公山式八光流鍛錬法 最終話(後編) | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

おれは、おれと師匠が道場にしていた桂川の河川敷へ行ってみた。
穏やかな陽射しが気持ち良い日だった。

河川敷に設置された階段に座っていると この場所で練習していた頃の思い出が、次から次に浮かんで来る。

辛かった事 痛かった事 危なかった事 色々あったが 今となっては、全て懐かしい。

公山式八光流鍛錬法は、生易しい代物じゃなかったが おれの八光流の根底にある。

おれが師範になる為に埼玉県の本部道場に行く前日 師匠は「わしも ようやく一人育て上げたのかねぇ」と しみじみ言っていた。
そして「あんたに教える事は、全部教えたぞ」と 念を押すように言った。
おれには、師匠が突然 広島に帰ってしまった事が解せなかったが 河川敷に座って 川の流れを眺めている内に何となく思った。
師匠公山先生が、おれの身近から去る事 それこそが、おれにとって最後の公山式八光流鍛錬法なのかも知れないと。

やがて夕方になり風が冷たくなって来たので おれは、腰を上げた。
そして「今日は、これまでじゃ」と 言う師匠の声を心の中で聞きながら 帰路についた。