バレンタイン 4 (前編) | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

彼女が、おれの治療を受けに来たのは、おれがまだ整体治療を隣町の安アパートで始めたばかりの頃だった。


おれが、昼食を済ませてアパートに帰ったら裏町の景色にそぐわない雰囲気の若い女が立っていた。


彼女は「予約制ですか?」と聞いて来た。

おれが「まあ一応そうですが今空いてますから治療出来ますよ」と言うと彼女は「ありがとうございます お願いします」と躊躇無く治療室に入った。


彼女の症状は、医者にストレス性の背部痛と診断されていておれの治療を受けるまでに病院や整体関係の様々な治療を受けていたが、殆ど快復していなかった。


おれは、早速オステオパシーと皇法指圧で治療したが、今一つ手応えが得られ無かった。


しかし彼女は、おれの治療が気に入り本人の希望で週1回治療を受ける事になった。


おれは、彼女のストレスの原因が知りたかったのでカウンセリングをしたが彼女は、原因については話したくないのか考えたくないのか肝心な事は、聞き出せ無かった。


彼女を3回目治療した時おれは、生体エネルギー指向と言うオステオパシーのテクニックを思い付いた。


生体エネルギー指向とは、人間の体から発する極微弱な磁力を利用し患部の硬縮を和らげる技法で人体に於いては、機器から発する電磁力や磁石から発する磁力よりも極微弱でも人間から発する磁力はダイレクトに人体に流す事が出来る。


おれは、彼女の症状にはエネルギー指向が適していると判断した。


だが、この治療法には一つ患者の了解を得なければならない事があった。



後編に続く