シャドー当て身 | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

八光流柔術の一人練習と言うのは、難しい。


仮想の相手を頭の中で描いて技を掛ける動きをするのも何だか虚しさを感じる。


ボクシングには、シャドーボクシングと言う一人で仮想の相手と打ち合うトレーニングがある。


ボクシングのように打撃の動きは、一人でも練習しやすい。


と言う事は、打撃とは違うが柔術の当て身の動きなら一人練習に適しているかも知れないと思った。


八光流柔術の初段技の中に当て身の事と言う項目があるが、これは相手に手首を掴まれた状態からの当て身でそれだけではシャドー当て身にはならない。


八光流の当て身は、拳は使わず手刀、掌、指頭、肘等を駆使して相手の急所や弱点を狙う。

八光流には独特の目潰しもある。


おれは、それらの動きを工夫してシャドー化してみたが、これがけっこう面白い。


それと リアルに仮想の相手を思い描くのもシャドー当て身のテクニックの一つだ。



仮想の相手には、強敵を想定すると練習に実が入る。


昔 師匠公山先生と目潰しの練習をした時 師匠は「わしの掌を憎ったらしい強敵の顔だと思って思い切り打って来い」と言って掌を構えた。

おれが「よおし」と言って打ち込もうとすると「ちょっと待て 何を嬉しそうな顔をしとるんじゃ?」と師匠が聞くので「いや 憎ったらしい強敵の掌を思い切り打つんでしょ」と答えると「アホ!そうじやなくて わしの掌を強敵の顔面に見立てて打つんじゃ」と師匠は言ってから「お主は、わしを憎ったらしい強敵と思ってるのか?」と呆れたように笑った。

おれも「まあそんなとこです」と笑った。


今となっては、懐かしい思い出で引退した師匠とは、練習する事は無くなった。

しかし仮想の相手を頭の中で想定して練習する時は、憎ったらしい程強敵だった師匠を想定して練習する事がある。