穏やかな陽射しが気持ち良い日だった。
河川敷に設置された階段に座っていると この場所で練習していた頃の思い出が、次から次に浮かんで来る。
辛かった事 痛かった事 危なかった事 色々あったが 今となっては、全て懐かしい。
公山式八光流鍛錬法は、生易しい代物じゃなかったが おれの八光流の根底にある。
おれが師範になる為に埼玉県の本部道場に行く前日 師匠は「わしも ようやく一人育て上げたのかねぇ」と しみじみ言っていた。
そして「あんたに教える事は、全部教えたぞ」と 念を押すように言った。
おれには、師匠が突然 広島に帰ってしまった事が解せなかったが 河川敷に座って 川の流れを眺めている内に何となく思った。
師匠公山先生が、おれの身近から去る事 それこそが、おれにとって最後の公山式八光流鍛錬法なのかも知れないと。
やがて夕方になり風が冷たくなって来たので おれは、腰を上げた。
そして「今日は、これまでじゃ」と 言う師匠の声を心の中で聞きながら 帰路についた。