暴れん坊爺さん その1(前編) | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

おれの祖父は、柔道の有段者だったが、何処で誰に習ったか知らないが かなり荒っぽい技を使う男だった。

祖父は、正義感が強くて気が短いので何かと言うと直ぐ喧嘩になり そうなると柔道の技を使うちょっと困った男だった。

祖母は、爺さんが喧嘩をする度に寿命が縮む思いをしていたので子や孫に柔道を教える事を爺さんに固く禁じていた。

だから爺さんは、おれに柔道を教える事は無かったが悪ガキだったおれを叱る時等チャンスを見ては、おれに柔道の技を掛けて来た。
おれは、事ある毎にぶん投げられていたが投げられる事自体は嫌じゃ無かった。
むしろ ジェットコースター気分で楽しんでいた。
それに あれだけ投げられても大して怪我も無かったのは、爺さんの投げ方が上手かったのと おれ自身おれなりの受け身を身に付けて行ったと言う事なんだろう。

おれが小学6年の夏休み 何の切っ掛けか忘れたが爺さんがおれに投げ技を掛けて来た。

その頃になると おれは爺さんの技のタイミングや動きが少しだけ分かりかけていた。

爺さんが2回目投げようとした時 おれは、いち早く脚を踏ん張って腰を落とした。

爺さんは、技を失敗した。
爺さんが手加減していたのと油断していた事は確かだったが おれは、初めて爺さんの技を破った。

それを偶然遊びに来ていた爺さんの友達が目撃して「おおっ!小学生があの投げ技を破った!?」と驚いた。

爺さんは、あまり笑わない男だったがこの時は、自分の出身地の大分県の方言で「おっきゃあしいのう!」と大笑いしていた。


後編に続く