ダークヒーロー ビギニング vol.19 | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

中二の三学期最後の席替えで隣の席になったのは、陰気で影の薄い女子だった。


影が薄過ぎて何処に居るか分からないので虐められる事は少なかったが、それでもたまに虐められているようだった。


何処かおどおどして不気味な女だったが、おれとしては隣席が静かで授業中の安眠の妨げにならないので今回の席替えの結果に文句は無かった。


彼女とおれは、それまで話した事は無かったが、ある日の美術の時間に自分の手のデッサンが課題になった。


ふと隣を見ると彼女は1cm位の手を描いていた。


おれは思わず「お前リカちゃん人形の手を描いてるのか?」と聞いた。


彼女は答え無かったが、ほんの少し笑ったようだった。


それが切っ掛けでおれ達は、2日に1回位数秒~1分程話すようになった。


彼女は、自分の身の上話を少しずつ話すようになった。


彼女は、両親を早くに亡くし現在は叔父叔母の家で暮らしているが叔母が彼女を嫌っていて叔母から日常的に暴力を受けていた。

テレビを観る事も許されず午後6時に寝るように言われているらしい。


何故か彼女は、おれにだけそんな話をした。


教室の中で陰気な女とその隣で授業中居眠りばかりしているおれの居る一角だけ どんより暗い影が覆っていた。


席替え1カ月位経った頃 突然彼女への暴力行為が目立ち始めた。


世の中には、弱い者虐めが趣味みたいな奴らが居てそんな奴らが彼女に目を付けた。


初めの内は軽い暴力で済んでいたが、彼女にとってはその程度の暴力は、日常茶飯事だったので黙って堪えていた。


しかし彼女への暴力は、次第にエスカレートして行った。



vol.20に続く