八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

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最近世間では、あだ名はタブーだと言う。


学校でもあだ名を付けたりあだ名で呼んだりは禁止されているらしい。


随分と詰まらない世の中になったもんだ。


全てのあだ名が人を傷付けるとは限らないしあだ名と言うのは、元々愛称の事だ。


おれは、人にあだ名を付ける癖があるが別にその癖を改める気は無い。



あだ名と言えば おれが昔 学童保育の仕事を辞めてからアルバイトで働いていたのは、ある百貨店系列の運送会社だった。

おれは、この会社で百貨店外商のチャーター運転手と引っ越し業務を掛け持ちで担当していた。


二つの仕事を掛け持ちでやると給料が良かったのでおれはこの仕事で八光流師範になる為の費用を稼ぐ事にした。


その頃 外商部の年配の女性社員に「ブーツ」と呼ばれている女が居た。


彼女のあだ名の由縁は直ぐに分かった。

長い顔で顎がしゃくれているので如何にも横顔がブーツだった。


現代なら絶対NGなあだ名だが彼女は、同僚や後輩に「ブーツ」と呼ばれていてもそれを気にしている様子は無かった。


おれが初めて「ブーツ」をチャーターの車に乗せた時も彼女自ら「私の事ブーツと覚えてくれたらいいよ」と言って楽しそうに笑った。


おれが「その呼び名気に入ってるんですか?」と聞くと「このあだ名は、内気でなかなか職場に馴染まなかった新入社員の私に大好きな先輩が付けてくれたのよ」とブーツは懐かしむように言った。

そして「そのあだ名のお陰で他の社員とも打ち解けて職場にも馴染む事が出来たと思ってる」と笑みを浮かべていた。


彼女は、新入社員の頃に付いたあだ名を定年前まで大切にして来たと言う事になる。


おれは、この日一日外商の車に「ブーツ」を乗せて仕事をした。



後編に続く