ダークヒーロー ビギニング vol.6 | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

社会科教師の怒りが爆発した。

「お前 よくも!!」


おれが「あれ?コントロール良すぎたかな?」と聞いてみたら「お前 舐めてんのか!」と教師の怒りは倍増した。


「いや舐めてないけど」とおれが言うと教師は怒り過ぎて言葉を失ったのか教科書を教卓の上に叩き付けて教室を出て行った。


教室の中は、騒然となった。

おれは、この時 社会科教師の何らかの報復に備えたが教師が出て行ったので少し拍子抜けして「あ~あ 出て行きやがったか」とそのまま眠りに入った。


その日の昼休み 担任教師に連れられて社会科教師にチョークの件を謝罪に行った。


担任が、おれと一緒に頭を下げてくれた事もあって事態は、何とか丸く収まった。


おれは、おれの隣で おれより深々と頭を下げている担任を見て初めて悪い事をしたと反省した。


そんな事があってからも おれの窓の外を眺める癖は変わらなかった。


ある日の理科の授業中 いつものように窓の外を眺めていると 理科教師がおれの傍まで来て言った。

この理科教師は、担任教師だ。

「やっぱり窓の外を見てるな 他の教科の先生達もみんな君が窓の外ばかり見てると言ってるよ」


おれが「癖でねぇ」と言うと彼女は、自分も窓の外を見詰めて「外に何が見えるの?君だけにしか見えない物があるの?」と小さな声で聞いて来た。


それでおれが、少し考えてから「窓の外には、自由がある」と言ったら彼女は「エッ?」とおれの顔を2秒程みてから

「そうかぁ なるほど自由か」と偉く感心して「そう言う事か 分かった よく分かった」といつもはクールであまり笑わない彼女が、あどけない笑顔で言った。


彼女は、教壇に戻り「少し早いけど今日は、ここまでにしよう」と楽しげに挨拶を済ませて教室を出て行った。


「おれ 何か面白い事言ったか?」と隣の席の女子に聞いたが「さあ?でも先生凄く楽しそうだった」と不思議そうに言った。


翌日 ホームルームで見る彼女は、いつものクールなキャラに戻っていた。


その後も おれの窓の外を眺める癖は、一向に治らなかったが「窓の外には自由がある」とおれが言った日から後その癖について注意を受けたり叱られたりチョークを投げられたりする事は、一切無くなっていた。


だが、その事におれが気付いたのは、中学卒業間近の事だった。