ダークヒーロー イン・ザ・スクール(21) | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

おれが学童保育の在宅指導員として勤務していた頃 ある小学校の学童保育所で 一人の二年生の女子の行動が気に掛かった。

この少女は、おれが他の子供達と室外で暴れている時も室内でゴロゴロしている時も ふと気付くとおれの視野の片隅に入る位置に居る。
(いつからだろう?)と考えてみると随分前からだったように思う。

かくれんぼうをしていた時またその少女を見掛けたので「一緒にやるか?」と聞いたら少女は黙って首を横に振った。

しかしその日から少しずつこの少女は、おれに接近して来るようになった。
気付くとおれの真横に居る時もあった。

ある蒸し暑い日 すっかり夏バテモードのおれに数人の男子がしつこく纏わりついて来るのでおれは、かなり苛ついていた。
特にイノシシみたいな四年男子が離れない。
脚払いを掛けてこいつが倒れた隙にその場を逃れようとした時 おれの右前腕にまたしがみついて来たので「ええい鬱陶しい!」と少し手荒く振り払ったおれの手がパシッと何か柔らかい物に当たった。

おれの手が当たったのは、例の二年生女子の頬だった。
「あっごめん」と直ぐに謝ったが 女子は壁の方を向いて「うっ うっ」と泣きじゃくり出した。

おれが慌てて「おいおい そんなに強く当たったか?」と言うと同時に女子は「ウワァーッ」と泣き出してしまった。

「まいったなぁ」とおれは、面倒くさそうに言った。


(22)に続く