不動の月 | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

「水面に映った月に向かって石を投げて水面がどれだけ波立ち乱れても月は、ちゃんとそこに出ておるんじゃ 不動心とはそう言う事じゃ」
と師匠は言っていた。

おれがこれを師匠から聞いたのは、八光流柔術を習い始めた頃だった。

この不動の月の話は、何かにつけ思い出す。

武道の修業を続ける中で自分の技に自信を無くしたり 他の武道や格闘技に気を取られ目的意識がぶれる事もある。

おれの心が揺らぎ ぶれそうな時この不動の月の話を思い出す事で目的意識と不動心を取り戻す事が出来た。

おれが師匠の下で修業していた頃 師匠こそが、そこにある不動の月だった。

おれは、その月に向かって遠吠えする狼だった。

現在おれは、師範になり弟子達に教える立場になったが おれは彼らにとって不動の月なんて立派な師匠じゃない。

おれは、未だに八光流と言う不動の月に向かって遠吠えする狼のままだ。