公山式八光流鍛錬法 最終話(前編) | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

数年前の春 師匠の患者で ある大学の教授から電話があった。

この教授とは、師匠の家で一度会った覚えがある。

教授は、知り合いのドイツ人の学者に八光流柔術の技を見せて欲しいと言う。

「師匠じゃ駄目なんですか、?」と おれが聞くと教授は「公山先生は、去年 故郷の広島に帰られたようでこちらには、おられませんよ」と 言った。

おれは、自分の耳を疑った。
師匠が、おれに黙って広島に帰ってしまうなんて到底信じられない。

師匠とは、長らく会って無かったが会おうと思えば いつでも会えると思っていた。しかし今や八光流の師範の中でも幹部級に位置し 正統な技を守る立場の公山先生と 野に放たれた八光流と呼ばれるおれとは、立場が違っていた。

自分の技は、自分でレベルアップして行くのが 師範だと思っているから 師匠が、居なくなっても別に困る事は無い。

ただ おれの心に冷たい風が、木枯らしのように吹き抜けて行った。


後編に続く