夜の山越え | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

おれの自宅側の道は、山越えの道に繋がっていて山を越えると大阪府高槻市に出る。
 
山頂付近に柳谷観音(楊谷寺)があり それを過ぎると柳谷聖苑と言う広大な墓地が広がっている。
この山は、いわゆる霊山だ。

昼間は、墓参り等で山越えの道を利用する車もあるが夜間は殆ど外灯も無く暗闇の中を走る事になるので夜に山越えする車は少ない。

護身の観点からすれば危険な上に不気味なコースを選ぶ事は避けるべきなのかも知れないが、おれは不気味な事に心を惹かれる妙な癖があるので 夜の山越えに際して特に抵抗感は無い。

先日 夜に山を越えたおれは、奇妙な状況に遭遇した。

山頂付近の聖苑を過ぎて益々鬱蒼とした山林の中を抜けて行くと車の前に突然何物かが飛び出した。

おれは、急ブレーキを踏んで車を止め飛び出した生き物を確認すると それは猫だった。

(猫?)こんな人里離れた山中に猫が居るのは、おかしい。 

更に驚いたのは、前方ヘッドライトの届く距離内には、猫の群があった。

この辺りは少し広くなっていて十数匹の猫が集まっている。

おれは、徐行して猫の群の中を抜けて行ったが奴らは、逃げもせずこちらを見ていた。

それにしても あの時あんな山中の暗闇の中で連中は何をしていたのか?不可解な現象を見たものだ。

おれは、何度も夜にこの山を越えているが、こんな事は初めてだった。

あの夜 おれは、本当に猫を見たのか?
あれは、本当に猫だったのか?
と今にして思う。

夜の霊山の闇は、ミステリアスだ。

だから 夜の山越えは止められない。