黒犬伝 その15(前編) | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

おれは、数日前から坐骨神経痛を患い殆ど動けない状態になっている。

日頃整体と柔術の仕事で無理を重ねて来た事が祟ったようだ。


歩く事さえ困難な状態になっているので仕事を休んで自宅で休養していると激痛と仕事の出来ない焦りで気が滅入って来る。


そんな状況の中で おれは、昔飼っていた黒い北海道犬アクの事を思い出していた。


あれは、おれが28才アクが11才の時おれは事故で右手を負傷し約1ヶ月使え無くなっていた。


手を手術し1週間入院後退院した翌日におれは、アクの散歩に出た。


当然右手は、まだ真ともに動かない。


アクは、久しぶりにおれと散歩するのが嬉しかったのかリードを着けると「ウオォーッ」と遠吠えした。


おれは、アクに包帯を巻いた右手を見せ臭いを嗅がせて「おれなぁ こんな事になってるからおれの怪我が治るまで絶対暴れるなよ」と言って聞かせた。


それを奴が理解したかどうかは、分からなかったがおれ達はいつもの散歩コースに向かった。


1月の夕方 日は沈み掛けていた。



後編に続く