奇人変人列伝 その10(前編) | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

事務机の引き出しの片隅からある男の体験見学の予定をメモした紙切れが出て来た。

その男が、道場を見学に来たのは去年の夏だった。

この男からの電話には呆れた。
おれが電話に出るなり挨拶も前置きも無くいきなり「空手の上段逆突きに対する技はどんな技がありますか?」と質問して来た。

「先ずは名前から聞こう」とおれが言うと男は名乗った。
更におれが「上段逆突きで殴られたのかな?」と聞くと男は「いや 八光流ならどうするのかなと思っただけです」と言い自分の身に付けている武道に付いて話し始めた。その話によると彼は、中国拳法を北派と南派両方習う為に中国に渡っていた経験があり帰国後 合気道も修行したと言う。

そして話の流れでおれの道場を体験見学したいと言って来た。

おれは、うさん臭い上に妙に挑戦的で話の端々に殺伐とした言い回しをするこの男に怪しさと危なさを感じたがこの男の体験見学を許可する事にした。


後編に続く