不景気でみんな自分のことでせいいっぱいだ、て知ってるからそんなの悲しむことでもないよね。

 たださぁ…

 へこんでるときご飯一緒に食べてくれる友だちがここにはいないと思うとさ、ちと淋しいかな。

 くだらない会話しかしなかったけども、なんか救われてたもん。

 友だちっていいなーて、そう感じてた。

 けど、よく考えたら、いつのまにかみんなとはたまにご飯行くくらいで、あとはメールだけの付き合いになっちゃってたかも。

 生活に追われて会う機会が減ってきてたし。

 でもまぁ、それはそれで楽しかったよ。

 東京でひとりでいれたのはあの子たちのおかげだったと思う。

 感謝感謝だね。

 この町には仲良し、もう誰もいないし。

 向こうでの友だちの関係のほうがマシなのかも。

 -坂道のぼりきって、木々の小道のトンネル抜けて、のぶんちへ。

 なんか二人、ちょっとだまりこくちゃって歩いてる。

 たまにのぶの腕時計が私の手にあたるくらいで、なんもない。

 木の枝でカラスがカァカァ鳴いて、うちらを見送ってる。

 「そういえばさ、のぶの部屋の窓の下に小さな花壇つくったじゃん、子供の頃。

 で、学校のひまわりから種かっぱらってきて埋めたじゃん。

 いまでもそれ夏に咲く? ひまわり?」

「んー、もう咲かないかな。

 てか、工房作るんで花壇壊したし」

「えーそうなんだ。

 なんか、残念だなぁ」

「ん、ごめん」

 うんん、いいのいいの。と私は首をふった。

 のぶの家だもん、のぶの好きなようにすればいいし。

 でも、結構好きだったんだよねぇ~あのひまわりの花壇。

 といっても。

 私がひまわり咲いてると見たの3回くらいだけどもさ。

 のぶと一緒に石ころ積んで石垣作って、裏のおばぁちゃんの畑から土分けてもらって盛って。

 来年咲くといいねーとか言っちゃってさ。

 あの頃、外でふたりで遊ぶのていったらそんくらいしか思いつかなかったし。

 まぁまぁ楽しかったよなぁ、あの花壇作りもさ。

 なにせ私の家には庭がないからさ、花壇ある家ってのがあこがれだったし。

 作って種まいて…翌年3つ芽が出て、2本だけ咲いたけ、ひまわり。

 すっごくひょろりとしたひんそなやつだったけども、「わー咲いたらっ」、て喜んだ記憶がある。

 …そかそか、もうあの花壇はないのか。

 しかしまーよく思い出すよ。

 のぶと一緒にいるだけで子供の頃のこと、やたらとよく思い出す。

 この場所には私の思い出ころがりまくりなんだろうか。

 それとも私が老けただけなんだろうか…

 のぶが「ん」と玄関の戸を空けて私を先に家へいれてくれた。

 あの頃の思い出がよみがえる、となんてさっきまで感じてたものの…

 やっぱこの家の室内はオシャレな喫茶店だ。

 ここにはまだ思い出がない。

 いや、おばぁちゃんとお別れしたという今日の記憶が刻まれたけども。

 かなりあっさりめなやつが。

「のぶさ~、

 なんでこの家の内装こんなんにしたわけ?

 前の土間から上がって畳の居間てのもさ、なかなかいい感じだったよ」

「んー

 腐ってたからだら。

 床とか。

 だから直すついでに喫茶店風にしてみた。

 オシャレだら?」

「…う、うん。オシャレではあるけども…なるほどねぇ」

 腐りじゃぁしかたないか。

 家まるごと建て替えるよりかはリフォーム、てわけだね。

 しかもこれ全部のぶがひとりでした、ていうし。

 そう考えると、なかなかうまくしあがってるよ。

 よくよく見ると粗いけどもさ。

「のぶは日曜大工得意なの?」

 のぶがカウンター式のキッチンへはいっていって、私はそのカウンターの椅子に座った。

「んー
 
 やらなきゃいけないからするだけだら」

 のぶはヤカンに水道水をいれながらのんびり答えた。

 東京では水道水使うのはためらうけども、田舎はてんで気にならない。

 臭くないから。

 むしろ水道の水はペットボトルの水よりもおいしいし。

 とくにのぶの家の水は山の湧き水をひいてきてる、て知ってるので…

 なおさら、いれてくれるコーヒーに期待できる。

 たとえ簡単なパックのだろうが、インスタントの粉のやつだろうが。

 おいしくなるはず。

 子供の頃は大人に憧れて缶コーヒーを飲んでたけどもさ。

 今じゃ無類のコーヒー好きになりましたよ、私。

 東京に行って専門学校の友だちにつれてってもらった喫茶店で運命の出会いをしたから。

 マスターの入れてくれたコーヒーがうまかったんだよね。

 いまでは、コーヒーはおいしいから飲みたい、に変わったよ。

 あそこの喫茶では豆をひいてからろ紙に入れて一杯ずつ丁寧に入れてくれたんだよね。

 マスターはすごく人のいいおじさんで、すぐ仲良くなって、専門学校時代はよく通ってた。

 お金ないから喰えないだろ、てサンドウィッチも付けてくれたっけ。

 それで360円。

 いや内緒で300円にしてもらってたなー私。

 お礼にその分、店の手伝いもよくしたし~。

 おまけにコーヒーの入れ方も教わっちゃったしね。

 マスターにいてたコーヒーいつも褒められてさ、

 将来喫茶店経営もいいかも、なんて簡単に思ったりもしたっけな。

 でもマスターが倒れて、あっというまにお店がつぶれちゃって…

 マスターはそのまま息子夫婦のいる北海道に行っちゃった、とか友だち言ってたなぁ。

 あいさつもできなかったよ。

 住んでるとことか知らなかったし。

 …あそこのお店どうなっただろうか。

 2年前に一度見に行ったけども、本屋になってたのがまたつぶれてシャッターしまったままだった。

 まだ空き店舗なんだろうか。

 路地裏だったし、人通りそんなにはなかったから今商売始めてもダメだろううな、せちがらい世だから。

 と、そんなこと思ってたら、のぶが棚からコーヒー豆とコーヒーミルを取り出した。

「わーなになにっ、豆からひいちゃう系?

 ちょっとっちょっとのぶ私にそれやらせてくんない?

 それ回すのマジ好きなんだよねっ」

「ん?

 ん、ほい」

 と、のぶが私に豆とミルをカウンター越しに渡してくれた。

 まさかここでまたコーヒー豆ひけるとは。

 嬉しすぎるっ。

 私もミルかって豆ひこうかな、と思ったことがあるけども。

 めんどくさいからインスタントばかり買って飲んるしまつだし。
 
 ミル、いいやつは高いし。

 てか、ますますのぶんちは喫茶店みたいじゃんねぇ。

 ははは。

「ね、のぶ。

 あんたホントはマジ喫茶店やる気だら?

 白状しな」

「んんー、

 やらん」

「やらん、て。

 おいおい、じゃなんでこんな喫茶店みたいなわけ?

 てか、 コーヒーミルある時点でやる気満々じゃんー」

「んー

 趣味」

「趣味かいっ」

 たく、趣味でこれかー

 こりすぎだろ。

 よく男の人はこだわりを持つ、とか聞くけどもさぁ。

 本格的すぎやしませんか、とね。

 のぶのこだわりはこうゆうくつろぎ空間作ることなんだねぇ。

 私も嫌いじゃないからいいけどもさ。
 
 てかてか、私としては久しぶりに豆からひいたコーヒーが飲めるので嬉しんですが。

 おほほほ。

 どんな味のがでてくるかさ~、マジ楽しみぃ。

 入れる人によって味違うからさ、コーヒーてやつは。

 ま、豆の種類もあるけどもね…

 これブレンドの豆だし。

 豆じたいは手ごろなやつっぽいから、入れ方しだいでしょう。

 というわけで。

 カリカリッシャカシャカとコーヒー豆をひいて、ミルをのぶに手渡した。

「ちょっと軽めにいれてねん~」

「ん?

 軽め?」

「あー苦味少なめで。

 気持ち薄めで、て感じなんだけども…できる?」

「ん」

 おーできるんだ。

 さすが、のぶ。
 
 マスターは長年の経験と感でお客の好みどおり入れてくれてたけども。

 まさかのぶもできちゃうのねぇ~。

 うん、なんかこの子ならおいしいコーヒー入れてくれそうな気がするよ。

 器用そうだし。

 内装喫茶店にするくらいだし。

 コーヒーミル買っちゃってるし。

 なにせ豆からのコーヒーだし。

 期待、大っ!

 お湯も沸いて、のぶがコーヒーを入れだした。

 あぁ、この匂い…これがいい。

 家の中にコーヒーの香りが広がってすごく心地良い。

 リラックスできる。

 私はこの匂いが大好きだ。

 家でも(インスタントのだけども)コーヒー飲んだらカップはすぐには洗わず、しばし置いとく。

 で、たまにカップに鼻を突っ込んでコーヒーの残りが楽しむのだ。

 かぐと意外とまだイイ匂いするんだよね~

 それすると、なんかリラックスできるんだもん。

 人には見せらんないことけどもね。

 ははは。

「ん」

 入れたてのコーヒーをのぶが湯飲みに入れて渡してくれた。

 わーまってました。

 そうそう、やっぱコーヒーって寿司の文字が似合うわ~

「て、おいっ

 のぶ、なんでお茶飲む湯飲みでよこかなーっ

 コーヒーカップで入れてよねっ

 しかもこれ松葉寿司の開店祝いのやつじゃん…

 たくっ、あんた、コーヒーカップは?」

「んなものは、

 ない」

「買えよっ

 てか、あんたガラス職人ならコーヒーカップくらい作れるでしょうが」

「作らん。

 てか、めんどくさ。

 これで十分」

 そういってのぶは自分も寿司と書かれた湯のみを私に見せて、ふふんと鼻で笑った。

 あ、そうですか…

 なんかその顔ムカつきますが…イケメンだからなおさらに。

 ま、いいや。

 コーヒー飲めればいいや。

 久しぶりのひいた豆からのコーヒーだもん。

 味わいめっちゃ楽しもう。

 目をつむればいいんだし。

 ちょい熱い湯のみの感触を手のひらで楽しんで、

 口元に運んだらコーヒーの濃い香りが鼻をくすぐった。

 …ん?

 色も、濃い?

 どれどれ、飲んでみましょ、そうしましょ、と。

「ぅ、

 にがっ」

「うむ」

「うむじゃないだろがっ。

 あんたねっー、コーヒーなんだと思ってんのっ

 入れるの下手すぎじゃっ

 子供の時みたいにビシバシといちからしごきなおすっぞっごらっ」

「ん、

 ことわる」

 むかっ。

 むかむかっ。

 …てか、私が、ばかだったんだ。

 のぶがなんでもできるみたいな顔するので、そうなんだろうなーと思ってしまったのがいけなかった。

 こいつ、コーヒーいれるのマジに下手すぎだら。

 こんなんただの苦いだけの黒い液体だよ。

 熱々だから多少ごまかし利いてるけども、これ冷めたらまともに飲めないと思う。

 はじめから私がいれりゃーよかったんじゃん。

 自分が飲みたいコーヒーは自分がよくわかってっし。

「とっととそこどきなっ」、と私はのぶをキッチンからしっしっと追い出し、コーヒーをはじめからたてなおすことにした。

 こんなんじゃゆるされないわっ。

 もう私の気持ちがおいしいコーヒー飲みたいモードになってんだもんっ。

 いまさらこのくそ苦いただ熱いだけのコーヒーじゃ気がおさまらんよ、まったくもってさ。

「ほら、コーヒーてのはこうゆうのがうまいんだら、飲め」

 ほれ、と突っ立てるのぶに湯のみを渡して、イケや、とうながした。

「!

 うまいっ」

「おほほ、そうでございましょ~

 喫茶店でアルバイトしてたんだもん、私。

 なので腕はたしかだら。

 おーほほほほ」

 いや、バイトでなくて手伝いをちょこっとしてただけだけどもね。

 ま、いいや。

 のぶがさ、「すごい」と驚いて「天才」と褒めてくれたから、それでよしにしようかと。

 言い直さなくても、いっか~とね。

 では、おまたせ、私のコーヒーちゃん。

 自分も一口飲んだ。

 われながらうまいのいれたなーと感動した。

 マスターにも筋がいいと褒めてもらってたしね。

 これだけは自信がある。
 
 ではでは、もう一口。

 …あぁ幸せが全身にしみてゆくような気がするよ。

 私には、やはり豆からのコーヒーが1番みたいだ。

 うまいもん、マジで。

 ほんにえぇわ~と、

 湯のみ両手でもってほっこりしてると、窓辺でのぶがこっちにこいと手招きした。

 室内にあったソファーをわざわざ動かして窓の外を見れるようにしてくれたみたいだ。

 なかなか気が利くじゃないか。

「春になればあそこの山桜もさくら~」

 のぶが言った。

 ソファーにゆったり座り、のぶが指差してくれた方をみながらまたコーヒーをすすった。

 まだまだ桜の咲きそうな気配はないけども、ここからこうやって桜見ながらお茶できるって素敵なんだろうな、と思った。

 時間がゆるやかでいいなー、て。

「桜楽しみだら? のぶ」

「ん?

 ん」

 のぶは私のいれたコーヒーをおいしそうに飲みながら、こくん、とうなずいた。

 と、思ったら。

 なにやら思い出したらしく、湯飲みを持ったままソファーから立ち上がって奥へと行ってしまった。

 私が気にせずもう一口コーヒーを飲みながら窓の外を眺め和んでいると、

「ちと来てみ」

 のぶが部屋の置から顔をのぞかせた。

「なに?

 なにごと?

 ちと、なごんでるのにさ」

 私がめんどくさそうに返事したら「湯飲みももってこっちきてみ」とのぶが再度言った。

 言われるままコーヒーをもって部屋の奥へ行くと、キッチン裏に部屋があった。

 土間からあがれる小さな和室と2階へあがる階段。

 きっとここの和室がおばぁちゃんの部屋で、階段あがればのぶの部屋があるのかもしれない。

 でものぶはさらに奥へと歩いてく。

 どうやら和室の裏にも部屋があるようだ。

 そういえばのぶの家は奥に長い家だったっけ。

 小さな小屋みたいな家と感じるのは正面からみた印象で、実際はうちなんかより広かったっけな。

 そういえば。

 忘れてたけどもさ。

 確かうちの土地は30坪とかいってたけ? 死んだ父さんが。

 ここはうちより坪あるし、どんくらいだろか。

「のぶ、家って何坪あんの?」
 
 おもわず聞いてしまった。

 なんかこうゆうことばかり知りたくなる。

「ん?

 45かな」

 あーやぽうちよりちょいあるのか。

 子供の頃はのぶの家は小さくて狭いと勘違いしてたけども、あれは部屋がいつくも区切られてたからかな。

 あの頃うちは家を新しく建て替えしたばかりで、なんもなくて広く感じてたし。

 洋室なんかもできて、うかれてたしな。

 うかれすぎて、人様の家がどこもかしこも狭く見えたのかもなー。

 古い家の和室って天井も低いし、狭いと思い込んじゃってたのかも。

 のぶが案内してくれた部屋に入るとそこはのぶが言ってた工房のようだった。

 ガラス細工やらその素材みたいのやら、なんかよくわかんない道具とかたくさん置いてあった。

 ちいさなガラス製の動物たちばかりたくさんあって、のぶはこれを作ってるんだな、と思った。

 とってもかわいくて、うまく作ってある。

 いくらくらいで売ってんだろうか?

 380円とかかな、ひとつ。

 うさぎなんかもいて、ちゃんと目が赤くてかわいい。

 あとでのぶになんかちょうだい、て言ってみよっと。

 なんかくれるら、こいつなら。

 のぶは椅子を1脚持ってきて、また窓のそばへと置いた。

「ん

 桜」

「へ?」
 
 私が窓に近づくと若木の桜が1本咲いていた。

 まだ背が低くて、ほそっこい。

 でもそれでも濃い紅色の花が咲いていた。

「これ、品種の寒桜?

 わー町の桜だら」

「ん」

 のぶが私に椅子へ座ることをすすめてくれたので、お礼を言って、そこへと腰をおろした。

 ちょうどいい高さの窓で、外の桜が良く見える。

「どうしたの、この桜。

 すごくきれいだけども、なんでここにあんの?」

 淡い色が日の光に映えている。

 のぶの家の裏は畑だからまわりに高い木がなくて、桜には日を独り占めできていいんだろうな。

 風にそよそよと気持ちよさげに細い枝をふっていた。

 小鳥たちも数匹きてて、ちょんちょん枝を飛びあってる。

「4年前くらいに町で苗木くばった時があってさ。

 んで、それタクが1本持ってきて、そこに埋めた」

「あータクちゃんがかぁ。

 あの子役場だったっけ? 入ったの?

 そかそか、それでか。

 で、タクちゃん元気?

 のぶの同級生だったよね、確かあの子」

「ん。

 でもタクもういない。

 峠向こうに引越ししたから。

 向こうの役場勤務になって、嫁さんと子供連れて行っちゃったら」

「へーそうなんだ。

 やっぱみんな峠向こう行っちゃってるかー。

 てか、結婚したんだ、タクちゃん。

 しかも子持ちかー

 あの泣き虫タクちゃんがねぇ、やるなぁー」

「ん」

「のぶも負けてらんないんじゃー?」

「別に。
 
 てか、そんなん勝負してないし」

 そういってのぶはでかい木製の机に向かい、そこにある木の椅子に座った。

 どうやらのぶの作業スペースのようだ。

 いつもの場所、というところだろう。

 ちょっと外国の職人さんの雰囲気ぽくみえる。

 ぁ、職人だったっけ。

 -しかし、桜きれいだなぁ。

 2月のはじめに咲く桜なんて河津のだけで十分、とか思ったけども…

 実際ちゃんとまじまじ見ると河津桜よりうちの町の桜の方がいいんじゃないだろか。

 すごくきれいな気がしてならない。

 学校へ行く堤防のソメイヨシノ切りやがって、て役場の仕事をうらんだりもしたけどもさ。

 でもこの桜が大きくなってりっぱになれば、また違う思い出ができるかもしれない。

 観光客が増えるかどうかはわかんないけど。

 冬の景色が花盛りになるのは、うん、大歓迎だな。

 この町の人の散歩道になりそうだもん、あの堤防も。

 あーいや、あそこは前からそうか。

 てかみんな走ってるか。

 1週1キロだからってよく部活で走らされたな、中学時代に堤防を。

 毎日だもん、キツかったなぁ。

 て、桜でまた昔思い出しちゃったよ。

 ははは。

 私は少し冷めだしたコーヒーを一気に飲みほした。

 のぶは私の後ろで頬杖ついて窓の外をぼんやり眺めてる。

「のぶ、もう一杯コーヒー飲む?

 私飲みたいからたててくるよ」

「ん?

 うん」

 のぶから湯飲みを受け取って私はキッチンへと向かった。

 もう少しあの桜を眺めながら飲みたいなーて、思って。

 あんな若木の花だけども小鳥たちが数匹やってきていて、そのしぐさを見てても飽きないし。

 なんかほそっこいのに咲き誇ってて健気な感じもしてくるし。

 桜と、畑と、遠くの山と、青い空、てのがさ、心奪われちゃうよね。

 時間が止まってる、て感じで。

 ははは。

 てか、時報鳴ったじゃん。

 もうそろそろお昼かー

 う~んんと、どうするかな。

 のぶひとりにしてくのもかわいそうだし、かといって自分料理あまり得意じゃないし。

 そもそもここ人のうちなので冷蔵庫あされないしなぁ。

 のぶにきいて、どこかで出前でも頼むか。

 あーでも出前の人いやがるかも。

 あの坂をオカモチさげてのぼりたくない、て。

 うんん、断られはしないだろうけども、なんか頼みずらいよねぇ。

 ははは。

 でもコンビニ行くのもな~なんかどくさいしな。

 あ、そうだ。

 母さんに言ってのぶの分も用意してもらおうか。

 どのみち私は家帰えるんだし。

 そうしようか。

 あとで電話かりよう。

 すぐ戻っても用意できないだろうから、ま、お昼は1時まわってもいいしね。

 今はコーヒーが先。

 私はまた豆をミルでひく。

 カリカリカリカリ。

 シャカシャカシャ。

 あぁ楽しい~

 この匂い、もーたまらん。
 
 おっと、お湯沸かしなおさなきゃだった。

 私がコンロの火をつけようとしたとき、玄関が開いて、

「のぶっばーちゃんまだいるらっ?」

 と、ダンボールを抱えた男の人が入ってきた。

 ん? と見た私と彼の目が合った。
 
「あっ、スグロ君っ」

王様のマント

 どんだけの月日が今、僕の中をかけめぐるの?
 
 幼い頃なくしては捜し歩いた宝物さえも

 いまだ見つけられないいままなのにね

 えらぶっていばってみては悲しませてしまった人がいる

 謝りかたもわすれちゃって

 しらんぷりでやり過ごしたから

 つのる後悔のブロックが積みあがり僕を閉じ込めるよ

 よじ登ろうと手をかけてはもろく崩れる僕の壁

 救い出してくれたのはささいな優しい言葉たち

 のぼることばかり考えて壁を押し倒すこともわからずにいたよ

 気づかせてくれたのは僕が傷つけた人たちで

 何も言えない僕なのに

 笑顔で迎えてくれたんだ

 どんなにすねても無視しても

 ちゃんと見ててくれてる人がいる

 僕はひとりで王様で

 自分で自分の城に捕まっていた

 高台から見えた景色は

 きれいだったけれどもつまらなかったよ

 泣いて笑って許しあえる

 どんこの中にこそ僕がある

 どれほどの月日が去ろうとも怖くない

 子供の頃の寂しさやむなしさを

 いまはちゃんと理解しているから

 人に優しい人になる

 王様のマントひるがえす

 もうこれはいらないと捨てましょう
 

携帯をノゾキコム

 占いばかりを見てる

 毎日の楽しみがあるのか不安で

 見てる

 なにもしないくせして

 楽しみがあるのかばかり見てる

 そうやって1日を過ごしても

 けっきょくなくもなくて

 それでも占いばかり

 自信がないから

 社会を知れば知るほど

 自分の立場が見えなくなって

 よりごころすらなくて

 人すら信じられなくて

 とにかく無難に終われたらと

 メンドクサイコトハサケタイ、と

 携帯にぎって

 暇つぶして

 そこに想いをうちこんで

 大きな体からっぽ

 小さな携帯に心もってかれた

 つながりなんて見えないから

 文字だけが見えるから

 勘違いしてしまってるんだろうか

 顔を上げて

 ゆっくりまわりをみわたしてみたら

 なんだみんなちゃんと生きてるじゃん