ダークヒーロー イン・ザ・スクール (23) | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

学童保育の行事の一つに餅つき大会があった。

おれは、学童保育の穴埋め要員である在宅指導員だったので本来この餅つき大会に参加する事は無い。

しかし学童保育の子供達は、おれが子供嫌いであるにもかかわらず妙におれに懐いていたので おれをお客様扱いで餅つき大会に招待してくれた。

餅つき大会は、父兄参加の行事で 早い話が父親がついた餅を皆で食べる非常にありがたい行事だ。

指導員と母親達は、餅をつくまでの準備とつき終わった餅を丸めたり調理する係をする。

この日おれは、客扱いだったので食べるだけの為にこの学童保育に来ていた。

出来上がった餅は、主に4年生女子が運んでくれる段取りだ。

おれは、積まれた古タイヤの上に座り先ず最初に生醤油と海苔の磯部焼きを食べていた。
「いやぁ やっぱり餅はつきたてに限る しかも杵つきとは贅沢の極みだ」と絶賛していると次に来たのは、きな粉をまぶした安倍川餅と粒餡を乗せた餡餅だった。
「先生甘いの好きやろ」と4年生女子が持って来た。

おれが「おおっありがてぇ ついでにお茶もくれ」と言うと さっきと違う女子が「どうぞ」と番茶を運んでくれた。

普段は、小生意気で おれに服装が真っ黒だとか 言葉使いが乱暴だとか 髪の毛がボサボサだとか言ってうるさい女子達が、この日は変に優しい。

「今度は、大根おろしのやつが食べたい」と言うと「はいはい」とまた最初の女子が運んでくれた。
とうやら 餅係とお茶係が決まっているらしい。

おれが、ご満悦で大根おろしの餅を食べていると何か刺々しい視線を感じて周りを見渡すと数人の父兄と指導員が、おれを睨んでいた。


(24)に続く