マスクの下の顔 | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

マスクの下の顔は、分からない。


マスクを着けていると表情が読めない。

そこがまた不気味だ。


よく考えたら コロナ騒動以降に知り合った人間は、患者も弟子もその他の営業マンもおれは、顔を知らない。

顔も知らない者と普通に付き合うなんて本来有り得ない事だ。


武道と言うのは、闘う前から勝負は始まっている。


相手の表情の変化や顔色で心を読むのも兵法の一つだ。

「顔色赤くなりたるは、逆上したるなり 青くなりたるは、臆したるなり」と言う心得が武道家には、伝わっている。

至極当たり前の事だが、顔色が赤いのも青いのも一種の隙に繋がる。

未熟者程直ぐに顔色に出る。

だから いざと言う時 顔色に出ないのが達人の域だと言える。


マスクを着けているだけで達人の域に近付ける訳もないが、武道を長年やっているおれのような人間には、どちらを向いてもマスクだらけの世の中は、どうも落ち着かない。


しかし おれは、つい最近固い物を前歯で噛んだら 元々ガタが来ていた差し歯が折れた。

治療までの間 マスクのおかげで前歯が一本抜けたひょうきんな顔を晒さずに済んだ。


鬱陶しいマスクもたまには、ウイルス感染防止以外に役立つ事もある。