野良犬の仕事(前編) | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

後見人からの依頼でおれは、ある85才の殆ど寝た切りの老婆を治療する事になった。

後見人の話によると内科的にも整形外科的にも相当悪い所が多くその上アルツハイマーで時々幻覚が見えると言う。
そして重度の骨粗しょう症で一つ間違えれば骨折させてしまう恐れがある。

医者は、彼女を検査と薬漬けにしていた。

様々な整体関係の治療師は、自分が手を出す事で逆に悪化しそうな患者は敬遠する。

結局この婆さんは、それ程までに医者、治療師共に治療困難な患者と言う事になる。

事実上誰もが敬遠し手離しそうになった時おれの出番がやって来る。

これは、言わば野良犬の仕事だ。
普通の飼い犬が嫌がって食わない物でも野良犬は旨そうに食う。

その婆さん おれが引き受けよう。

おれの腹は、決まった。


後編に続く