会計事務所が決算作業をする、というとき、何に気を付けているか?
何に気を付けるもなにも、ただ、集めてきた資料を淡々と入力して、集計しているだけなんだから、その過程で入力ミスがないかどうかに気を付けているんでしょう?なんて思われるかもしれませんが。
残念ながら、そこは、それほど重要ではありません。
というか、集計にもれがない、なんてのは「当たり前の話」。
気を付けるとか気を付けないとか、そういう以前の「当たり前にできていないといけない部分」です。
では、神経を研ぎ澄ませるのはどこか?
それは、
頂いた資料以外に、本来あるべき資料がもれていないのか
です。
なぜ、これが重要なのか?というと、脱税や税金の納めすぎの原因になるからです。
売上の計上根拠資料がもれていたのに気づかないと、本来計上すべき売上が計上しないままになってしまいます。
そうすると、利益が過小になりますので、いわゆる「脱税」になります。
仕入とか外注費といった経費の計上根拠資料がもれていたのに気づかないと、本来計上すべき経費を計上しないままになってしまいます。
そうすると、経費が過小になりますので、「税金の納めすぎ」になります。
このように、なにか資料が漏れていると、脱税になるか、税金を納めすぎになるか、どちらにしても会社の不利益になってしまうわけです。
この資料のもれ。実は、相当多いです。
体感では、半分以上の会社で、資料にもれがあり、経費計上や売上計上にもれが生じています。
つまり、半分以上の会社で、当初の資料通りに処理してしまうと、税金の納めすぎか、脱税をしている状態になっていたかもしれない・・、ということです。
さて、ここで、やっかいなのが、この「資料のもれを見つける」という作業は、かなり難しい、ということです。
例えば、領収書の処理を想像してみてほしいのですが、
領収書はあるんだけど経費にできない、というように、「根拠資料」があって何かを判断する、というのであれば、比較的簡単です。
どう処理すればいいか、単に調べればいいだけですから。
少し、経理の知識があれば、誰でもできます。
ところが、あるはずの領収書がない、ということに気づくのは、相当難しいのです。
少なくとも、書類しか見ていない人には、なかなか気づけません。
例えば、私が実際に体験した、資料のもれに気づいた例としては、次のようなものがあります。
- 現金出納帳に800万円しか仕入の支払記録がなかったが、実際には1,000万円の仕入をしていた
→現金出納帳しか見ずに処理をしてしまうと、200万円の仕入がもれてしまう(税額にして60万円相当)
- 外注費の支払時に領収書をもらっていなかったため、300万円外注費が漏れてしまった
→領収書しか見ずに処理をしてしまうと、300万円の外注費がもれてしまう(税額にして約90万円相当)
- 現金出納帳上、毎月10万円の家賃の計上が2ヶ月抜けていた
→現金出納帳しか見ずに処理をしてしまうと、20万円の家賃が漏れる(税額にして6万円相当)
こういう漏れは、他の書類と見比べたり、他の知識を総動員して見てみないと気づけないのです。
残念ながら、現金出納帳とか領収書しか見ていない人だと、なかなか気づけないでしょう。
結局、こういうところに気づけるかどうかが、単なる事務処理屋とプロの会計人との差との差がつくところだと思います。
ちなみに、私が、上のような仕入・経費のもれに気づいたのは、
- 社長ヒアリングで得た情報と決算書とに矛盾がある
- 入手した書類間に矛盾がある
- 社会人としての常識に照らして取引に違和感がある
というような感じで「何かおかしい」と感じて、会社の人に確認をした結果、仕入・経費計上の根拠資料の漏れが判明しています。
なお、上で挙げた中でも、特に、社長ヒアリングの威力は絶大です。
資料なんかみなくても、社長に話を聞いただけで、怪しいポイントが、結構絞り込めたりします。
※実は、この手法は、税務調査の手法と一緒です。
これを省いては、売上・仕入・経費のもれに気づく自信はありませんし、当然、まともな申告書を作る自信もありません。
ということで、うちの事務所に決算業務を依頼された場合、いろいろ質問される機会が増えると思います。
うっとうしいかもしれませんが(^^);、品質の高い申告書を作成するためには、避けられない作業ですので、ご容赦ください。