喜怒哀楽 | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

武道家は、喜怒哀楽を表に出してはいけない。


心を読まれ弱点を見抜かれたり相手に付け入る隙を与えてしまう。


「顔色青くなりたるは、臆したるなり 顔色赤くなりたるは、逆上したるなり」とある武道書に書いてあった。


なるほど確かにこれらの説は正論だ。


その点おれは、元々感情を表に出さない。

可笑しくも無いのに愛想笑いする事は無いし子供の頃から絶対に人前で泣かないし何処から見ても楽しそうにも見えない。


カッと頭に血が上る程怒る事も滅多に無い。

直ぐ頭に来てキャンキャン吠える犬は必ず弱い。

おれは、その事を昔飼っていた化け物並に強い犬から学んだ。


そんなおれは、武道家に適しているのかも知れない。


しかし 師匠公山先生は、喜怒哀楽が表に出る男だった。


腹が立ったら怒鳴るし大して面白く無くても大笑いする。

悲しい時や楽しい時も顔を見れば直ぐ分かる。


師匠は、技を掛けられた時のリアクションも大きく逆にリアクションの小さいおれを「ひねくれた奴じゃ」と笑っていた。


おれは、師匠公山先生の事を思い出すと 喜怒哀楽を表に出してはいけないと言う説は間違いじゃ無いとは思うが、感情が表に出ても強い武道家もいる事も事実だとも思う。


そしてそんな感情豊かな師匠との練習は、厳しくも楽しい練習であり武道云々よりも人として得る物が多かった。