凄い男 | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

朝7時半~8時の間に駅に向かう道を行くと ある男をよく見掛ける。

初めて会ったのは、2年位前だった。
車で走っていたら前の車が突然スピードダウンして何かを避けた。
そこに居たのは20才前後の男で 彼は身体障害者だった。

その男は、頸を斜め上に向け両腕を曲げ左右に突っ張った状態で両脚は膝の曲げ伸ばしが難しそうで全体的にガタガタ歩いている。

非常に歩き辛そうで歩くスピードも遅く見ていて凄く危なっかしい。

それでも彼は、着実に前に向かって歩いている。

鞄をたすき掛けにしている所を見ると 作業所か授産施設に通っているようだ。

両サイドから通勤通学の人々が追い抜いて行っても彼は、マイペースで歩いて行く。

この男はその後も よく見掛けるが 雨の日も雪の日も風の強い日も焼け付くように暑い日も彼は、黙々と歩いている。

その姿を見ていると 自分の抱えている問題なんて取るに足りない事に思える。

そして道路の真ん中寄りを堂々と両肘を突っ張り不自由な脚で真っ直ぐ歩く男に勇気付けられる。

昨日の朝もその男と擦れ違った。

おれは、その道を毎日通っている訳じゃない。
それでも その道を通ると必ずと言っていい程その男に会う。

それは、彼の勤勉さと精神力の強さを物語っている。
何かと言えば嫌な事から逃げてる弱い奴らとは大違いだ。

「全くもって凄い男だ」

バックミラーに映る彼の後ろ姿に向かっておれは、賞賛の言葉をなげかけた。