ダークヒーロー ビギニング vol.4 | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

[友達 ?]



ある日の放課後 おれが渡り廊下を歩いていると他のクラスの白豚みたいな奴が待ち伏せしていた。

この男は、弱い者虐めが趣味みたいな嫌な奴だ。


そいつは、肩を組んで来て「おれと勝負せいや」と耳元で囁いた。


おれが「ベタベタするな鬱陶しい」と言うとそいつは「何やと」と肩を組んでいる腕をおれの首に巻き付けようとした。


首を絞めようとする奴の腕を即座に身を沈めながら外し立ち去ろうとすると白豚が「逃げんのか」とおれの前方を塞いだ。


おれは奴に忠告した。

「弱い者虐めしたいなら相手が違う おれは確実にお前より強い」


おれの言動に押されて奴がたじろいでいる隙におれは、その場を去った。


その時「やっぱりあいつの言った通りやな」と つい白豚が漏らした言葉がおれは妙に気になった。


(あいつって誰だ?)と考えている所へ「危なかったな」と同級生の小太りが話し掛けて来た。

おれは「いや 危なかったのはあいつの方だ」と言ってから「お前どうしてさっきの出来事を知ってる?渡り廊下には誰も居なかった筈だ」と言うと小太りは慌てて「えっ いやっ 違うね!」と必死に返す言葉を探している。


その時 おれの頭の中で推理力と洞察力の歯車が噛み合いある答を導き出した。

「お前 あいつをおれにけしかけやがったな」とおれは小太りに

問い詰めた。

「す すまん お前ならあいつをやっつけられるかと思って...」と小太りはうなだれた。


おれは、自分の導き出した答を突き付けた。

「白豚は、先にお前を標的にした そこでお前は奴の標的を自分からおれにすり替える為に言葉巧みにあいつをおれにけしかけたんだろう」


小太りは、一言も返せず うつむいて動かなくなった。


そんなあいつにおれは、呆れつつ言った。

「フンッ 確かに人間は一人じゃ生きて行けないって事か?」


おれは、この馬鹿げた企みのために その後しつこく絡んで来る白豚を中庭の池に投げ込む羽目になり

それからも恨まれ続ける事になった。


小太りは「もう友達と思ってくれないよなぁ」と半泣きで言った。

おれは「心配するな お前なんざ最初から友達と思ってない」と半泣きのあいつに背を向けた。


だが、人の縁とは不思議な物で この男とおれは、お互い40代まで何かと関わってその内自然に縁が切れた。


そして あいつが、今現在 何処で何をしているのか?


そんな事 友達でもないおれには、知るよしもないし知りたくもない。